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鹿児島県、鹿屋が生んだチョコレート工房「kiitos」(キートス)連載「チョコと人と、物語と」vol.01

鹿児島県、鹿屋が生んだチョコレート工房「kiitos」(キートス)連載「チョコと人と、物語と」vol.01

ue_mon

通りすがりのただのチョコ好き

メンバーの記事一覧

Instagram ue_monにて、お酒や料理、チョコレートの情報を発信中。チョコのテイスティングの感想も上げながら、チョコレートの魅力や楽しみ方も投稿。この連載では、チョコレートの作り手、ブランドを担う人々の姿や想いを執筆してくれます。

今回から始まる、一つの連載。それは編集長自らずっとお願いしたいと思っていた、チョコレートの連載。「美味しさ」ではなく、「人」にスポットをあて、書き手の自由な表現を思う存分に記事にしてもらいたい、そんな連載が始まりました。書き手としても、初挑戦となるue_monさん。

チョコレートの情報を発信するInstagramは、勉強になるほか、チョコレートの新たな楽しみやお店やチョコレートブランドの歴史も知ることができます。そんなue_monさんによる連載の第1回目とは? 

下記より始まる連載。熱い思いあふれるインタビュー、ぜひじっくり読んでほしい。

鹿児島で生まれたチョコレートメーカー「kiitos」。第1回目にue_monさんが選んだ理由

鹿児島県、鹿屋が生んだチョコレート工房「kiitos」(キートス)連載:○○vol.01

ue_mon「僕がkiitosと出会ったのは2017年の11月。

僕の故郷の鹿児島県鹿屋市に新しいチョコレートメーカーができたとの噂を聞き、丁度実家に帰省したのをきっかけに、地元の青空市場に出店していた彼らに会いに行くことにした。」

「当時、まだ店舗を持っていなかったkiitosはイベント出店での初お披露目とあり、ぎこちない様子だったが、会ってすぐにチョコレートを共通項にたくさんのことを話した。

それから僕が鹿屋に帰省するとき、kiitosが関東のイベントに出展するときは連絡を取り合って、会うようにしている。

僕は彼らを敬愛しているし、地元鹿屋の誇りだとも思っている。だから、今回ufu.での一番最初の記事をkiitosに捧げたいと思う。」

障がい者の就業支援をするNPOが、なぜチョコレートメーカーを始めたのか?

鹿児島県、鹿屋が生んだチョコレート工房「kiitos」(キートス)連載:○○vol.01

錦江湾を臨むチョコレート工房 Kiitosは鹿児島県の大隅半島にある鹿屋市で創業したクラフトチョコレートメーカーです。

様々な障がいを持った人たちの就業支援に取り組むNPO法人Lankaが、支援策の一つとして展開しているカカオ豆からチョコレートを製造し販売する事業で、かつて「日本一海に近い学校」と呼ばれ、

桜島や錦江湾が一望できる場所にある旧菅原小学校の廃校舎を活用して作られた施設「ユクサおおすみ海の学校」内にファクトリーショップを構えています。

鹿児島県、鹿屋が生んだチョコレート工房「kiitos」(キートス)連載「チョコと人と、物語と」vol.01

今回はkiitos創設メンバーである大山さんご夫婦にお話を伺いました。

ue_mon「なぜ障がい者の就業支援をするNPOがチョコレートメーカーを始めたのか? 」

大山真司氏「元々、我々は障がい者の就業支援を行うNPO法人『Lanka』を運営しており、従来商品パッケージのラベル貼りや石鹸作り等の内職を中心に、様々な障がいを持った施設利用者に既存の仕事を紹介する活動を行ってきましたが、

”福祉”と言う真面目で堅苦しいイメージがついてしまうことに違和感を持っていました。

そして我々自身も何か新しいことに挑戦したいという思いもあり、働くことの原点に立ちかえりました。

仕事を通して得られる”楽しさ”や”喜び”、”達成感”そして”成長”をどうしたら体感してもらえるだろうかと考えたときに、自分たちの身近にあり、誰もが好きなチョコレートをやってみるのは面白いのではないかと思ったのがきっかけです。

思い切ってから2日。即決でのブランド立ち上げ

鹿児島県、鹿屋が生んだチョコレート工房「kiitos」(キートス)連載:○○vol.01

チョコレートを作ろう!と思い立って調べ始め、

その当時、九州から近いところで広島県尾道市で既に有名になっていたUSHIO CHOCOLATL(ウシオチョコラトル)のところで、Bean to Bar chocolateについて学ぼうと思い、早速連絡を取りました。思い立ってから僅か二日の即決でした(笑) 」

ue_mon「凄くフットワークが軽いですね!それから立ち上げまでどうされたんですか? 」

大山愛子さん「2017年の夏に、現工場長の白坂がUSHIO CHOCOLATLの元に伺い、Bean to Bar chocolateについて様々なことを学び、

そこから帰ってきてから、ロゴやオリジナルモールド、パッケージの作成等に着手し、その年の11月に地元のマーケット『マルクト』で初お披露目になりました。」

「kiitos」という名前に込められた意味は、一本の切れない糸と感謝の気持ち

鹿児島県、鹿屋が生んだチョコレート工房「kiitos」(キートス)連載:○○vol.01

ue_mon「僕はそのときに初めてお会いしたんですね。『kiitos』と言う名前にはどの様な意味が込められているのでしょうか?

大山真司さん「元々『kiitos』はフィンランド語で”ありがとう”と言う意味の言葉です。私たち夫婦は元々北欧文化に興味があり、NPO法人『Lanka』も”糸”と言う意味のフィンランド語で、様々な個性の糸と糸が寄り合ってできる一本の糸は切れないと言う意味が込められています。

そうして出来上がったチョコレートを今度はありがとうと言う気持ちを込めて送り出したいと思い、『kiitos』と言う名前にしました。

このありがとうは単にお客様に対して向けたものだけでなく、カカオ生産者やそこに関わる人々、或いはお客様の手から誰かにプレゼントされたときも含めて、感謝の気持ちの輪が繋がると言う意味も込められています。 」

鹿児島県、鹿屋が生んだチョコレート工房「kiitos」(キートス)連載:○○vol.01

ue_mon「そんな意味があるのですね! 現在、ファクトリーショップがある『ユクサおおすみ海の学校』に移られたのはいつからだったのですか?」

大山愛子さん「ファクトリーショップのある『ユクサおおすみ海の学校』は海にちなんで、2018年の海の日の7月16日に”開校”しました。

実際にはその前から製造拠点を移していましたが、オープンしたのはその日です。旧菅原小学校では給食室として使っていた場所に現在のファクトリーショップがあります。 」

形になるまで、約3年。メンバーがチョコレートを作れるようになるまで

鹿児島県、鹿屋が生んだチョコレート工房「kiitos」(キートス)連載:○○vol.01

ue_mon「チョコレートの製造はどの様に行われているのですか?」

大山愛子さん「元々はUSHIO CHOCOLATLで製造スキルを学んだ工場長の白坂がチョコレートの製造を行い、障がいを持った方々にはパッケージのイラストデザインや、カカオ豆を選別する作業、出来上がったタブレットを包装紙で包む作業をお願いしていました。

それからチョコレートの製造に興味を持ってくれた方に、カカオ豆のローストや、テンパリング、モールドにチョコレートを流す作業を少しずつレクチャーして、現在ではチョコレート製造に関わる作業の全てをお任せしております。」

ue_mon「やはりチームを作り上げるには時間と根気が必要と言うことですか?」

大山真司さん「実際に現在の形になるまで3年ほどかかりました。あるとき、テンパリングができる様になったメンバーが、周りに自慢を始めたことがありました。

とても嬉しいことではあるのですが、周りを貶したり、テンパリングができる自分が偉いとおごった気持ちを持つと、他のメンバーにも影響して仕事自体が楽しく無くなってしまいます。それは普通の会社でも起こり得ることです。

そこでテンパリングするためには、カカオ豆を選別してくれる人がいて、カカオ豆をローストしたり、練り上げたりして生地を作ってくれる人がいるから、テンパリングと言う作業ができるんだよ、と伝えました。

それからそのメンバーは他の作業をするメンバーをリスペクトする様になりました。そうしたことを繰り返しながらですが、少しずつ今のチームが出来上がっています。」

「福祉」という堅苦しいイメージではなく、美味しいチョコレートを届けたい

鹿児島県、鹿屋が生んだチョコレート工房「kiitos」(キートス)連載:○○vol.01

ue_mon「お互いを尊重し合うことはとても重要ですね。『kiitos』のチョコレートは一見すると、福祉の方々が手がけているとは思えない様なポップなデザインになっていますね。そこには何かこだわりがあるのですか? 」

大山真司さん「先ほどもお話しましたが、私たちは『福祉』と言う堅苦しいイメージではなく、美味しいチョコレートをお客様にお届けするその先に、我々の活動や信念を伝えられたらと思っています。

なので、福祉ありきのチョコレートではなく、ただ自分たちが美味しいと思えるチョコレートを作ることが大事だと思っていますし、世の中にある様々なチョコレートの中から、選んで頂ける商品にしなくてはならないと思っています。」

ue_mon「なるほど。とても理に適っていると思います。」

大山愛子さん「先日も取引先の方がわざわざ見学に来られて…実はその方々には福祉事業者だと言うことはちゃんとお伝えしていなくて(笑)

見学に来られた方々をメンバー自ら案内している姿を見て、とても誇らしくなりました。そして見学に来られた方々もとても驚かれていました。」

ue_mon「そうやって成長を感じられる瞬間があると、きっと感慨深いものはあるでしょうね。メンバーの方々はどの様なことがモチベーションになっているのでしょうか?」

大山愛子さん「やはりお客様から『美味しい!』と言って頂けるのが、一番モチベーションに繋がると思います。我々スタッフが展示会やイベントに出店した際は、その時の状況をなるべくメンバーの方々にお伝えする様にしていて、その時の反応を気にかけてくれています。

また、我々の商品のパッケージデザインは、メンバーの方々にそのカカオ産地にまつわるイメージをいくつか見せて、描いてもらったイラストの中から選んでいるのですが、自分の描いたイラストが採用されることで、凄く自信や責任感を持ってくれています。

メンバーがいよいよ、商品開発に挑む

ue_mon「今後挑戦したいことはありますか?」

大山愛子さん「現在チョコレートの製造は自分たちでできるようになりましたので、今年は商品開発を任せてみようかなと思っております。

いくつかカカオ豆のサンプルを取り寄せ、そのサンプルの中からメンバーが気に入った豆を選び、自分たちでローストの温度等をプロファイリングして作ってもらいます。

まずそのために、現在メンバーにカカオの歴史や、産地の文化を教えています。そうした背景を知ることも、チョコレート作りにはとても重要だと思うからです。

私たちの歩みはゆっくりではありますが、着々と前に進んでいますし、我々にしかできないことだと思っています。」

編集長より
いかがでしたでしょうか? 人によっては長い、人によっては難しいと思うこともあるかもしれません。この日本で、チョコレートを舞台にした壮大な、大きな物語が存在します。大山さんご夫婦をはじめ、右衛門さん、そして主人公であるお店のスタッフのみなさん。パッションあふれるお菓子は、きっと人を豊かにします。「映える」「見た目がかわいい」、そういう現代の楽しみ方も一興ですが、ぜひ作り手の想いやストーリーにも目を向けてみませんか? ウフ。では、一人でも多くの方が、興味を持って読んでもらえれば、それがメディアとしての大きな役割をしたなと感じる部分です。もちろん、流行も新しい情報も発信はしていきます。ウフ。を好きになってくれたら、ぜひお菓子から作り手へ、きっと、あなたのお菓子感や人生が、ちょっぴり豊かになるかもしれません。 by 編集長 坂井勇太朗(クリーム太朗)

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kiitos
鹿児島県鹿屋市天神町3629−1 ユクサおおすみ海の学校1階内(MAP
営業時間:11:00~17:00、金曜日11:00~15:00
定休日:月~木曜日 ※営業時間、定休日は公式インスタグラムをご確認ください。
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