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完全予約制。賞味期限5時間、「あいと電氣餅店」(代々木八幡)の絶品“生大福”。105年続いた歴史を継承した理由

完全予約制。賞味期限5時間、「あいと電氣餅店」(代々木八幡)の絶品“生大福”。105年続いた歴史を継承したワケ

完全予約制。賞味期限5時間、「あいと電氣餅店」(代々木八幡)の絶品“生大福”。105年続いた歴史を継承した理由

「この大福の味を残したい」とある一人の女性の想いで誕生した、新しい大福店「あいと電氣餅店」。2021年11月OPENと、誕生間もなく各メディアからの取材も殺到し、すでにスイーツ好きの間でもHOTなお店ですが、今年流行している「映えるフルーツ大福」とは一線を画すそのビジュアル。クラシックで、日本の職人の技を感じさせながらも、現代風に感じる見た目の秘密とは? また“生大福という美味しさ”の秘密の裏には、4代目としてのれん分けを受けた鈴木瞳さんの存在。美味しさはもちろん、今回はその誕生秘話を取材してきました。

今もっともスイーツがHOTな地域「代々木エリア」

完全予約制。賞味期限5時間、「あいと電氣餅店」(代々木八幡)の絶品“生大福”。105年続いた歴史を継承した理由

東京都渋谷区、代々木八幡、代々木上原、代々木公園と、この一帯に新しいカフェやスイーツ店が続々とOPENし、スイーツ好きがたくさん集まり、今もっとも注目されているエリアです。

そんな代々木八幡駅から、徒歩5分ほど。外からは大福を作る姿が見られ、多くの人が足を止めるこの店構え。お店へ入ると商品を購入することはできず、すべて「完全予約制」という、和菓子屋としては珍しいスタイルで展開しています。

今回のこのお店のOPENでは、“アタラシイものや体験の応援購入サービス”「Makuake」にて先行・優先販売を実施。プロジェクト期間中に220万円以上、550名を超えるサポーターを集め話題になりました。

事業コンサルタントが、福島で歴史ある大福屋の弟子になる、奇跡のストーリー

完全予約制。賞味期限5時間、「あいと電氣餅店」(代々木八幡)の絶品“生大福”。105年続いた歴史を継承した理由

このお店の店主は、鈴木瞳さん。もともと事業コンサルタントをされていた鈴木さんの運命を変えたのは、地元の福島、南相馬で出会った「宍戸電氣餅店」。実家に里帰りしたときに、家族のためになんとなく買った大福。「全身に衝撃が走った」と話す鈴木さん。今まで食べたことのない食感、繊細な甘さ、羽が生えたかのような軽やかさ、あまりにもその美味しさに驚いたんだとか。そして創業105年の歴史あるこのお店が、東日本大震災の影響もあり、あと数ヵ月のうちに途絶えることを知り、弟子入りを決意。

頑固な店主との、弟子入りまでの長期戦

完全予約制。賞味期限5時間、「あいと電氣餅店」(代々木八幡)の絶品“生大福”。105年続いた歴史を継承した理由

再び店を訪ね、大福を注文し電氣餅が包まれている間に「ひとつお伺いしても良いですか」と質問した鈴木さん。「ご主人ひとりでお店をやってらっしゃるんですか?」

「んだ(そうだ)」

「もし引退されたら、どなたか電氣餅を継がれるんですか?」

「んなもん居ねぇ。店はもう趣味でやってるようなもんだ、もう近いうち閉めようと思ってるしな、そしたら終(し)めぇだ」

そんな時、鈴木さんが発したのは「私を弟子にしてください」という言葉。無愛想な店主の口からは「電氣餅は、オレの代で終わりだ。弟子は取らねぇし、子供にも継がせねぇ」と、断られるもそこで食い下がらないのが鈴木さん。ある日、お店に電気餅がほとんど残っていないときに「これしかないの」と鈴木さんがいうと、その場で作ってくれることに。そのまま作ってくれるところを見せて欲しいと懇願すると見学できることになり「2週間後また来るから」といって無理やり毎日通ったんだとか。そんな鈴木さんの熱意が実を結んだのは、とある日。

完全予約制。賞味期限5時間、「あいと電氣餅店」(代々木八幡)の絶品“生大福”。105年続いた歴史を継承した理由

地元のクリーニング屋さんに一緒に行くと、お店の方から「あら、今日は娘さんと一緒なのね」と言われ、店主が返した言葉は「いや、弟子だ。」というセリフ。とても驚いたという鈴木さん、そこから弟子生活が始まり、東京と福島の往復、月の半分は東京で半分は福島の生活。当時はお子さんも2歳で、和菓子屋の朝は早く、子供が起きる頃に帰宅するというハードな生活をしていたそう。

添加物や保存料は一切なし、賞味期限5時間の生大福がもたらす幸せの食感と甘さ

完全予約制。賞味期限5時間、「あいと電氣餅店」(代々木八幡)の絶品“生大福”。105年続いた歴史を継承した理由

極上の生大福をベストの状態でお客さまに召し上がって頂くため」

店主の想いもあり、受け取り時間を定めた完全予約制。幻といわれた生大福「電氣餅」を多くの人に、最高に美味しい状態で食べてもらうための鈴木さんのパッションを感じます。

口にふくめば、うっとりするほどの、そのやわらかさ。手の平にのっけているだけで、とろけて形が崩れていくほど。

そして、その美味しさの秘密は「餡」にもありました。100年の間、3人の店主によって練りあげられてきた超極上のこし餡。上品な甘さで、まったく重くなく、このやわらかい餅の食感もあって、何個でも食べられてしまいそうなぐらい。

スタイリッシュな包装。お店のロゴは入れず、“また再利用して欲しい”という願いも

完全予約制。賞味期限5時間、「あいと電氣餅店」(代々木八幡)の絶品“生大福”。105年続いた歴史を継承した理由

風呂敷ってこんなにも美しかったのかとお届くほどの梱包。これも鈴木さんのこだわりで、風呂敷は全部で3種類あり、カラーリングがそれぞれ異なります。5個入り・2200円、10個入り・4000円、20個入り・7000円とラインナップは3種類。

完全予約制。賞味期限5時間、「あいと電氣餅店」(代々木八幡)の絶品“生大福”。105年続いた歴史を継承した理由

そして、新進気鋭クリエイティブディレクター・Hideyaを起用した「華やかなパッケージ」。大切な人へ、友人へ、ギフトとしてもぴったりなこのパッケージ。「あえてロゴを入れなかった」という、その意図の一つとして再利用できるパッケージ。小物を入れたり、色々な使い方ができ、シンプルだからこそ使い勝手がよいデザインに仕上がっています。

なぜ「電氣餅」と呼ぶの?

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そもそも「電氣餅」と聞いたことがない言葉。その歴史を伺うと、福島県の南相馬市で誕生したのは大正五年、今から百年以上前のこと。宍戸(ししど)青果店の主人が手作りして軒先で売っていたものが、あまりの美味しさに評判となり、やがて青果店は和菓子の専門店に。食品添加物が存在しないその時代の大福は、現代ではほとんど見かけない、生大福。

完全予約制。賞味期限5時間、「あいと電氣餅店」(代々木八幡)の絶品“生大福”。105年続いた歴史を継承した理由

宍戸青果店では当時としてはまだ珍しかった電動餅つき機を導入していて、多くの人からも親しみを込めて「電氣餅」と呼ばれるようになり、そのまま店名も「宍戸電氣餅」と改められたんだとか。

いかがでしたでしょうか? 世の中には数多くの伝統工芸がありますが、この大福も歴史ある伝統工芸のようなもの。日本の文化を、守り抜く一人の女性のパッションと、美味しいものを残し、新しいものに昇華するその姿は、お菓子界にとっても、日本にとっても大きなことだと感じました。(by 編集長)

About Shop
あいと電氣餅店
東京都渋谷区元代々木町54−1 東京セントラル代々木 101
営業時間:11:00~14:00
定休日:月、火曜日

クリーム太郎

クリーム太朗

ウフ。編集長

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編集責任者。ショートケーキ研究家として、日本全国のケーキを食べ比べる。自身でも、ケーキやチョコレートの製造・販売を目指すべく、知識だけではなく実技も鍛錬中

Photo/物撮り by Yuichi Sakuraba 店舗・人物 by Cream Taro