
スイーツを生み出す上で「おいしさ」は欠かせない大切な要素。けれどプロのパティシエたちは、それだけではなくもうひとつの“決め手”を大切にしています。それが「香り」です。
今回は「香り」も大切にしながら日々美味しいスイーツを届けている、神奈川・武蔵小杉の名店「L’ATELIER HIRO WAKISAKA(ラトリエヒロワキサカ)」のオーナー、脇坂紘行シェフにインタビューさせていただきました!

脇坂シェフが「L’ATELIER HIRO WAKISAKA」をオープンする前にスーシェフとして勤務していたのが、スイーツ激戦区である東京・自由が丘の「Mont St. Clair(モンサンクレール)」。
独立の背景を伺うと、もともと自分のお店を持つことを目標に、パティシエとしてのキャリアを積んできたそう。「Mont St. Clair」ではスイーツ作りにとどまらず、店舗経営にも携わる機会を得たことで、その経験が独立への大きな土台になったという。そして2018年、満を持して脇坂シェフ自身の店が誕生。

数ある職業の中で“パティシエを志したきっかけ”についてもお話いただきました。
「当初は大学卒業後、サラリーマンとして働くことを考えていました。そんな中、いくつかアルバイトを経験する中で、イタリアンレストランで働く機会がありました。そこで賄いを作ったり、ケーキの製造補助を担当したりするうちに、次第に料理やお菓子作りへの興味が芽生えていったんです。他にも、アルバイトという立場ながら、責任ある業務を担当する機会が増えたことで、“実力で勝負できる業界に行きたい”と思うようになり、大学卒業後は製菓学校へ進学しました。身近な人にケーキを作ったら喜んでくれたことも決め手のひとつでしたね。」

「L’ATELIER HIRO WAKISAKA」があるのは、神奈川・武蔵小杉。独立前、最後に勤務していた「Mont St. Clair」からも電車一本でアクセスできるエリアです。店舗は武蔵小杉駅からも歩いて5分ほど。落ち着きのあるこの街は、お店の雰囲気ともよく調和しています。この地を出店先に選んだ背景には、これまでの経験が大きく関係していると脇坂シェフは話します。
「自由が丘で働いていたこともあり、雰囲気の良い東急東横線沿線で出店を考えていました。そんな中、良いご縁とタイミングが重なって、今の場所に決めました。」

そんなお店の目印ともなる「L’ATELIER HIRO WAKISAKA」のロゴにも、脇坂シェフがこれまで経験してきたことや想いが詰まっています。
「店舗のロゴはスタイリッシュな雰囲気にしたかったのと、お菓子の構成に加えている“香り”の意味も込めて、化学式のようなデザインにしました。
『Mont St. Clair』でお菓子作りをしていた頃は、新商品を商品化する前に必ず辻口博啓シェフにチェックしていただいていました。何かが足りないときには『香りを入れるといい』とアドバイスをいただくことが多く、その部分を改善するとお菓子全体にまとまりが生まれるんです。その経験から、『お菓子は味だけでなく香りも大切なんだ』と学び、今でも香りを意識したお菓子作りを心掛けています。」
このロゴには、脇坂シェフがこれまでのパティシエ人生で培ってきた経験や、師匠から受け継いだ教えが、シンプルでスタイリッシュなデザインの中に込められています。こうした背景を思い浮かべながら「L’ATELIER HIRO WAKISAKA」のお菓子を味わうと、より一層その世界観を楽しめるのではないでしょうか。

「香り」を大切にしている脇坂シェフのスイーツですが、それだけではありません。「おいしさ」を引き出すためには、“素材へのこだわり”も欠かせないポイント。その想いについて伺いました。
脇坂シェフ:果物は農家さんから直接購入するようにしています。素材そのものが好きというのはもちろんですが、農家さんとのつながりも大切にしたいと思っているからです。季節ごとに、信頼している決まった農家さんから取り寄せています。仕事の関係で山梨に行くこともあるのですが、その際には直接農家さんの元へ伺うこともあります。
その上で、素材の組み合わせについては、「目を閉じて食べても何のお菓子かがすぐに分かるように仕上げること」を大切にしています。僕らパティシエの中でも、つい多くの素材を詰め込みすぎてしまい、その結果として自己満足に陥ってしまうことがあるんです。説明されないと分からないようなお菓子はあまり良くないと思っているので、分かりやすさはすごく大事にしています。
その一方で、「食べたことがあるようで、ほんの少し新しい香りがするな」と感じてもらえる程度の隠し味は加えたいと考えています。


店内には足を踏み入れると、目の前には定番のものから季節を感じるケーキを始め、全種類を手に取りたくなるような、魅力的な焼き菓子が勢ぞろい。

中でも香りに誘われて思わず目を引かれるのが、焼きたてがそのまま運ばれてくる「焼きたてフィナンシェ」です。取材中、ちょうどタイミングよく焼きたてのフィナンシェが運ばれてきましたが、店内に広がる焼きたてならではの香ばしい香りは、今でも忘れられません。

そんな焼きたてフィナンシェを始めたきっかけと、人気の秘密について伺いました。
脇坂シェフ:長年修行をしていた頃から、「焼きたてのフィナンシェは格別に美味しい」と感じていました。作る側としては常に出来立てを口にしていたのですが、ある日、店頭に並び時間が経った焼き菓子を食べたとき、その味わいがまったく違うことに気づいたんです。
その経験を通して、「店頭に並んだあとの状態まで想定してレシピやお菓子を設計しなければいけない」と強く思うようになりました。
だからこそ、「できるだけ鮮度の良い状態で召し上がっていただきたい。焼きたてならではの“外はサクサク、中はじゅわっと”した食感を楽しんでいただきたい」という想いから始まった商品です。ぜひ、個包装のフィナンシェとの食べ比べも楽しんでいただきたいですね。
オープン当初からシェフ自ら作っているという、フィナンシェには欠かせない「焦がしバター」の味わいも必見です!
他にも気になるスイーツはたくさんありますが、中でも注目すべき商品を教えていただきました!

脇坂シェフ:お客様に褒めていただくことが多いのは実は「ショートケーキ」なんです。ジェノワーズ(スポンジ生地)は修行時代から特にこだわって作ってきた部分で、思い入れがあります。なので、今でも生地は自分の手で丁寧に仕込んでいます。これを美味しいと言っていただけることは、素直に嬉しいですね。

ショーケースに並ぶショートケーキ(カット)を見て、クリームの上にいちごが乗っていないことに少し意外さを覚えましたが、これはあえてそうしているのだとか。
「“上にいちごを乗せるとその分、下のスポンジが重さで潰れてしまうから乗せない”という師匠からの教えを受け、カットケーキに関してはそのようにしています。」

脇坂シェフ:焼き菓子でのおすすめは、人気の「フィナンシェ」と、スペシャリテの「ガトーブルトン」です。フランス産バターを使って、バターのおいしさを全面的に押し出しているお菓子なので、中にある自慢のキャラメルと共に楽しんでいただけたら嬉しいです。
脇坂シェフといえば、キャラメルへのこだわりが特に強く、甘さだけでなくほろ苦さや香ばしさとのバランスで、奥行きのある味わいを生み出しています。ガトーブルトンでは、そのキャラメルとほろっと崩れる生地が一体となり、シンプルながらも後を引く美味しさです。
「L’ATELIER HIRO WAKISAKA」のスイーツには、口で楽しむ“おいしさ”はもちろん、ひと口目の前に感じる“香り”にも強いこだわりが込められています。そこには、脇坂シェフのパティシエとしての経験と想いが詰まっています。
また、素材そのものだけでなく、それを丁寧に育てる農家の方々の想いにも目を向けながら、お菓子作りに向き合っている姿勢がとても印象的でした。
About Shop
L’ATELIER HIRO WAKISAKA
神奈川県川崎市中原区小杉町2-276-1 パークシティ武蔵小杉ザガーデンタワーズイースト 1F
営業時間:11:00〜18:00
定休日:月曜日・火曜日
公式Instagram:@latelier_hiro_wakisaka

もか
ウフ。編集スタッフ
製菓学校卒業後、美味しいお店と商品を広めたいと思い、洋菓子販売と飲食店専門の広告代理店を経てウフ。編集部へ。チョコレート、ピスタチオスイーツが好き。
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