ufu(ウフ)スイーツがないと始まらない。
「As」(恵比寿)人気店出身・青木繁シェフの現在地。パティシエ同士の絆と縁が結んだ独立ストーリー。「金曜日、秘密のデザート」vol.16

「As」(恵比寿)人気店出身・青木繁シェフの現在地。パティシエ同士の絆と縁が結んだ独立ストーリー。「金曜日、秘密のデザート」vol.16

「As」(恵比寿)人気店出身・青木繁シェフの現在地。パティシエ同士の絆と縁が結んだ独立ストーリー。「金曜日、秘密のデザート」vol.16

今までメディアでも掘り下げてこなかった、大人のための秘密のスイーツをお届けする連載、鈴木セイラ『金曜日、秘密のデザート』。前回の記事では、恵比寿のカウンターデザート店「As」をご紹介しました。今回の記事では、オーナーパティシエ・青木繁シェフを直撃。青木シェフは、名古屋「ストリングスホテル」や南青山「UN GRAIN」、九品仏「INFINI」など数々の人気店で活躍してきた、人気パティシエのひとり。今回開業した「As」についてや独立開業ストーリー、その素顔を紐解いていきます。

恵比寿の地下にあるカウンターデザート「As」焼き菓子ではなく、“パフェ”を軸にした理由とは。

「As」(恵比寿)人気店出身・青木繁シェフの現在地。パティシエ同士の絆と縁が結んだ独立ストーリー。「金曜日、秘密のデザート」vol.16

美食の街、恵比寿駅の東口を降りて徒歩5分。ビルの地下階段を降りれば、青木シェフが営む天然大理石の小さなカウンターデザートのお店「As」が。旬の食材を使い、パフェを組み込んだアシェットデセールのコースを提供しています。

「As」(恵比寿)人気店出身・青木繁シェフの現在地。パティシエ同士の絆と縁が結んだ独立ストーリー。「金曜日、秘密のデザート」vol.16

Q.南青山「UN GRAIN」や九品仏「INFINI」で活躍していた経歴が目立っていることもあり、“パティスリー”のパティシエというイメージが強い青木シェフ。今回、パティスリーではなくアシェットデセールのお店にした理由は何でしょうか?

「出来立てのいちばんおいしい状態のスイーツを届けられるからです。パティスリーのお持ち帰りだと、焼きたて30秒後の超新鮮なフィナンシェをそのまま食べてもらうことはできなくて。パティシエとして一番“おいしい!”と感動するのは、実は焼きたてのスイーツをつまみ食いするような瞬間だったりするんですけど、それに近い体験を提供できたらと思ったんです。

今は、都内にいても北海道のお菓子がボタン一つで届くオンラインの時代。だからこそ、空間や会話も含めたリアルを提供できるカウンターデセールにこそ可能性があると思っています。」

「As」(恵比寿)人気店出身・青木繁シェフの現在地。パティシエ同士の絆と縁が結んだ独立ストーリー。「金曜日、秘密のデザート」vol.16

Q.以前勤務されていた「ストリングスホテル名古屋」で青木シェフが開発したパフェが話題になったり、開業前の単発イベントでもパフェを主に提供されていたかと思います。改めて、今回パフェを軸にしたデセールコースをメニューにした理由を教えてください。

「『スイーツをカジュアルに楽しんでほしい』という願いを込めてパフェをメニューに組み込みました。パフェって、デセールの中でもグッと気軽に食べるイメージがありませんか?誰もが馴染み深いメニューだし、スプーンでザクザクッと楽しく食べられるし。

デザートコースのお店は無数にありますが、どれもお客さんが背筋を伸ばして食べているイメージがあって。『As』は、店名にも込めた想いなのですが、『スイーツを食べて“明日”も頑張ろう』と思ってもらえるような、もう少しカジュアルにスイーツを楽しむお店にしたかったんです。そこにはパフェが必要だなと。」

「As」(恵比寿)人気店出身・青木繁シェフの現在地。パティシエ同士の絆と縁が結んだ独立ストーリー。「金曜日、秘密のデザート」vol.16

Q.「デザートコースだけど、カジュアルに楽しむお店」。このお店のコンセプトが生まれたきっかけはありますか?

「もともと、“おいしい”って味だけじゃなくて、もっと立体的な要素だと思っていて。具体的には、空間づくりであったり会話だったり。

目標にしているのは、恵比寿のイタリアンレストラン『マンサルヴァ』。値段は安くはないし本当に美食なのですが、お客さんたちが本当に楽しそうなんですよ。衝撃だったんです。その光景を見て、絶対にこんなお店にしたいと思って。」

スパイス×食材の驚きの組み合わせ。複合的な味で人々を虜にする

「As」(恵比寿)人気店出身・青木繁シェフの現在地。パティシエ同士の絆と縁が結んだ独立ストーリー。「金曜日、秘密のデザート」vol.16

前回の記事で紹介した「蜜柑キャラメルで煮込んだクレープシュゼット」は、クレープにチーズと蜜柑、黒胡椒…と、複合的な香りと味わいが特徴的なメニュー。「病みつき」という一言では表せないほど、イノベーティブな味わいが特徴的な魔法のようなスイーツは、青木シェフの得意技。

「As」(恵比寿)人気店出身・青木繁シェフの現在地。パティシエ同士の絆と縁が結んだ独立ストーリー。「金曜日、秘密のデザート」vol.16

Q.スパイスやハーブ、食材を操り、複雑な味わいと香りが広がりながらも、後味はまとまる…そんな魅惑的なスイーツをつくる青木シェフのスイーツは、まさに「味覚の遊び」。どうしてこんな味わいを作り出せるのですか?

「強いて言うなら、『味の記憶力』がいいのかもしれません。何年前のものでも、食べたものの味をしっかり覚えていて、記憶の棚からどんどん引き出してつくっている感覚ですかね。レストランの料理の味からも転用します。」

人情深きシェフの素顔。パティシエとして立っていられるのは、憧れの“先輩シェフ”たちと出会えたから。

「As」(恵比寿)人気店出身・青木繁シェフの現在地。パティシエ同士の絆と縁が結んだ独立ストーリー。「金曜日、秘密のデザート」vol.16

Q.数々の注目店で研鑽を積んだこともあり、スイーツ好きから人気が名高い青木シェフ。パティシエの世界に足を踏み入れたきっかけを教えてください。

「実は高校時代まで社会の先生になりたかったんですが、数学ができなかったので大学受験を諦めたんです。そこから、料理が好きだから料理人になろうと思って調理専門学校に入りましたが、魚を捌くのが苦手で…(笑)そんな中で、同じく食をつくる仕事でありながら、綺麗で美しいスイーツたちに惹かれたのが始まりです。

そのときにバイト先のホテルのパティシエたちが、コンクールに向けて試作しているところを目撃して。普段はおちゃらけているのに、スイーツを作るときだけ目の色を変えて、芸術的な飴細工を作り出す彼らを見ていたら…単純に“カッコイイ”と思ってしまったんです。パティシエという職業に惚れた瞬間ですね」

「As」(恵比寿)人気店出身・青木繁シェフの現在地。パティシエ同士の絆と縁が結んだ独立ストーリー。「金曜日、秘密のデザート」vol.16

Q.1年ほどフリーランスパティシエとしての活動と準備期間を経て独立開業へ。開業までの道のりはスムーズでしたか?

「開業までの一番のネックは物件が見つからなかったことでした。ただ、このお店の場所は偶然の出会いなんです!

実はここは『Yama(山)』※というカウンターデセールのお店の跡地で。物件を探している時期に、たまたま近くの恵比寿のレストランでバイトをしていたのですが、その帰りにYamaの勝俣シェフにばったりお会いしたんです。その時に『今度移転するから、この場所をどう?』と持ち掛けられて。普段から“直感”を重視していることもあり、タイミングやご縁もあり『ここしかない』と思ってここに決めました。名店の跡地、いい意味でプレッシャーもあります」

※連載vol.4、5にて紹介したお店。白金へ移転。

「As」(恵比寿)人気店出身・青木繁シェフの現在地。パティシエ同士の絆と縁が結んだ独立ストーリー。「金曜日、秘密のデザート」vol.16

Q.フリーランスになる前は、南青山ミニャルディーズの人気店「UN GRAIN」スーシェフとして活躍されていた青木シェフ。このときの経験で、印象的だったことはありますか?

「金井シェフや昆布シェフといった、師となる先輩パティシエたちとの出会いです。技術はもちろんですが、人としての生き方や哲学が確立されている純粋にカッコイイ人たちで、一緒に働くのはすごく刺激的でした。昆布シェフに言われた言葉ですごく印象に残っている言葉があって、『高級食材じゃなく身近な食材を使った1万円のコースメニューでお客さんを満足させられたら、本物のパティシエだ』という言葉。ハッとしましたね。」

これからは、恩返しできる存在へ。『パティシエになりたい』と思ってもらえる、きっかけになりたい。

「As」(恵比寿)人気店出身・青木繁シェフの現在地。パティシエ同士の絆と縁が結んだ独立ストーリー。「金曜日、秘密のデザート」vol.16

Q.「As」のOPENから一か月。今後チャレンジしていきたいことはありますか?

「直近のチャレンジでいうと、器が好きなので、作家さんとコラボしたデザートを作りたいです。いや、もう作っています(笑)。アートな器からインスピレーションを得てメニューを組み立てるのも楽しいし、作家さん側も、料理を載せてこそ価値があると思っている方も多くて。

後は他のパティシエとコラボもしたいですね。とにかく、コラボレーションするのが好きなのかも。他の人の仕事の方法や考え方を学べてすごく面白いし、純粋に楽しいなと思うので」

「As」(恵比寿)人気店出身・青木繁シェフの現在地。パティシエ同士の絆と縁が結んだ独立ストーリー。「金曜日、秘密のデザート」vol.16

写真は、青木シェフの大好きな作家・岩崎 龍二さんに作ってもらったパフェ用の坪。器作家さんとのコラボコースは実際に準備中だそうで、早ければ3月と4月のコースに組み込む予定とのこと。

Q.最後に、パティシエとして大切にしていきたいことを教えてください。

「今まで先輩パティシエにたくさん助けてもらって、チャンスを与えてもらってここまでやってこれた。これからは少しずつ、自分も何かしらで若手パティシエたちを助けていけたらと思っています。

そして最近ちょっと気になっているのが、『パティシエになりたい』という人たちが減ってきていること。昔は“なりたい職業ランキング”上位の常連だったのに、です。少子化もあると思いますが、調理や製菓の専門学校でも、どんどん生徒は減っていて。まだまだふんわりしていますが、『パティシエってカッコイイ』と思ってもらえるような、そんなきっかけになれるパティシエを目指していきます」。

「As」(恵比寿)人気店出身・青木繁シェフの現在地。パティシエ同士の絆と縁が結んだ独立ストーリー。「金曜日、秘密のデザート」vol.16

青木シェフへのインタビューを通して一貫していたのは、周囲や人とのつながりへの感謝。オープンから一か月という満身創痍の状況の中、柔らかな笑顔でインタビューに答えてくれたのも印象的で、ファンが多いのも納得です。そんな青木シェフの魅惑のスイーツを食べに、「As」にぜひ訪れてみてください。一度食べれば虜になるので、覚悟してご賞味あれ!

【メニュー詳細】※取材日時点
季節のデザートコース:¥7,000
全5品(デザート3品、お茶、フィナンシェ)
完全予約制
※公式Instagramにて予約フォームあり
※1月初旬はカフェ営業、後半はパフェコースを予定。

About Shop
As
東京都渋谷区恵比寿1-26-19 B1
@as_dessert_parfait

Photo/Cream Taro Writing/Nanako Maeda