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麻布台ヒルズに現れた「LANIGIRO (ラニギロ)」が魅せる新しいお菓子の世界。鈴木セイラ「金曜日、秘密のデザート vol.20」

麻布台ヒルズに現れた「LANIGIRO (ラニギロ)」が魅せる新しいお菓子の世界。鈴木セイラ「金曜日、秘密のデザート vol.20」

予約困難なレストラン、知る人ぞ知る名店、大人のバーetc. 今までメディアでも掘り下げてこなかった、秘密のスイーツをお届けする連載、鈴木セイラ『金曜日、秘密のデザート』。今回舞台となるのは、2023年の末にOPENし、新しい食の発見地として、そして観光地として話題の麻布台ヒルズ。

人気店から新規出店のお店まで、数多くの名だたる名店がひしめく中でも、とりわけ異彩を放つお店が「LANIGIRO (ラニギロ)」。この麻布台ヒルズの開業から少し遅れてのOPENとなったものの、すでに話題のお店に。この麻布台ヒルズが「LANIGIRO (ラニギロ)」としての初の店舗であり、ここでしか食べられないお菓子を楽しむことができる。

「レストラン」という強いマインドを感じさせる、常識を覆すお菓子

麻布台ヒルズに現れた「LANIGIRO (ラニギロ)」が魅せる新しいお菓子の世界。鈴木セイラ「金曜日、秘密のデザート vol.20」

広大な敷地と複雑な構造の麻布台ヒルズ。最寄り駅は神谷町駅で、立地としては六本木や虎ノ門にとても近く、ビジネスパーソンから観光客まで多くの人が足を運びやすい。お店は駅からガーデンプラザA/Bを抜けた先にあるガーデンプラザC。人通りも多いこの通りには様々なショップがひしめき合う。

麻布台ヒルズに現れた「LANIGIRO (ラニギロ)」が魅せる新しいお菓子の世界。鈴木セイラ「金曜日、秘密のデザート vol.20」

「LANIGIRO (ラニギロ)」は、白金台で人気を博した「TIRPSE(ティルプス)」のオーナー大橋直誉氏が手掛けるお店で、小さな販売カウンターには即完売してしまうクッキー缶やアメリカンなチャンククッキー、そしてフランスやイタリアで愛される「ババ」など、その取り扱うお菓子のジャンルは多国籍で幅広いラインアップ。

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そして中でも人気なのが、注文を受けて焼き立てで提供される「ストロープワッフル」。オランダのおやつで、オランダ流でいえば味わいはキャラメルとシナモンではあるが、味わいとしては「キャラメルブールサレ」と「チョコキャラメル」の2種類で、特に「キャラメルブールサレ」はゲランドの塩を使うなどフランス菓子の片鱗を感じさせる部分も。

麻布台ヒルズに現れた「LANIGIRO (ラニギロ)」が魅せる新しいお菓子の世界。鈴木セイラ「金曜日、秘密のデザート vol.20」

ザクっと繊細な生地からあふれるソースは焼き立てだからこその美味しさ。この“出来立て”にこだわるのは「レストラン」がやる“お菓子屋”という強いマインドから来ている。

“お菓子屋の常識は、レストランの常識ではない”

最高の料理を、デザートを出来立てで提供してきたシェフ陣が、パティスリーでは具現化できない、常識を覆す新しい世界を繰り広げる。

小さなラボで「ケイオス」が起こる

麻布台ヒルズに現れた「LANIGIRO (ラニギロ)」が魅せる新しいお菓子の世界。鈴木セイラ「金曜日、秘密のデザート vol.20」

小さなお店のカウンターの奥は、オープンキッチン。そこで出来立てのお菓子を仕立てていく。この小さなキッチンの中で、0から始まった「LANIGIRO (ラニギロ)」で日々新しい挑戦を繰り広げている。商品のラインナップも、模索をしながら一つ一つ試作をしており、その中心にいるのがシェフパティシエを務める新進気鋭のパティシエ堀内 凜。

麻布台ヒルズに現れた「LANIGIRO (ラニギロ)」が魅せる新しいお菓子の世界。鈴木セイラ「金曜日、秘密のデザート vol.20」

フランスで経験を積み、その後大橋氏が手掛ける先述の「TIRPSE(ティルプス)」へ。その後「TIRPSE(ティルプス)」が香港に移転をし、2022年には香港で名誉ある賞「SCMP Best pâtissier」を獲得し、この「LANIGIRO (ラニギロ)」へジョインすることになった。

麻布台ヒルズに現れた「LANIGIRO (ラニギロ)」が魅せる新しいお菓子の世界。鈴木セイラ「金曜日、秘密のデザート vol.20」

国際色豊かなシェフが腕ふるうことで、扱うお菓子のジャンルも国もさまざま。「へんてこりんなお店にしたい」そう話す大橋さんの想いは、店内にも。お店の色合いはもちろんのこと、器はバカラもあれば現代作家の作品や九谷焼とボーダレスだ。

ラボと店内では天井の高さも雰囲気も異なる。“統一感が全くない状態を組み合わせた価値観の集合体”が、この「LANIGIRO (ラニギロ)」である。

決して広いとは言えないこの敷地の中で、価値観が様々に入り混じった“ケイオス”が、新しいお菓子を情熱的に作り上げていく。活気あふれる厨房は、目を見張るものを感じた。

小さな空間で特別な体験。堀内シェフの手掛けるボーダレスなデザートコース

麻布台ヒルズに現れた「LANIGIRO (ラニギロ)」が魅せる新しいお菓子の世界。鈴木セイラ「金曜日、秘密のデザート vol.20」

お店は物販だけではなく、その隣には扉があり、開くとそこにはカウンターが。予約制で、カウンターは全4席とこじんまりとした空間に。

「パティシエが作るフルコース」というコンセプトのもと、品数は7品~8品程度。フレンチと一緒でアミューズから始まり、フィンガーフードそしてメインときて、最後には更なるミニデザートが。

デザート主体ではあるもののパティシエとしてできる、技術の結晶のようなコースとなっている。“このあとラーメン屋へ行こう”ではなく、しっかりとフルコースを食べたかのような、満足感あるボリューム感。それではコースの一部を紹介していく。

麻布台ヒルズに現れた「LANIGIRO (ラニギロ)」が魅せる新しいお菓子の世界。鈴木セイラ「金曜日、秘密のデザート vol.20」

一番最初に紹介するのは「アミューズ」。これまでフィナンシェを作ると常に好評で、どうしてもメニューに組み込みたかったと堀内シェフ。いわゆるシェフのスペシャリテ的な存在である。フィナンシェはクリエイションも、突き抜けている。ただのフィナンシェではなく「牛脂のフィナンシェ」だ。

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バターの香りが特徴のフィナンシェ。その油脂分を牛脂に置き換え、香りのインパクトを引き出している。

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そして牛が描かれたソースは、高山ニンニクのピューレで作られており、フィナンシェと合わせて食べるとお菓子ではあるものの、まるで前菜を食べたかのような”新しい食体験”の扉が開く。

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続いてはこのコース料理で「メイン」に当たる一皿。まるでジビエのパイ包み焼きのような仕立ての中身は、白アスパラガスとリンゴ。ナイフとフォークで切って食べると、スイーツのような甘みだけではなく香ばしさと野菜のにくにくしさもあり、デザートであり料理と成立している満足感。

麻布台ヒルズに現れた「LANIGIRO (ラニギロ)」が魅せる新しいお菓子の世界。鈴木セイラ「金曜日、秘密のデザート vol.20」

レストラン出身だからこそ、堀内シェフのクリエイションは、食材を「これは料理用、これはデザート用」と決めつけるのではなく、フラットな目線で使うのが大きな特徴で、その表現がわかりやすく表れた一皿がこちら。

こちらは旬の日向夏と独特のほろ苦さとシャキシャキとした歯ざわりが持ち味のうど。驚きの組み合わせである。そして香港でもよく合わせられるという、ライムに塩をもみこみ漬けて、3か月寝かせた塩ライムのジェラートを。

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組み合わせの妙こそ、堀内シェフのアイデンティティであり、この贅沢なコースの醍醐味である。続いてのフランス伝統のデザート「ヴァシュラン」。クリエイティブな見た目は、伝統的なヴァシュランを、違う世界に表現。もともとアートが好きという堀内シェフ。アートから幾何学模様であったり、色合いなどをインプットし、一つのお皿にアウトプットしている。

麻布台ヒルズに現れた「LANIGIRO (ラニギロ)」が魅せる新しいお菓子の世界。鈴木セイラ「金曜日、秘密のデザート vol.20」

野菜や漢方など、様々な合わせ方で甘みを抑えているため、血糖値も上がりにくく、最後まで美味しく食べられる。そんな計算をしつくされたコースに、ペアリングで合わせるドリンクも秀逸だ。ぜひ一度はフルコースで食べて欲しい、新体験のコースである。

麻布台ヒルズの新手土産の定番に

麻布台ヒルズに現れた「LANIGIRO (ラニギロ)」が魅せる新しいお菓子の世界。鈴木セイラ「金曜日、秘密のデザート vol.20」

最後に、手土産としておすすめの「クッキー缶」そして「ババ」を紹介。クッキー缶は数が少なく、昼前には完売してしまう人気ぶり。

中身は全7種類。全粒粉の生地に、甘酸っぱいフリュイルージュジャムのオーストリア菓子「サブレリンツァ」やフランス菓子の定番である「ガレットブルトンヌ」、イタリアのメレンゲ菓子でコリアンダーとアーモンドが香る「ブルッティマブオーニ」。

そして白いラングドシャは酒粕のホワイトチョコ、ブラックは八丁味噌をあわせレストランらしい組み合わせに。かりかりっとしたピスタチオに糖衣がけした「クラックランピスターシュ」に最後はオレンジコンフィの入ったショコラフロランタン。

麻布台ヒルズに現れた「LANIGIRO (ラニギロ)」が魅せる新しいお菓子の世界。鈴木セイラ「金曜日、秘密のデザート vol.20」

最後に「ババ」はブリオッシュ生地をお酒に漬けたもので、4種類のラインナップ。定番の「ラム」は樽で熟成させたスモーキーな香りにバニラの余韻が広がり、「WHITE」は白ワインとレモングラスの清涼感のある構成。「RED」は赤ワインにカシスリキュールで合わせホットワインのような味わいに。特筆すべきは「味醂(みりん)」。300年以上の歴史を持つ「小笠原味淋醸造」の味醂と、3年以上熟成させた陳皮を贅沢に使用したシロップで作られている。

手土産にもぴったりな箱で、一味変わった手の込んだお菓子たちはきっと喜ばれること間違いない。

About Shop
LANIGIRO (ラニギロ)
東京都港区麻布台1丁目2−4 ガーデンプラザC B2E B1-9
営業時間:11:00~18:00
定休日:なし

クリーム太郎

クリーム太朗

ウフ。編集長

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編集責任者。ショートケーキ研究家として、日本全国のケーキを食べ比べる。自身でも、ケーキやチョコレートの製造・販売を目指すべく、知識だけではなく実技も鍛錬中