今回のショコラティエ連載で取材をさせていただいたのは、2020年にOPENし話題のフォーシーズンズホテル東京大手町。そのフォーシーズンズホテル東京大手町でエグゼクティブペストリーシェフを務める青木裕介シェフ。眩暈(めまい)がするほど、美しいチョコレートにペストリーetc. 日本人だけではなく、世界の人を虜にし、Instagramのフォロワーは7.8万人を超える今もっとも人気のあるシェフです(@yusuke.1019)。
米国で唯一の国際的なペストリーの大会での上位入賞など、数々の世界大会で賞を勝ち取り、ニューヨークで開催されたヴァローナ チョコレートシェフ コンペティション(C3)では優勝した青木シェフは、「ペストリーの魔術師」とも呼ばれる一方で、ショコラティエとしての顔を持ちます。今回は、チョコレートの話を中心にライターのmikiさんと取材をしてきました。
Q.青木シェフが、ショコラティエとしてチョコレートづくりで大切にしていることは、どんなことでしょうか?
A.「ホテルということもあり、チョコレートの製造ラインや機材がないので大量生産ができない分、工房で一つ一つを真心こめて手作りしています。型をとって、ガナッシュを流して。見た目ではボンボンショコラは、ツヤという部分も大事にしています。食べるだけではなくて、チョコレートの入った箱を開けたときのワクワク感も大事だと思います。
Q.食べて感じたのは、口どけの良さ。すごく美味しくて、何か秘密があるのでしょうか?
A.「型を使って作っているため、色や味の層の組み合わせ、コーティングの薄さにこだわりを持って、他にはないボンボンを作るようこだわっています。コーティングを薄さの秘密は、チョコレートの温度調整“テンパリング”にあります。
機械の温度調整ではなく、僕の肌感覚で温度を調節することで仕上げています。だからこそ極薄く仕上がりますが、方から外すときが薄いからこそ難しいんです。」
Q.コーティングを薄くすると、味にどのような変化があるのでしょうか?
A.「スタッフが“これ買ってきました”といって持ってきたチョコレートを食べたり、もともとチョコレートが好きなのでよく食べるのですが、コーティングが厚すぎるとガナッシュのなめらかさも、繊細な香りも台無しになってしまいます。ガナッシュのなめらかさ、コンフィチュールの甘さが負けてしまうんです。そうすると、ずっとチョコレートだけを食べているような感覚になってしまいます。」
ひと口食べて香りだったり、味を感じてもらうことをすごく大事にしているので、コーティングを薄くしてガナッシュや中のコンフィチュールをバランスよく楽しんで欲しいと思い、この製法にこだわっています。自分は特に酸味のあるチョコレートが好きなので、自身の直感を信じ、好きな酸味や苦みをそれぞれのデザート、ショコラで表現しているのかなと思います。組み合わせや表現方法は無限だと思うので、枠にとらわれず自由に考えています。」
Q.カカオの産地や農園へ実際いかれたりするのでしょうか?
A.「農園の視察に行ったりはしています。その国の現状や農家の方々の環境が見えますが、カカオはほぼ発展途上国で作られています。ボンボンショコラを買うことのない人々がカカオ豆を作り、先進国でカカオ農園を見たことのない人がチョコレートを生活の嗜好品として楽しんでいます。そういった現状を少しでも理解しながら、チョコレートは本当にとても貴重なものだと思い使っています。だからこそ、一つ一つを丁寧に仕上げています。」
Profile
青木裕介 Aoki Yusuke
フォーシーズンズホテル東京大手町
エグゼクティブペストリーシェフ
ザ・リッツ・カールトン・ドーハ、パティスリー&グルマンディーズ by M.O.F、パティシエ ステファン・グラシエ、ザ・リッツ・カールトン・トロントなどを経て、2017年よりフォーシーズンズ リゾート バリ アット ジンバラン ベイ。そして2020年、同フォーシーズンズホテル東京大手町のエグゼクティブパティシエに就任。
2015グローバル・ペストリー・ シェフ・チャレンジで優勝、ギリシャで開催された2016グローバル・ペストリー・ シェフ・チャレンジでは特別賞を受賞するなど、世界で名を馳せました。
About Shop
THE LOUNGE(ザ・ラウンジ) フォーシーズンズホテル東京大手町
東京都千代田区大手町1丁目2−1(MAP)
営業時間:11:00~20:00(L.O.19:00)
定休日:なし
Photo/Masahiro Noguchi Writing/Cream Taro(坂井勇太朗)
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