
2025年11月、奈良・三郷(さんごう)駅近くにパティスリー「2n+1(キスウ)」が誕生しました。
ショーケースに並ぶフランス菓子はどれもため息が出るほど美しく、まさに宝石箱のよう。
奈良ののどかな町に、こんな本格パティスリーができたなんて…とちょっとした話題になっていると聞いて、取材に伺いました。オープン後、初の取材とのことで、その魅力をしっかりお届けします!

最寄り駅の三郷駅から徒歩約2分。白い外観はまるでギャラリーのようで、1階は「a bread of fresh air」というベーカリーがあり、香ばしいバゲットやデニッシュが並びます。


「え、ケーキはどこ?」と一瞬迷うのですが、それもこの建物の仕掛けのひとつ。

外周をぐるっと回り込むと、アーチ型の小さな扉が。ここがパティスリー「2n+1(キスウ)」の入り口です。実はこの白いビル、カフェ・ベーカリー・パティスリーの3店舗がひとつの家族のようにつながる場所。
2階の「Cafe funchana」、1階の「a bread of fresh air」、そして奥に潜む「2n+1」。すべて星田夫妻が人との出会いを大切に育ててきた姉妹ブランドなのです。

「2n+1(キスウ)」の中に入ると一気に空気が変わり、照明は最低限、窓はゼロ。外の音も光もカットされた静寂の空間にケーキのショーケースだけが浮かび上がるように佇み、まるで舞台の上の主役のようにスイーツが並びます。短い時間なのに自分だけの特別な時間に入っていく感覚があって、ケーキを選ぶ時間すら贅沢に感じました。

ケーキを任されるのは、リーガロイヤル堺(現アゴーラ リージェンシー)やスイスホテル南海などで10年以上経験を積んだ元ホテルパティシエ・大濱琢也シェフ。
「大濱さんの技術を存分に活かせる場所をつくりたい」そう考えた星田夫妻が、建物を増築し、洋菓子の専門店をオープンしたそうです。

「2n+1(キスウ)」というユニークな店名の由来を聞くと、色々な意味を含んでいるそう。偶数・奇数の奇数は、縁起の良い数字。読み方がにている“kiss=キス”で、口の幸せ=おいしさという意味を表します。また、奇数の“奇”から「ちょっと変わったケーキを作る」という決意。そして、シンプルで覚えやすい言葉は、一度聞いたら忘れられません。

さらにショッパーには「奇数か偶数かを判定するプログラミングコード」のデザインまで。
わかる人にはわかるという洒落感があって、つい眺めたくなる可愛さです。
ショーケースには毎朝9種類ほどの生ケーキ、棚には約10種類の焼き菓子が並びます。どのケーキも本当に“美しい”のひと言で、まるでホテルブティックのショーケースをそのまま切り取ってきたような完成度です。光が最小限に抑えられた店内だからこそ、ケーキの色・質感・フォルムがくっきり浮かび上がって見えて、ついつい長居してしまいました。

大濱シェフに人気No.1を伺うと、やっぱり「ピスタチオのムースケーキ」。中には、ピスタチオのお供=グリオットチェリーのコンフィ。さらにピスタチオのブリュレまで忍ばせていて、とろっと濃厚、香ばしくてナッティです。

土台はピスタチオのビスキュイ・ジョコンド。刻んだピスタチオも散らし、香りも食感も全身ピスタチオ。そこにチェリーの酸味がきゅっと寄り添って、バランスが完璧です。「ピスタチオをしっかり味わいたい」という方にはもう、迷わずこれ!と言いたい仕上がりです。

個性派を選びたいなら、大濱シェフの自信作「タルトショコラエピス」がおすすめ。スパイスが効いた香り高いタルト生地に、チョコレートのダマンド。そこに、フレッシュでも焼き込みでもなく、あえてのドライフルーツをオン。
ショコラ×フルーツの黄金バランスなのに、しっかり赤ワインが効いていて大人の余韻が残ります。ショーケースにこういう「個性の強いケーキ」があることで、店の世界観がより深まるのだと感じました。

フリルのように繊細に絞られたモンブランクリームは、ラム酒がふわりと香る洋栗。中にはカシスクリームで酸味のアクセントをつけ、隠し味にはなんと、あんこのシャンティ。土台となるメレンゲにはエスプレッソを混ぜていて、ほろ苦さが栗の甘みをすっと引き締めます。「甘い×酸味×ほろ苦い」の三重奏がクセになる、大人のモンブランです。
筆者が気になったベルガモットムースのチョコレートは、アールグレイを合わせていたり、オペラにはカフェで挽いたエスプレッソを使用し、ブラッドオレンジをしのばせていたり。

「ありそうでない」味の組み合わせが多くて、ショーケースの前で心が忙しい…!来店されたお客さんも、扉を開けた瞬間に「わ〜〜!!!」と思わず声が漏れていました。

「正解がないからこそ迷う。でも、理想のケーキを自由に追求できる」と大濱シェフ。ショーケースに並ぶケーキ一つひとつから、その熱量が伝わってきました。「これからも新作をどんどん出したい」とのことなので、気になった方はInstagramをチェック!新しい世界観のケーキに、また出会えるはずです。
三郷という落ち着いた町に生まれた「2n+1(キスウ)」は、外界から切り離されたような暗がりの空間で、自分だけの「ケーキを選ぶ時間」を過ごせる特別な場所でした。
大濱シェフが生み出すケーキは、味の構成も見た目も繊細で、どれも「他にはない」世界観をまとっています。これから間違いなく話題になるだろうパティスリーの最初の一歩を、ぜひ体験してみてください。三郷の静けさの中で「奇数の魔法」に出会えますよ。
About Shop
2n+1(キスウ)
奈良県生駒郡三郷町立野南3-1-18 JAMビル
営業時間:11:00〜18:00
定休日:日曜日、月曜日
Instagram:@patisserie_kisuu

あかざしょうこ
ウフ。編集スタッフ
関西方面のスイーツ担当。1984年生まれ、大阪育ちのコピーライター。二児の母。焼き菓子全般が好き。特に粉糖を使ったお菓子が好きです。
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