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静岡初のクラフトチョコレート『Conche』(コンチェ)。メーカーが誕生するまでとこれから・・・(前編)連載「チョコと人と、物語と」vol.03

静岡初のクラフトチョコレート『Conche』(コンチェ)。メーカーが誕生するまでとこれから・・・(前編)連載「チョコと人と、物語と」vol.03

最近良く耳にするクラフト〇〇と言う言葉。クラフトビールやクラフトジン、はたまたクラフトコーラなんてものまで登場していますが、元を辿ればそれぞれの地域性を活かした以前の地〇〇ブームが下地にあるのは言うまでもありません。

そんな中クラフトチョコレートはどうでしょうか? 今や日本全国様々な場所でBean to Barでチョコレートが作られており、その数を把握することも難しいほどになっていますが、地方組のクラフトチョコレートメーカーの中でも、特にパイオニア的存在の静岡の『Conche』店主 田中克典さんをインタビューしたいと思います。

機械工学を専門としていた店主。チョコレートの世界へ足を踏み入れるきっかけは、アメリカのブランド「ダンデライオン」

静岡初のクラフトチョコレート『Conche』(コンチェ)。メーカーが誕生するまでとこれから・・・(前編)連載「チョコと人と、物語と」vol.03

静岡駅から西に徒歩15分ほど歩いたところにあるクラフトチョコレートメーカーがConcheです。以前は静岡駅から南東に車で15分ほど行ったところにお店を構えていましたが、2020年1月に現在の静岡市葵区七間町に移転しています。

ue_mon:Concheはいつオープンされたのですか?

田中さん:2015年12月です。この当時、まだ日本でBean to Barでチョコレートを作っているメーカーは殆ど無く、前例の少ない業態だったと思います。

 ue_mon:なぜクラフトチョコレートを始めようと思ったのですか?

田中さん:小さい頃からモノ作りに興味があり、大学では機械工学を学びましたが、自分自身は会社で決められた範囲の中で仕事をこなす、企業エンジニアと言う道に違和感があり、いずれは最初から最後まで責任を持って携われるモノ作りをしたいと思っていました。そうしたときに、自分で物を作って売っていくには、まず営業のスキルを身につけ、仕組みを理解しなくてはいけないと思い、大学卒業後は名古屋で通信系の会社の営業職に就職しました。

ue_mon:では、その時点では何を作るかは決めず、「モノ作りと言うゴール」を設定した上での就職だったのですか?

田中さん:はい、そうです。また、企業勤めを経験しながら「自分が何を作りたいか?」を考える時間も捻出できるのでそうしました。日々、アンテナを張って、どんなものを作っていこうかと考えていたところ、2014年8月にたまたま目にした雑誌に「コーヒーとチョコレート」と言うテーマの特集があり、その当時アメリカで勢いのあったサードウェーブコーヒーとクラフトチョコレートの工房を写真と共に紹介している記事を読んで、引っかかるものを感じました。

静岡初のクラフトチョコレート『Conche』(コンチェ)。メーカーが誕生するまでとこれから・・・(前編)連載「チョコと人と、物語と」vol.03

その記事の中では、アメリカの「DANDELION CHOCOLATE」(アメリカ サンフランシスコにあるBean to Barムーブメントを牽引してきたクラフトチョコレートメーカー)の工房を俯瞰して撮った写真が掲載されていたのですが、赤レンガ作りの倉庫の様な建物で、働いている人たちとチョコレートができるまでの工程が全て見えるというのはとても衝撃的でした。

そしてカカオ豆からチョコレートを作る工程を初めて知って、こんなにもシンプルな方法でチョコレートができているのか、と驚きました。それから「日本で同じ様なメーカーはないのかな?」と調べてみたら、その当時日本ではまだ数えるほどしかなくて、これはやってみても良いかもしれないと思いました。

味わい深い「クラフトチョコレート」に出会い、製造を決意

静岡初のクラフトチョコレート『Conche』(コンチェ)。メーカーが誕生するまでとこれから・・・(前編)連載「チョコと人と、物語と」vol.03

ue_mon:確かに当時は日本にクラフトチョコレートメーカーはほとんど無かったと思います。それからConcheを立ち上げるまで、どうされたのですか?

田中さん:とりあえずBean to Barについて調べていく中で、2014年10月に横浜の赤レンガ倉庫で立花商店さん(小規模店舗向けにカカオ豆の輸入・販売を行っている会社)がBean to Barのイベントをやると知ったので、参加することにしました。そこで初めてクラフトチョコレートを食べて、凄く感動したのを覚えています。

これまでは市販のチョコレートしか食べたことがなくて、板チョコレートも甘過ぎて一枚食べ切れないくらいでしたが、クラフトチョコレートは味わい深いし、甘さも控えめで体への負担が少なかったので、これまでのチョコレートとは明らかに違うと思いました。そして国内外のクラフトチョコレートを買い集めて食べ比べる中で、「日本のクラフトチョコレートにはまだまだ成長できる可能性がある」と感じ、自分で作る決意をしました。

そして手始めにアメリカの通販サイトで家庭用のメランジャー(カカオ豆を石のローラーですり潰し、滑らかなペースト状にする機械)を取り寄せることにしました。現地の価格で250$くらいだったと思いますが、結局関税とか送料、手数料が入って倍近い値段になりましたね(笑)そして準備期間一年を経て2015年12月にConcheをオープンしました。

ue_mon:コンチェと言う名前にはどの様な意味が込められているのでしょうか?

田中さん:あまり深い理由はありませんが、店の名前はチョコレートに関する言葉の中から引用したいな、と思っていたところ、チョコレートの生地を撹拌して滑らかにするのに用いられる機械の「Conche(コンチェ)」が、文字の形や音の雰囲気がしっくりきて決めました。

静岡でのお店OPENは、奥様の地元がきっかけで

静岡初のクラフトチョコレート『Conche』(コンチェ)。メーカーが誕生するまでとこれから・・・(前編)連載「チョコと人と、物語と」vol.03

ue_mon:なぜ静岡を選んだのでしょうか?

田中さん:一番の理由は妻の地元が静岡だったからです。学生時代はお互い名古屋にいましたが、お付き合いしていた当初、彼女が就職を機に地元静岡に帰ってしまったので、結婚するタイミングで遠距離の問題を解決しなくてはならず、色々と出店場所の候補は考えていましたが全てすっ飛ばして、彼女の地元にしようと決めました(笑)

ue_mon:男気! その時の偶然の流れもあって静岡になったのですね!

田中さん:それからまずは僕も静岡に住んでみようと思い、前職を辞めて2015年3月に1ヶ月程住むことにしました。静岡に土地勘が無かったので、出店先を探し、土地勘を得るには静岡中の道を見て回るしかないと考え、自転車を購入して静岡中の道路を走り、ありとあらゆる場所を探索しました。

静岡初のクラフトチョコレート『Conche』(コンチェ)。メーカーが誕生するまでとこれから・・・(前編)連載「チョコと人と、物語と」vol.03

ある日どのくらい自転車に乗ってるのかなと思いGPSアプリで確認したら、一日100km以上走っていてビックリしました(笑)とにかく、静岡中の道と言う道を塗り絵のように通るだけ通って、空き物件を見つけたら地図にマークをつけてという地道なことをしていました。

そしてある程度出店先を絞り込んだところで、出店先候補の物件の前の通りに張り付いて、自分が想定している営業時間帯の交通量調査を独自に行い、どれくらいの客足が見込めるかも調べました(笑)それぞれの候補地を比較して、最終的には消去法で旧店舗があった静岡市駿河区高松に決めました。

ue_mon:凄い執念を感じます(笑)

次回は、「Conche」田中さんが作り出すチョコレートの秘密と、軌跡をお届けします。

About Shop
「Conche」
静岡県静岡市葵区七間町16ー7 SOZOSYA OMACHIビル 1A(MAP)
営業時間:11:00~18:00
定休日:不定休

ue_monさん

ue_mon

通りすがりのただのチョコ好き

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Instagram ue_monにて、お酒や料理、チョコレートの情報を発信中。チョコのテイスティングの感想も上げながら、チョコレートの魅力や楽しみ方も投稿。この連載では、チョコレートの作り手、ブランドを担う人々の姿や想いを執筆してくれます。