予約困難なレストラン、知る人ぞ知る名店、大人のバーetc. 今までメディアでも掘り下げてこなかった、大人のための秘密のスイーツをお届けする連載「鈴木セイラ 金曜日、秘密のデザート」も今回で3店舗目。秘密のスイーツを紹介してくれるナビゲーターは、元東京カレンダーで現在はソーシャルメディアマーケティングをしている、鈴木セイラさん(@seeeraaamoon)。今回紹介するのは、虎ノ門でブランドが立ち上がるや否や瞬く間に人気となり“今最も旬”なデセールを生み出す「PAYSAGE」(ペイサージュ)を取材。店舗を持たず、販売されるお菓子は毎回ほとんどが完売し、季節ごとに変わるデザートコースは、シェフの真骨頂を味わえる。江藤シェフが作り出すデザートコースの秘密と、その圧倒的な世界をお届けします。
「PAYSAGE」の季節のアシェットデセールをいただくことができるのは、虎ノ門ヒルズに面した「Social Kitchen TORANOMON」。2020年12月に立ち上がってからまだ一年も経たずに、若きシェフと企業と社会をつなげるプラットフォームとして洋菓子界はもちろん、飲食界でも話題になりました。
ペイサージュのデセールを食べられる場所としてはもちろん、日本各地の食材や職人の技、そしてブランドの新製品発表会など、幅広いコンセプトでイベントが行われ、虎ノ門の食を通じた発信基地としての役割を果たします。
そして中はご覧の通り、まるでステージのようなダイナミックなスペース。ここでの注目は、やはり席から見渡すことができるキッチン。普段は見ることができない、シェフたちによる“職人の技”を間近で、ライブ感のある体験をできる特別な空間となっています。
現在、毎月開催している「PAYSAGE」(ペイサージュ)。すべて完全予約制となり、開催時期や予約開始時期は公式アカウントにより確認し、オンラインで予約する流れとなっています。
「PAYSAGE」(ペイサージュ)のアシェットデセールでいただけるのは、だいたい4~5品。その季節に合わせてシェフが最高の食材と、最高の技を持って繰り広げるデザートのコース料理。
この「PAYSAGE」(ペイサージュ)のブランドを立ち上げ、今若手シェフの中でも最も注目されているのがこの江藤英樹シェフ。フランス・ラナプール「L’OASIS」、カンヌ「Villa des Lys」にて修行し、日本へ帰国後は「BEIGE Alain Ducasse TOKYO」、そしてその後はあの「SUGALABO」や「THIERRY MARX」など数々の 名店でシェフパティシエを歴任してきた江藤シェフ。デザートはお花を咲かせるかのような美技と光り輝くセンスにすでにファンも多く、予約も一瞬で埋まるほど。そんなブランドのストーリーとシェフの想いについて伺いました。
「PAYSAGE」(ペイサージュ)は、フランス語で「風景・景色・光景」。その意味を江藤シェフに伺うと。
江藤シェフ「ペイサージュのデザートの数々は、四季をテーマにすることが多く、それは人それぞれの思い出の風景というのを大切にしたかったからです。皆さんが見た風景、故郷の景色って心に残っていて、そんな情景をお皿の中で描いたデザートで、思い出してもらえたら。ちょっとほっとして、懐かしいような感じのする、そんなブランドを思い描いています。」
そう話す江藤シェフのデザートは、季節の素材をふんだんに使い、そしてお皿の上では落ち葉と落ち葉の重なりなど、驚くほど情景的で美しく、デザートの概念を覆してくれるほど。それではダイジェスト版にはなりますが、どんなデザートが登場するのか、またそのコースの構成の考え方を含めお届けしていきます。
4~5品続く「PAYSAGE」(ペイサージュ)がお届けするコースの最初を飾るのは「のど越しのよさ」を意識したという、山梨県産ピオーネのグラニテと無花果ビオレソリエスのマリネ。「さあ、ここからコースが始まるよ」そんな意味合いを持つ一品目からこの美しさ。ひんやりとしたグラニテ、さっぱりといただけます。
「飽きがこないように、最初から最後までおいしく、そして“美味しかったね”と思えるように」そんなシェフの想いも込められたデザートは、デザートでありながらもすべてが“違う世界観”そして“違う面白さ”で彩られます。
このグラニテもそうですが、「儚く、すぐに溶けてなくなって、崩れてゆく」そんなデザートが持つ本来の美味しさを感じることができるのが、このアシェットデセールの魅力。
続いての一品は、これも秋を感じさせる江藤シェフの世界感がつまった一皿。
秋をイメージしたこちらの一皿は、柿がメインのデザート。完熟の富有柿、中に自然由来の優しい甘みを含んだ和三盆糖のクリーム、そしてアクセントには蜜柑と文旦の果肉、そして鬼灯。完熟富有柿と甘酒のソルベが主役として中央で踊ります。
寒いときには温かいものを出すなど、毎回が冷たいデザートではなく季節によって変えていき、その楽しみを得られるのも「PAYSAGE」(ペイサージュ)の楽しみ方の一つ。
3品目は、花梨のクリーム、胡桃のクランブル、シャンパンジュレ、花梨のコンフィチュール、ラフランスのコンポート、そして中央にはラフランスの果汁をとじこめたジュレとグラニテ。
この美しい花のようなお皿は、すべて特注。しかもデザインは、江藤シェフ本人によるもの。朝顔を3Dスキャンし、花が今にも咲き誇る感じをイメージしたそう。
「寿命の短いお花と、すぐ崩れてなくなるデザート。その儚さをかけているんです」と江藤シェフ。
中央のジュレを割ると、ラフランスの香りが高貴に香り、広がります。
「最後は一番、その時のハイライト的なものを置く」と江藤シェフ。料理のメインの肉と同じで、一番食べて欲しいものを持ってくるそう。
マスカルポーネのクリーム、長野林檎のコンフィチュールとコンポート、北海道のグラスフェッドのミルクアイスとミルクジャム、上からヨーグルトのパウダーソルベ、マスカルポーネのチュイールとなっています。
ここで終わりかと思いきや、最後にほおずきとチョコレートで。秋を満喫しコースは終了。
今回のデセールで登場した数々の果物たちは、江藤シェフが実際に生産者のもとを訪れて、厳選したものばかり。自ら足を運ぶその理由と想いを伺いました。
江藤シェフ「もとから生産者のもとへ行くことが多く、月1ぐらいで行っていました。新しい価値観として、生産者の良さ、そして彼らが作るもののおいしさを、みんなに体験して欲しいと思ったことが大きな理由です。何回も足を運ぶにつれ、生産者たちとの信頼関係も強いものになってきて、“今年のフルーツはこうだよ”とか、“こうしたら美味しいよ”とか、色々な話も聞けました。何事も信頼関係、ギブアンドテイクのリレーションが、良いものを創り出す基礎となっています。」
About Shop
Social Kitchen TORANOMON
東京都港区虎ノ門1丁目23−3 ヒルズガーデンハウス 1F
公式Instagramアカウント
クリーム太朗
ウフ。編集長
編集責任者。ショートケーキ研究家として、日本全国のケーキを食べ比べる。自身でも、ケーキやチョコレートの製造・販売を目指すべく、知識だけではなく実技も鍛錬中
Photo/Namba Writing/Cream Taro
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