ufu(ウフ)スイーツがないと始まらない。
職人の「手しごと」で奏でる“本当に美味しいチョコレート”とは? nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO「mikiのショコラティエ探訪記vol.05」

職人の「手しごと」で奏でる“本当に美味しいチョコレート”とは? nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO「mikiのショコラティエ探訪記vol.05」

東京は日本橋 浜町。今回のショコラティエ連載の舞台となるのは近くには隅田川、そして歌舞伎で有名な明治座、下町情緒あふれる浜町にある「nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO」。2019年2月にOPENし、まだ約2年ながらチョコレート好きの中では話題になり、「知る人ぞ知る」ではなく、「誰しもが知る」人気店に。

Bean to Barからボンボンショコラ、アマンドショコラなど、多彩なチョコレート菓子が並び、魅力あふれるこのお店を支える村田友希シェフが登場します。いつもの連載より、回数を増やし全部で3回のショート連載。毎週届け予定です。今回は、お店のコンセプトである職人も手しごとを感じる”練る”というコンセプトとチョコレートへのこだわりを取材してきました。

「日本らしさを体験してもらいたい」そんな思いから生まれた、職人の手しごとを身近で感じられる工房

職人の「手しごと」で奏でる“本当に美味しいチョコレート”とは? nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO「mikiのショコラティエ探訪記vol.05」

Q.お店に入ったときに、カウンターの奥の厨房はもちろん、ガラス越しの工房が目に入りました。お店の名前「nel」には「練る」という意味が込められていると聞きましたが、”チョコレートを職人の手で丁寧に作る”そこにはどんな村田さんの想いが込められていますか?

A.この浜町という町がそうなんですが、お店のコンセプトとして「手しごと」をすごく大事にしています。全世界共通の嗜好品でもある「チョコレート」というものを、日本らしさとしてどう表現できるかと考えたときに、「職人の手しごと」という点に着目しました。

実際にチョコレートは全部、選別から加工、焙煎から仕上げまでを手掛けるいわゆるBean to Barの手法を取り入れています。チョコレートを持ち帰って食べていただくことはもちろんですが、パフェやかき氷などここで出来立てを食べて「ここでしか体験できない」ということを大切にしています。

Q.工房では、どんな作業が見られるのでしょうか?

A.カカオ豆の選別から、ボンボンショコラを仕上げるところまでご覧いただけます。

職人の「手しごと」で奏でる“本当に美味しいチョコレート”とは? nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO「mikiのショコラティエ探訪記vol.05」

一粒一粒、状態のいいカカオ豆を選別するところから始めます。ときにはカカオ豆以外にも…。

職人の「手しごと」で奏でる“本当に美味しいチョコレート”とは? nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO「mikiのショコラティエ探訪記vol.05」

よく見学に来た方にも、説明するんですが種類でいうとこんなにあります。羽、石、草、カラのみとかいろいろ。たまにコーヒー豆なんかもあるし、カカオパルプはこんなひも状なんですよ(笑)。

職人の「手しごと」で奏でる“本当に美味しいチョコレート”とは? nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO「mikiのショコラティエ探訪記vol.05」

まず、実際にふるいにかけてから、そのあと手で触って確かめています。地味だけど、大切な工程です。チョコレートをおいしく作るためにも、「手しごと」が大事だと思っています。

「チョコレートは、やはりカカオの香りで勝負したい」

職人の「手しごと」で奏でる“本当に美味しいチョコレート”とは? nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO「mikiのショコラティエ探訪記vol.05」

Q.お店には、ビーントゥバーチョコレートからボンボンショコラ、ショコラショーやパフェなど、色々なチョコレートの魅力があふれているなと思いました。村田さんが、形をかえどもチョコレートで大事にしていることは何でしょうか?

A.「カカオの香り」です。これは、僕が修行していたお店の影響も大きくて。京都の福知山市にある、「洋菓子マウンテン」です。水野直己さんからはたくさんの影響を受けました。「チョコレートなら、ショコラティエなんだしまずカカオの香りで勝負しようよ」と言われたのを今でも覚えています。

職人の「手しごと」で奏でる“本当に美味しいチョコレート”とは? nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO「mikiのショコラティエ探訪記vol.05」

例えば、ボンボンショコラでは外側はあえて45%程度のベトナム産のハイカカオのチョコレートでコーティングしています。センターに入っているガナッシュはあえておさえてガーナ産のマイルドな39%ぐらいのものをベースに。それぞれ産地も違うのは、カカオのとがっている部分があるかないかの差が大きいからです。ガーナ産のは比較的マイルドに仕上がります。

食べた最初は「カカオの風味」がやってきて、そのあとに中のフレーバーが香り、カカオの余韻で終わる。そんなチョコレートを目指して作っています。この工程も手間がかかっているので、手しごとかもしれませんね(笑)

「チョコレートづくりに正解はない。手探りで自己流のベストを常に探求し続けるのが本当に楽しい」

職人の「手しごと」で奏でる“本当に美味しいチョコレート”とは? nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO「mikiのショコラティエ探訪記vol.05」

Q.チョコレートづくりにおいて、どのショコラティエさんも保管に気を使っていらっしゃる方が多く、村田さんはどのようにされていますか?

A.同じく、チョコレートづくりにおいて一番大事なのは「保管」だと思っています。それもうちはカカオ豆の保管だけではなくて、「カカオニブ」と「テンパリングした状態」のものを保管しています。ちょっと難しい話になるので、手順を一度まとめますね。

先ほど話した通りカカオ豆を選別したら、次に焙煎という工程を踏みます。この焙煎もポイントで、130~150℃ぐらいでしっかり焙煎します。カカオの悪い部分を出さないように。結構神経を使う部分ですね。低温でローストすると、えぐみが強調されてしまうので。

職人の「手しごと」で奏でる“本当に美味しいチョコレート”とは? nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO「mikiのショコラティエ探訪記vol.05」

焙煎して、粉砕したら「カカオニブ」=カカオの小さな片の状態になります。ここでポイントは、真空パックして寝かせることです。だいたい1か月かな? 寝かせることで、カカオの悪い部分が飛んでいくんですよね。そしてその後寝かせたニブを精製して、チョコレートの状態に持っていきます。テンパリングという液状のチョコレートを温度調整する工程を踏んだら、これも一度真空パックして保管します。

Q.どうやってそこへ行きついたのでしょうか?

A.これは試行錯誤したからです。このやり方が正しいかはわかりません。色々な方法を試し、今はこれが一番だと思っています。この方法をやっているのはうちだけだと思います。そして「これが正解」とはいえないけど、「チョコレートには正しいやり方はない」と思っています。常に挑戦をして、おいしいチョコレートを探求していますね。

いかがでしたでしょうか? 他では聞けないチョコレートの深い話を今回お聞かせいただきました。次回は、村田さんが出会った修行時代のショコラショーと、nelのショコラショーを紹介します。

Profile
村田友希 Murata Yuki
京都市内の洋菓子店にてパティシエとしてスタートし、京都 福知山市「洋菓子マウンテン」に勤務し、ワールドチョコレートマスターズ2007総合優勝の水野直己氏に師事。2012年より同店のスーシェフをつとめ、2014年よりフランス、ルクセンブルグのパティスリーにて勤務し伝統菓子を学ぶ。帰国後、nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO 開業にあたりシェフショコラティエに就任。

About Shop
nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO
東京都中央区日本橋浜町3丁目20−2 HAMACHO HOTEL内( MAP
営業時間:10:00~18:00
定休日:不定休

Photo/Omori Tadaaki Writing/Cream Taro