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代々木上原「アステリスク」がつむぐ魔法のモンブラン。試行錯誤して生まれた軌跡とは

代々木上原「アステリスク」がつむぐ魔法のモンブラン。試行錯誤して生まれた軌跡とは

代々木上原「アステリスク」がつむぐ魔法のモンブラン。試行錯誤して生まれた軌跡とは

秋も、もう間もなく終盤。紅葉がピークを迎え、あっという間に冬へ。秋らしさを感じるスイーツといえば、このモンブラン。濃厚なマロンクリームを求め、多くの人がモンブランを食べるこの時期に、ひとつ知っておいて欲しい究極のモンブランはある。それが代々木上原にある、名店「アステリスク」の「モンブランクレメ」だ。カシスを中に含んだ伝統的なフランスモンブランから、お芋や異素材を組み合わせたもの、細く絞ったモンブランなど、昨今さまざまなモンブランがある中で、この「モンブランクレメ」は唯一無二の見た目と風味、美味しさを放つ。今回、繁忙期突入にも関わらず和泉シェフに、このモンブランの誕生秘話からこだわりまで、話していただく機会をいただけた。

小さい星を意味する「アステリスク」店名の意味に隠された想い

代々木上原「アステリスク」がつむぐ魔法のモンブラン。試行錯誤して生まれた軌跡とは

代々木上原駅から徒歩5分程度。新宿はもちろん、渋谷や表参道からもアクセスが良く、近年グルメな街として、人気が上昇中だ。地元の人はもちろん多くのスイーツ好きが足を運ぶ「アステリスク」は、2012年からOPENし来年で10周年を迎える。

下町風情も漂いながらも、洗練された新店が続々とOPENする中でも輝き続ける「アステリスク」。その名前の由来は、一つ一つの小さな星でありながらも大きな輝きを放ちたいという、シェフだけではなくスタッフ一丸となっていこうとするシェフの想いを感じる。

代々木上原「アステリスク」がつむぐ魔法のモンブラン。試行錯誤して生まれた軌跡とは

そんな「アステリスク」の店内はスタイリッシュで、白を基調としたすっきりとした空間に。写真のカウンター、以前はイートインをしていた時期があるものの、現在はテイクアウトのみとなっている。

代々木上原「アステリスク」がつむぐ魔法のモンブラン。試行錯誤して生まれた軌跡とは

昔から和泉シェフと交流があるという、新潟の大工たちによる、こだわりの内装はケーキたちが光輝くようにも見え、ショーケースのまぶしさは圧巻である。季節のガトーから定番のガトー、そして上原ロールなど、ショーケースに並ぶ数は選ぶのも迷うほど。そんな中でも、人気が圧倒的に高いのが「モンブランクレメ」である。

地元の素材を「スペシャリテ」に。愛媛の中山栗の持つ繊細な香り

代々木上原「アステリスク」がつむぐ魔法のモンブラン。試行錯誤して生まれた軌跡とは

Q.この「モンブランクレメ」。栗の香りが優しく、重たさもなく絶妙で、どこの栗を使っているのでしょうか? またその理由も教えてください。

和泉シェフ「栗の生産量自体のNo.1は茨城県ですが、そのほとんどが缶詰などになってしまい、どこの栗にしようか悩んだ時に、知人であるフランス人のシェフから‟スペシャリテは、名産地とかこだわらず地元のものを使うとよいよ“と言ってくれたこともあり、僕の出身である愛媛の栗を使うことにしました。

使っているのは『中山栗』です。日照時間が長く、段々畑になっているのが特徴的な産地で、現地へ足を運んで、山まで上がって農家さんとお話もよくしました。

一般的な栗は、落として収穫するのに対し、中山栗は段々畑になっているので山の斜面にネットをはって、転がす。通常はついてしまう水分も、この方法であれば一度も地面につかず水分もまとわない。そこがとても面白いと思いました。栗の等級は1~10まであるんですが、8~10の一級品だけを選んでいます。

素材との対話で見つけた「マスカルポーネ」のクリームという、奇跡の選択肢

代々木上原「アステリスク」がつむぐ魔法のモンブラン。試行錯誤して生まれた軌跡とは

「次にぶち当たったのが、‟素材との対話“です、素材って勉強しなければいけない。この栗はとても繊細で、香りが芳醇ですが香りがドスンとくるものでもなく、ふかして調理すれば香りがよいけど若干甘みが弱いとも感じたので、それを何で補うかすごく試行錯誤しました。そこで思いついたのが、マスカルポーネのクリームです。通常はシャンティクリームを使うモンブランですが、マスカルポーネを使うことでまろやかさを出しました。このモンブランの名前、『モンブランクレメ』の“クレメ”ってクリーミーなって意味があり、モンブランだけど、乳っぽくて甘みのあるものを作りたかったんです。」

実は一番苦労したのは、モンブランの土台となる「メレンゲ」

代々木上原「アステリスク」がつむぐ魔法のモンブラン。試行錯誤して生まれた軌跡とは

Q.このメレンゲ、一般的なモンブランより厚いのに軽く感じました。どうして厚みを持たせたのでしょうか?

和泉シェフ「実は、このメレンゲを作るのが一番大変でした。一つ間違えるととても甘くなってしまうのがメレンゲです。今では主流になっていますが、OPEN当時はメレンゲをモンブランに合わせるという発想はまったくなかったんです。甘さに、栗が負けると、当時は言われていて、焼き方がキーポイントとなりました。1晩ずっと低オーブンで焼いてキャラメリゼしていく、この絶妙な焼き加減でコクが出て、今のモンブランが出来上がっています。」

そびえ立つ背の高いモンブランの秘密

代々木上原「アステリスク」がつむぐ魔法のモンブラン。試行錯誤して生まれた軌跡とは

Q.他のモンブランに比べて、背の高いこの形にされた理由を教えてください。

和泉シェフ「お菓子って、アイコンがすごく大事。ショーケースに並んだとき、お客様側から見たときのインパクトがポイントだと思っていて、当時はすごい背の高いモンブランは珍しかったし、理論上も難しいし無理と思われていました。しかし、そこをチャレンジしてみたんです。背を高くすれば、クリームにより空気を入れられて、栗の持つ香り方もかなり変わりました。」

代々木上原「アステリスク」がつむぐ魔法のモンブラン。試行錯誤して生まれた軌跡とは

今回、お忙しい中色々なことを親切に教えてくださった和泉シェフ。肝となるメレンゲは、「アステリスク」のケーキの中でもトップクラスに難しいそう。一つのケーキにたくさんの想いとこだわりがつまった「モンブランクレメ」。ぜひ一度は食べてもらいたい。

About Shop
アステリスク
東京都渋谷区上原1丁目26−16
営業時間:10:00~18:00
定休日:月、火曜日

クリーム太郎

クリーム太朗

ウフ。編集長

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編集責任者。ショートケーキ研究家として、日本全国のケーキを食べ比べる。自身でも、ケーキやチョコレートの製造・販売を目指すべく、知識だけではなく実技も鍛錬中