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ミシュラン時代のその先へ。“一皿に物語を”髙橋壮幹が手がけるデザートレストラン「Authentic」(代々木公園)の全貌

ミシュラン時代のその先へ。“一皿に物語を”髙橋壮幹が手がけるデザートレストラン「Authentic」(代々木公園)の全貌

ミシュラン時代のその先へ。“一皿に物語を”髙橋壮幹が手がけるデザートレストラン「Authentic」(代々木公園)の全貌

世界的なレストラン・ホテルガイドブック「ミシュランガイド」。主にレストランが対象で、ここ数年は料理だけではなく「デザートコース」を展開するデザートレストランも選ばれるようになり、ミシュラン一つ星を白金のデザートレストラン「Yama」が初めて獲得し、話題になったばかり。現在、都内では様々なデザートレストランが増える中で、洗練された技術と経験、そして一つの皿に収斂(しゅうれん)される物語を描く、注目のパティシエがいる。

その人物が、髙橋壮幹シェフだ。代々木公園に新たなデザートレストラン「Authentic(オーセンティック)」がオープンした。

古き良き「日本」を描く設計美。「静」と「技」の舞台

ミシュラン時代のその先へ。“一皿に物語を”髙橋壮幹が手がけるデザートレストラン「Authentic」(代々木公園)の全貌

「Authentic(オーセンティック)」は代々木公園・代々木八幡駅から徒歩で約5~6分ほどの場所に4月15日、グランドオープンした。

中に入ると、白と木を基調としたシンプルな空間で、まるで茶室のようだ。

ミシュラン時代のその先へ。“一皿に物語を”髙橋壮幹が手がけるデザートレストラン「Authentic」(代々木公園)の全貌

波打つ天井は、反転させた丘をイメージしている。‟視界に余計なものが入らないように”障子を張り巡らし、かといって「和」に寄り過ぎず、「洋」の伝統技法を入れたデザートと相性が良いよう、両者のバランスをとることを考えた空間設計になっている。設計とデザインは建築家の三井嶺氏。実際に高橋シェフのデザートを食べてもらい、そこからインスピレーションを得て設計されたという。

施工は板井工務店が担当し、テーブルの下にはスマホを置けるスペースや大きなカメラを置くスタンドもある。細かい気配りが最初から緻密に設計されている。

現在の東京のデザートレストランではカウンタースタイルが大半を占めている。一方でAuthenticはテーブル形式で、レストランのようだ。キッチンもオープンではなく見えないスタイルに。またこの空間には「文字」の要素がほとんどなく“よりデザートに集中して欲しい”シェフの想いが詰まっている。メニューによっては、シェフがテーブルで仕上げを行うため、ライブ感を楽しむことも可能だ。

そしてこだわりは椅子にも。全てオーダーメイドのオリジナルのヒノキのチェアを木工家・川合優氏が仕立てあげている。

ミシュラン時代のその先へ。“一皿に物語を”髙橋壮幹が手がけるデザートレストラン「Authentic」(代々木公園)の全貌

器はすべてガラスと白い皿。カジュアルなお店が多い中で“体験”という時間を濃密にするためには空間づくりが大切だと、高橋シェフは語る。デザートを思い存分楽しむ“静”の空間で、一皿に描かれた‟技”を楽しむような、まるで能や狂言の舞台のような空間だと感じた。

一皿にもたらす叙情と抒情の‟新たなクリエイション”

ミシュラン時代のその先へ。“一皿に物語を”髙橋壮幹が手がけるデザートレストラン「Authentic」(代々木公園)の全貌

それでは、先にデザートコースを紹介していく。今回のデザートのテーマはコース「はじまり」。最初の一皿は日本固有種の柑橘である「大和橘(やまとたちばな)」。あまり現代の日本人に馴染みのない名前である大和橘。日本で“初めの柑橘”と言われており「はじまり」というテーマのコースで、一品目にもってくる意味はそこにある。もともと日本の茶懐石での茶菓子において、今の和菓子の体裁ができる前に出されていたのがこの大和橘であったそうだ。

軽い大和橘のクリーム、乳清(ホエイ)のゼリー、大和橘のグラニテで構成。酸味を尖らせて、グラスの層が口の中で混ざり合うことで調和を保つ。3種の酸味で、きりっとした美味しさを感じることができる。

ミシュラン時代のその先へ。“一皿に物語を”髙橋壮幹が手がけるデザートレストラン「Authentic」(代々木公園)の全貌

普段見ることができない大和橘の実のなる姿を実際に見せてくれた。叙情詩でも流れてくるようなシェフの解説も見どころであり、お楽しみのひとつになりそうだ。

ミシュラン時代のその先へ。“一皿に物語を”髙橋壮幹が手がけるデザートレストラン「Authentic」(代々木公園)の全貌

次の一皿は3種の豆、椰子の実で合わせたデザート。ここにも物語が。先ほどは日本の古(いにしえ)の物語であったが、今度はフランスの文化と歴史を深掘る。デザートに使われている「そら豆」は、フランス語でフェーヴ(Fève)。キリスト教の祝祭である公現祭(エピファニー)に食べるフランスの伝統菓子「ガレット・デ・ロワ」の中に入れられる小さな人形のことである。今では陶器が入れられているが、もともとはそら豆だったことを知っている人はどれぐらいいるであろうか? イエス・キリストがおくるみにくるまれた姿を唱える説もあり、これも「はじまり」のデザートコースのテーマとリンクしている。

ミシュラン時代のその先へ。“一皿に物語を”髙橋壮幹が手がけるデザートレストラン「Authentic」(代々木公園)の全貌

次のデザートは、吉野杉を器として使い、今西酒造が醸す日本酒ブランド「みむろ杉」を使ったスフレのデザート。奈良県桜井市にある大神神社(おおみわじんじゃ)から物語がスタートする。日本最古であるこの神社は本殿を持たず、三輪山をご神体として祀っている神社。その神社で代々200年近く酒を造り続けてきた今西酒造の日本酒を使っている。これも高橋シェフが自ら足を運び、酒蔵を訪れて感じたことがデザートに表れている。

“お酒の神様、最古の神社のふもとでお酒を造り続けることこそ、こんな誉れなことはない”

杜氏の言葉にとてつもないエネルギーとインスピレーションを得たという。だからこそ、このデザートの名前にも“誉”と高橋シェフはつけた。

葛粉を使い、グルテンフリーのスフレ。吉野の最古の葛を使っている。もともと葛師が、当時の薬として生業にしていたそうだ。

ミシュラン時代のその先へ。“一皿に物語を”髙橋壮幹が手がけるデザートレストラン「Authentic」(代々木公園)の全貌

その他、枇杷とジャスミンのデザート、リュバーブを使ったデザートなど、ぜひ実際にお店を足を運んで、実際に体験して欲しいデザートが盛りだくさんである。次からはインタビューへ。

“パティシエ”起源のフランスへのリスペクトを込めて

ミシュラン時代のその先へ。“一皿に物語を”髙橋壮幹が手がけるデザートレストラン「Authentic」(代々木公園)の全貌

Q.高橋さんのデザートを食べさせていただき、またSNSを拝見する中で「フランスの伝統菓子」の要素へのリスペクトを強く感じました。ヴァシュラン、サヴァランetc. Authenticが目指すあるべきデザートについて教えてください。

高橋シェフ「パティシエという職業をやっている以上、この言葉や職業の起源はフランス。一生やっていくもので、お菓子作りに出会えて幸せな人生だなと思っています。19歳の時に初めてデザートを作ったときに天職だと思いました。この時、デザートというものを誰が生み出し、誰が受け継いできたのか凄く興味がわいたんです。

ルーツを掘っていく中で、今では当たり前に存在する“パティシエール(カスタードクリーム)”みたいなパーツや“ミルフィーユ”みたいなケーキなど、何もアイデアも知識もなかった世界で生まれたものに驚き“自分が生きているうちにこういうものを生み出すことができるのであろうか?”と思ったほどでした。

だからこそ、誰かが継承してくれたその素晴らしい文化を生まれた背景や起源を理解した中で、アウトプットすることを大事にしています。例えばペッシュメルバという桃のデザートを“真似してみよう”じゃなく、誰がどうやって生み出したのか。そういう思考を持つことが美味しいものに向かっていくと思っています。」

ミシュラン時代のその先へ。“一皿に物語を”髙橋壮幹が手がけるデザートレストラン「Authentic」(代々木公園)の全貌

Q.なぜデザートコースのお店にしようと思われたのでしょうか? 

高橋シェフ「“Authentic(オーセンティック)”という名前をつけたこともそうですが、まずはデザートをコースで食べるということを日本に定着させたいと思っています。実際に昨今のミシュランの傾向でもそうですが、デザートコースのブームは来ている。でもこのままいくと一過性のもの(=ブーム)で終わってしまい、10年ぐらい日の目を見なくなるのではないか? そんな危機感を持っています。

ミシュラン時代のその先へ。“一皿に物語を”髙橋壮幹が手がけるデザートレストラン「Authentic」(代々木公園)の全貌

コースの組み立てについては、フレンチと類似していると思います。小さいアミューズからはじまって、前菜があって、コースが進むにつれて口にするものの温度感が上がってくるイメージです。プレゼンテーションもフレンチからインスピレーションを得ています。タルトに別添えでソースを仕立てたり、フレンチ風のソーシエールでかけていく感じとかもそうですね。」

Q.高橋シェフのスペシャリテを教えてください。

高橋シェフ「“スペシャリテ”というものは、すぐに語るべきだと思っていません。哲学として何年も何年もやって滲みでた一滴が、良い一皿になる。私が働いてきたレストラン『NARISAWA』がそうでした。デザートはレストランの料理には敵わない部分があり“所詮お菓子でしょ?と”言われ、思われてしまうもの。料理と比べて、お菓子の持つ歴史や素材のバックグラウンドまで考えて作るパティシエが本当にいないと思っています。だから、使用する食材の“農園や産地”のアピールだけで終わってしまう。

今回コースで使用した大和橘でいうと、その文化を守っている人がいます。それを知ってもらい、感じて食べてもらうと美味しさも違う。なぜそれを使ったか、なぜその選択をしたかが大事だと思っています。」

「NARISAWA」で生まれた“メロンソーダ

ミシュラン時代のその先へ。“一皿に物語を”髙橋壮幹が手がけるデザートレストラン「Authentic」(代々木公園)の全貌

Q.今お話にも上がった、ワールド50ベストレストランに10年連続選出された「NARISAWA」でのご経験について。この経験があって、様々な試行錯誤をされたと思います。ご自身のデザート観で、この時に磨かれたことや印象深いエピソードがあれば教えてください。

高橋シェフ「『NARISAWA』では、クリエイション能力を圧倒的に鍛えられました。年間100レシピぐらい考えます。レストランで出すデザートメニューだけではなく、外での監修やケータリングもあり、幅広い場面で考えました。この数は3日に1回、新作をださないといけないペースです。しかも『NARISAWA』レベルを求められました。

自分がストックしているアイデアや技術でやっていくと、自分の想像の範囲でしかできなくて、限界を感じていました。それでもシェフにプレッシャーをかけられ、当時は自分の限界を突破していましたね。その時に、10~12種を同時に試作しながら日本の昔ながらの“メロンソーダ”を題材にしたデザートメニューのレシピが生まれました。ディルやハーブを使いお酒をきかせた大人のメロンソーダ。今持っているパーツで何ができるのか、5分ぐらいで思いつき考えたのがこれでした。シェフに提案すると“これだよ、こういうのだよ、万国共通で美味しいと思う”といわれて、目が覚めました。

この時期の血のにじむような経験、世界トップレストランのシェフパティシエをやる責任感は自分を律して、高めてくれました。単純に『NARISAWA』のシェフの料理のクオリティが異次元で、全皿にエピソードがあり、全皿がスペシャリテになるもので、そこには1mmも油断も隙もない。

ある時に焼いた茄子と茄子のピューレに、トマトのシード覆い、ペンタスの花で飾った一皿がありました。『祇園祭』というスペシャリテで、山鉾(神輿)をイメージした盛り付け。祇園祭の五穀豊穣への願いを込めた一皿でした。なぜ京都賀茂茄子なのか、なぜこのクリエイションか、そのエピソードの凄さをみて“こういうデザートを作りたい”と強く思いました。

『NARISAWA』のメインコンセプトは“日本”であり、日本の豊かな自然、里山文化、先人たちの知恵を料理で表現し、もう一つのコンセプトとして“健康”や自然環境に持続可能(サステナブル)な美食を提供してきました。食材の選定を徹底し、革新的里山料理と言う独自のスタイルに行き着き、それはとても難解なコンセプトのレストランだと思います。環境保護や社会が抱えている問題提起を料理を通してしなければならない。

“根底は世界平和を願う気持ちがあるんだよね”

そのシェフの言葉に、こういう素晴らしい人間性だからこそ、こういう皿が生まれるんだと気づき、スペシャリテを追うのをやめたんです。先ほどスペシャリテの質問があったかと思いますが、嘘偽りのない仕事をし続ければ、きっとそれがスペシャリテになるんだろうと思っています。」

“デザートを単なる食後の楽しみではなく文化として味わう体験へと進化させたい”

ミシュラン時代のその先へ。“一皿に物語を”髙橋壮幹が手がけるデザートレストラン「Authentic」(代々木公園)の全貌

Q.ミシュランの星への熱い想いも知りました。これからの目標を教えてください。

高橋シェフ「ミシュランはデザートレストランのシェフが料理人と肩を並べられる、素晴らしい称号だと思っています。そうすると、発する言葉や想いがより多くの人に伝わり、影響を持つと思います。そのうえで一番大事なのは、鮨や天麩羅を食べに来るように、わざわざ日本にデザートを食べに来る、そんな文化に成熟させたい。その思いは日本の恵まれた自然環境、優れた農業技術、農家の方々の弛まぬ努力があって初めて実現されています。それは世界に誇るべきものです。僕はその一助になれたらと思っています。それが“日本から世界へ、デザートコースという文化を”の真の意味です。

Authenticという名前には、信頼・誠実・真の価値という意味が込められています。いつ訪れても変わらぬ美味しさと温もりを感じてもらえる場所。そして、日本から世界へ、“デザートコース”を届けたいと考えています。デザートを単なる食後の楽しみではなく文化として味わう体験へと進化させたいと考えています。」

注目の高橋シェフのデザートコースは6品×各ペアリングで、完全予約制。詳しくは、公式Instagramをご確認ください。

About Shop
Authentic
東京都渋谷区富ケ谷1丁目14−13 Ray Quon OKUSHIBU 3F
営業時間:水木金:15:00~、18:30~
土日祝:12:30~、15:30~、18:30~
定休日:月、火

Photo&Writing/坂井勇太朗(ufu.編集長)