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老舗喫茶店『つるや』(都立家政)で堪能する、洋食の味と優美な建築デザイン

老舗喫茶店『つるや』(都立家政)で堪能する、洋食の味と優美な建築デザイン

老舗喫茶店『つるや』(都立家政)で堪能する、洋食の味と優美な建築デザイン

西武新宿線・都立家政駅の目と鼻の先にある『つるや』。1969年に創業して以来、50年以上もの間、地域の人々を温かく見守り続ける老舗喫茶店です。

店内は曲線が美しい独特な建築デザイン。実は早稲田大学の名誉教授であり西武球場や西武園ゆうえんちを設計した建築家の故・池原義郎氏が手掛けた唯一の喫茶店でもあります。

老舗喫茶店『つるや』(都立家政)で堪能する、洋食の味と優美な建築デザイン

今回は『つるや』で食べたい「オムライス」と、どこか懐かしさ感じる「コーヒーフロート」を紹介。

“『つるや』は家族で代々受け継いできた宝物のような存在です”

と語る3代目店主・渡部みゆきさんに、愛され続ける『つるや』の歴史を取材しました。

遊び心ある空間は色褪せない。建築家・池原義郎氏が家族のために造った唯一無二の空間

老舗喫茶店『つるや』(都立家政)で堪能する、洋食の味と優美な建築デザイン

日中、多くの人たちが訪れる『つるや』。デミグラスソースを使った店の名物「オムライス」や「ハンバーグ」を目当てに訪れる人。コーヒーを飲みにふらりと訪れる常連さん。建築を学ぶ学生たちと、その目的は様々です。

渡部さん「建築家・池原義郎は、私のお祖父様の弟にあたります。とても家族思いの優しい人でした。銀座にあったお祖母様の店を閉めて、ここで新しく喫茶店を建てようという話になったとき、自然と設計は叔父様(池原義郎氏)にお願いすることになったようです」

大きな建造物の設計が多い池原氏。その中で家族という私的空間のために手掛けた建築デザインは、池原義郎作品の中でも珍しく、学生にとっても学びが多いんだとか。階段を降りると、広々とした空間に美しくカーブする天井が目を引きます。

カウンターに座ったお客様と目線が合うように、床の高さを下げたカウンター。店名にもなっている鶴の置物が2羽、戯れる和風の中庭。おもてなしと遊び心が交差して生まれた特別な空間です。

カニピラフを使った『つるや』の特製「オムライス」

老舗喫茶店『つるや』(都立家政)で堪能する、洋食の味と優美な建築デザイン
老舗喫茶店『つるや』(都立家政)で堪能する、洋食の味と優美な建築デザイン

『つるや』の定番メニューのひとつとして創業当初からあるのが、特製のデミグラスソースをたっぷりかけた「オムライス」。創業当時、渡部さんのお祖母様が練馬のフレンチシェフにお願いして、『つるや』のためにレシピを伝授してもらったんだとか。

通常の「オムライス」と言えば、ケチャップを使った真っ赤なチキンライスが定番。しかし、『つるや』は一味違います。

セットのサラダと一緒に運ばれてきた「オムライス」。

ふんわりとしたオムレツに、時間をかけてじっくりと煮込んだデミグラスソースがたっぷりとかかっています。スプーンですくうと、はらりとこぼれるのはカニピラフ。素材の出汁がきいていて、デミグラスソースとの相性も抜群です。その優しい味わいは、日本独自に発達してきた洋食文化ならでは。どこか親しみを感じ、ついつい笑みがこぼれます。

渡部さん「私が幼い頃、お祖父様が練馬のシェフから一生懸命『オムライス』の作り方を教わっている背中を見ていました。この『オムライス』は私にとって我が家の味なんです。冠婚葬祭があれば親戚一同『つるや』に集まるのですが、そのときにも『オムライス』は欠かせません」

居心地のいい空間でゆっくりといただくコーヒーデザート

老舗喫茶店『つるや』(都立家政)で堪能する、洋食の味と優美な建築デザイン
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懐かしさを感じずにはいられない雰囲気を残す『つるや』。例えばMD付きのラジカセや、キーコーヒーの大きな缶、長年使い続けてコーヒーの色が染み付いたコーヒーミル。そのどれもが大切に使われ、今も現役です。

店内はまるで実家に帰ってきたときのような居心地の良さ。思わず長居をしたくなり、デザートメニューをペラペラ。すると、喫茶店の定番「コーヒーゼリー」と「コーヒーフロート」の文字が。

老舗喫茶店『つるや』(都立家政)で堪能する、洋食の味と優美な建築デザイン

かわいいお花が描かれたグラスに、バニラアイスとロータスビスケットが一枚乗ったシンプルな「コーヒーフロート」。アイスコーヒーと、ひんやり溶けるバニラアイスが身体の熱を内側から冷ましてくれます。

元々はコーヒーとアイスのみだったところ、物足りなさを感じた渡部さんが、思い付きでロータスビスケットをのせたのがきっかけでこのスタイルになったそう。手をかけすぎず作られた素朴な味わいです。

「コーヒーゼリー」は、しっかり固め。上にのせたアイスと別添えのガムシロップで甘さを調整します。ほろ苦い味わいがクセになる大人な「コーヒーゼリー」。時間が経って上のアイスが溶けると、ソースのようにゼリーとしっかり絡みます。

『つるや』は続くよ、どこまでも。半世紀、家族で繋いで4代目

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銀座で喫茶とバーの店を営んでいたというお祖母様が店をクローズして、新たに始めたここ『つるや』。気がつけば50年もの歳月が流れ、店主も渡部さんで3代目です。

渡部さん「お祖母様は明治生まれで、戦争も関東大震災も経験した人。まるで竹のようにしなやかで一本筋の通った女性でした。そんなお祖母様がある日、当然倒れたのです。当時の私はてんやわんや。

店を継いで間もない時は、このままでは店が飽きられてしまうのではないかと不安で、肩に凄く力が入っていました。

でも2,3年過ぎて『つるや』の良さは“変わらないところにあるんだ”って分かりました。常連さんやお客様が教えてくださったんですね。今では、SNSを見て遠方からわざわざ来てくださる若いお客様も増えてとても嬉しいです」

喫茶店の良さは、目に見えない人との繋がりにあると語る渡部さん。そしていま、次の世代へとそのバトンを引き継ごうとしています。

老舗喫茶店『つるや』(都立家政)で堪能する、洋食の味と優美な建築デザイン

渡部さん「現在は、私と娘夫婦で『つるや』の切り盛りをしています。娘から提案があってのことです」

渡部さんの娘、こごみさんは『つるや』で生まれ育ってきて、いつかは自分も店を継げたらと考えていたそう。そこで今後は、今まで人手不足もあり営業してこなかった夜の部を中心に担当します。

こごみさん「祖母や母がお店に立つ姿に自分も憧れていました。いまは母から色々な指導を受けながら、夫と一緒に頑張っています」

4代目となるこごみさんが運営する夜の部は18時~21時までで9月1日からオープン。クラフトビールを中心に、手軽なおつまみを提供します。その他、休止していた人気メニュー、ナポリタンも復活させるんだとか。

こごみさんの見せる笑顔は、渡部さんのようにフレンドリーで温かみがあります。今後は、昼だけでなく夜の『つるや』も街の名物になりそうです。

About Shop
Coffee&Lunch つるや
東京都中野区鷺宮1丁目27−3
営業時間:11:00~14:00/夜の部 18:00~21:00
定休日:火・水

園果わたげさん

園果わたげ

ウフ。編集スタッフ

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ufu.の新米編集者。メンズカルチャー誌でアシスタントを経験後ufu.に転身。 特技は甘いものを食べ続けること。最近は美術館内レストランの限定コラボスイーツにハマっている。