ufu(ウフ)スイーツがないと始まらない。
クリームソーダには、記憶と風景を閉じ込められる。「旅する喫茶」SNSで人気のクリームソーダ職人tsunekawaさんインタビュー

クリームソーダには、記憶と風景を閉じ込められる。「旅する喫茶」SNSで人気のクリームソーダ職人tsunekawaさんインタビュー

クリームソーダには、記憶と風景を閉じ込められる。「旅する喫茶」SNSで人気のクリームソーダ職人tsunekawaさんインタビュー

喫茶店の看板メニューのひとつ、クリームソーダ。カラフルで楽しいレトロなビジュアル、しゅわしゅわと立ち上る炭酸の気泡、じんわりと溶けて沈んでいくアイス。見ているだけで楽しくなるような魔法のドリンクは、喫茶店メニューの中でも唯一無二の存在。

今回の記事の主役は、そんなクリームソーダに魅せられ、全国各地で旅をしながらその土地の食材や風景を閉じ込めたクリームソーダをつくり、SNSで発信を続けるクリームソーダ職人・tsunekawaさん。(@tsunekawa_)スパイスカレー作りが得意な相方・玉置さんと共に「旅する喫茶」として全国各地で喫茶イベントを開催している彼ですが、どうしてクリームソーダ作りをはじめ、こんなにも愛し続けているのか。そのクリームソーダ愛についてお聞きしました。

「旅する喫茶」(高円寺)と、“クリームソーダ職人”tsunekawaさんとは?

クリームソーダには、記憶と風景を閉じ込められる。「旅する喫茶」SNSで人気のクリームソーダ職人tsunekawaさんインタビュー

「旅する喫茶」は、全国各地を旅して、その土地の風景を閉じ込めたクリームソーダと、地物食材を使ったスパイスカレーを提供するプロジェクト。クリームソーダ職人のtsunekawaさんと、スパイスカレー担当の玉置さんが同じ“旅好き”ということで意気投合し、二人三脚でスタートしました。

2019年からSNSで開催地を発信しつつ、イベント形式で開催していたプロジェクトですが、2021年3月、ついに高円寺に「旅する喫茶」初となる実店舗がオープン。

クリームソーダには、記憶と風景を閉じ込められる。「旅する喫茶」SNSで人気のクリームソーダ職人tsunekawaさんインタビュー

高円寺店は、旅する喫茶とお客さんにとっての「旅の拠点」としての機能を持っているのだそう。それに伴って、提供しているスパイスカレーは、原点でありベーシックなチキンカレーと、期間限定のスペシャルカレーの2つ。スペシャルカレーは、直近の旅先で訪れた食材を使ったカレーであることが多いそう。高円寺にいながら、地方の食材を使ったメニューが味わえたり、また次の旅先の参考にできたりと、さまざまに楽しめます。

クリームソーダには、記憶と風景を閉じ込められる。「旅する喫茶」SNSで人気のクリームソーダ職人tsunekawaさんインタビュー

左から紫陽花のクリームソーダ(販売終了)、青空のクリームソーダ、カレー2種盛り(ブラウンペッパーフライ(販売終了)&旅する喫茶のチキンカレー)

期間限定のクリームソーダも、今までの旅先で出会った風景を閉じ込めたもの。取材にお伺いした6月時点では、鮮やかなベリー色の「紫陽花のメロンソーダ」(販売終了)が提供されていました。紫陽花の花びらを連想させつつ、梅雨の季節の風景をも閉じ込めているような幻想的な美しさ。訪れた人々は、クリームソーダにスマホやカメラを向け、思い思いにシャッターを切っていました。

クリームソーダの原点は、幼いころの幸せな記憶。「冒険好き」だった少年時代

クリームソーダには、記憶と風景を閉じ込められる。「旅する喫茶」SNSで人気のクリームソーダ職人tsunekawaさんインタビュー

2021年に高円寺の実店舗が開店し、今年2023年内には2店舗目のうきは店を開店予定の「旅する喫茶」。そんなtsunekawaさん、実は本業はファッションデザイナー。クリームソーダを好きになったきっかけをお伺いしました。

「地元の愛知県では、喫茶店文化が地域に根付いていて。小さいころ、おばあちゃん子だったので、祖父母にくっついてよく近所の喫茶店のモーニングに行っていました。そこで出てくる、大きな甘いクリームソーダが大好きで。眠い目をこすりながら祖父母と飲んだクリームソーダの幸せな記憶が今もずっと忘れられなくて、そこがクリームソーダ好きになった原点ですね」

クリームソーダには、記憶と風景を閉じ込められる。「旅する喫茶」SNSで人気のクリームソーダ職人tsunekawaさんインタビュー

「小さいころから、自分の知らない風景を見に行く、“冒険”するのが好きだったんです。近所の川が、どこまでつながっているか見に行ったりとか。大人になって、いろんなところを冒険=旅ができるようになってからは、そこで出会った風景を、大好きなクリームソーダに閉じ込めるようになりました。旅する喫茶は、小さい頃の“好き”の記憶の延長線上にある活動なんです」

「もともとファッションデザイナーの仕事は、洋服をつくるのではなく、“ライフスタイル”をデザインしている感覚で取り組んでいました。だから、それが飲食という手段に代わっただけなんです」。

クリームソーダは「枠組み」を広げられる。食でありアートである飲み物。

クリームソーダには、記憶と風景を閉じ込められる。「旅する喫茶」SNSで人気のクリームソーダ職人tsunekawaさんインタビュー

tsunekawaさんが作る幻想的で美しいクリームソーダの写真は瞬く間にSNSで話題を呼び、「旅する喫茶」を開催すればすぐに満員に。レシピ本やエッセイを含め、今までに書籍もなんと4冊を発行しています。どうしてこんなにクリームソーダにのめりこんだのでしょうか?

「クリームソーダって、グラスの中で絵を描くみたいに、視覚的に様々な表現ができるんです。美しい青空も、夕焼けの風景も、カレーでは表現できないけど、クリームソーダならできる。単なる“ドリンク”の枠組みを超えた表現ができるので、もっともっと、色んな表現ができるんじゃないかって模索できるのが楽しくて。味だって、名産フルーツを使った自家製シロップでその土地を表現できるんです」

クリームソーダには、記憶と風景を閉じ込められる。「旅する喫茶」SNSで人気のクリームソーダ職人tsunekawaさんインタビュー

「それに、世代を超えてこんなにも愛されているメニューってなかなか無い。『旅する喫茶』に家族で来てくれて、親世代は珈琲を飲みながら、子どもはクリームソーダを飲んでいたり。そんな幸せな光景を見るたびに、クリームソーダをつくっていてよかったな、って思えるんです」

2号店・うきは店(福岡県)の出店へ。お客さんの「喫茶時間」から「24時間(1日)」、「人生の時間」をつくる挑戦。

クリームソーダには、記憶と風景を閉じ込められる。「旅する喫茶」SNSで人気のクリームソーダ職人tsunekawaさんインタビュー

2019年4月に「旅する喫茶」の活動をはじめてから、約4年。各地を巡業し、現在は26都道府県50ヶ所で喫茶イベントを開催したといいます。現在はクリームソーダづくりや喫茶店の枠を飛び越え、書籍の発行やクリームソーダグッズの販売も行っているtsunekawaさん。今後の展望についてお聞きしました。

「もともと“ライフスタイルをデザインする”ということが、自分の活動のコンセプト。『旅する喫茶』では、喫茶時間をデザインしていたけれど、さらにそれを拡張して、24時間、さらには人生そのものをデザインできるようなことをやってみたいです。ちょっとスケールが大きくなってしまいますが(笑)」

クリームソーダには、記憶と風景を閉じ込められる。「旅する喫茶」SNSで人気のクリームソーダ職人tsunekawaさんインタビュー

「24時間をデザインする、という点では、今準備中のうきは店(福岡県うきは市)のコンセプトが“泊まれる喫茶”なので、まさに実現途中。土蔵造りの商家跡を改装してオープンします。うきは市は、フルーツをはじめとした食材の種類がとんでもなく豊富な町。今後、高円寺店との食の拠点にもなるかなと思っています」と、ワクワクした様子で語るtsunekawaさん。

旅の拠点が東京から九州へと結びつき、旅する喫茶の活動もますます広がっていくにちがいありません。

クリームソーダには、記憶と風景を閉じ込められる。「旅する喫茶」SNSで人気のクリームソーダ職人tsunekawaさんインタビュー

しかしこの取材後、九州の大豪雨により、『旅する喫茶』うきは店は7月下旬のオープン予定を延期することを発表。スタッフや近隣の皆さんは無事だったようですが、サウナ空間をはじめとした1階部分が浸水してしまい、現在復旧中なのだそう。今はただ、今後同じ被害が出ないように祈るばかりです。

取材を通し、柔らかな受けごたえと、繊細で美しい言葉選びが印象的だったtsunekawaさん。「時間」や「体験」を活動の根本に置いている彼だからこそ、クリームソーダや喫茶店の枠を飛び越えて、新しいものを生み出せるのだと感じました。今後も「旅する喫茶」の活動に、ぜひご注目ください。

About Shop
旅する喫茶
東京都杉並区高円寺南4丁目25−13 保谷ビル 2階 第二
営業時間:12:00~20:00(夜喫茶営業日のみ24:00まで)
定休日:月曜
@tabisurukissa