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【連載】郷土菓子研究社・林周作の“世界のお菓子を巡る旅”vol.03| 北欧スウェーデンのコーヒーブレイク“フィーカ”に欠かせないケーキ「プリンセストルタ」

【連載】郷土菓子研究社・林周作の“世界のお菓子を巡る旅”vol.03|北欧スウェーデンのコーヒーブレイク“フィーカ”に欠かせないケーキ「プリンセストルタ」

【連載】郷土菓子研究社・林周作の“世界のお菓子を巡る旅”vol.03|北欧スウェーデンのコーヒーブレイク“フィーカ”に欠かせないケーキ「プリンセストルタ」

世界は、私たちの知らないお菓子で溢れている。

この連載では、世界を旅するパティシエ「郷土菓子研究社」の林周作さんをナビゲーターにむかえ、その土地の環境や文化から生まれた不思議で美味しいお菓子を紹介します。

第3回は、広大な自然が広がる北欧・スウェーデンから。食の面では多くの国から影響を受けた文化と、南北に延びる広大な土地の恵みによって生まれた多彩な料理が豊富。

そんなスウェーデンの郷土菓子から、見た目にも鮮やかな定番菓子「プリンセストルタ」を紹介。スウェーデンの風景を彷彿とさせる緑色のマジパンで覆われた中には、スポンジとクリームが。かわいらしいストーリーを持つお菓子です。

【前回の記事はこちら】
【連載】郷土菓子研究社・林周作の“世界のお菓子を巡る旅”vol.02|神様ガネーシャが大好きなインドの定番。あの和菓子にも似ている「ベサンラドゥ」

スウェーデン人にとってかかせないお茶文化“フィーカ”

http://www.ufu-sweets.jp/cafe/20230901traditionalsweetsintheworld/
林さんが実際にスウェーデンで堪能したフィーカ

北部に位置するスウェーデン。冬は寒さが厳しいものの、夏は比較的暖かく過ごしやすい気候。1日を通して太陽が沈まない白夜など、大自然の営みを肌で感じられる国です。晴天が貴重なため、晴れた日にはみんな外に出てお茶をするのが定番なんだとか。

知人や友人とのお喋りが大好きなスウェーデン人にとって欠かせない文化が“fika(フィーカ)”。甘いものとコーヒーと共に過ごす短い休憩のことで、スウェーデン語の“kaffi(コーヒー)”のkaとffiをひっくり返して生まれた言葉なんだとか。

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1日1度はフィーカの時間を作り、日常会話を楽しむのがスウェーデン人のスタイル。深く苦みのあるコーヒーに合わせるのはKaffebröd(カフェブロード)と呼ばれる、クリームたっぷりのケーキやクッキー、菓子パンなど。今回紹介する「プリンセストルタ」はもちろん、「ナポレオンパイ」や「ビスキュイ」、「カネルブッレ」もスウェーデンで定番のカフェブロードです。

カネルブッレ:生地にカルダモンを混ぜたシナモンロールのこと

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スウェーデンの雑貨屋さんで出会ったアヒルの置物

かわいいストーリーを持つ「プリンセストルタ」

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お菓子とコーヒーが身近にあるスウェーデンで、どこの菓子屋に行っても必ずあるのが「プリンセストルタ」なんだとか。なんだか可愛らしい名前のケーキ。ホールでショーケースに置かれた姿は、お姫様が着る色鮮やかなドレスのよう。

誕生の歴史は1920年代まで遡ります。当時、ストックホルムで家政学の教鞭をとっていたイェニー・オーケルストレムが、「Prinsessornas kokbok(王女のレシピ本)」にケーキのレシピを掲載。教え子であったスウェーデン王室の3人の娘にこのケーキを振舞ったところ大変気に入り、“王女のケーキ”を意味する「プリンセストルタ」と呼ばれるようになりました。

【連載】郷土菓子研究社・林周作の“世界のお菓子を巡る旅”vol.03| 北欧スウェーデンのコーヒーブレイク“フィーカ”に欠かせないケーキ「プリンセストルタ」
楕円形のプリンセストルタ。本場ではお店によって色や形もさまざま

林さん「『プリンセストルタ』は誕生日やお祝い事には欠かせないお菓子。家庭で作ることも多い身近なケーキです。日本ではなかなか見られないビビットな色ですが、ドイツやハンガリーではよく見受けられます。

一番オーセンティックなのがグリーン。季節やイベントに合わせてピンクや黄色にすることも。ハロウィン時期はちょっと毒々しい紫なんて色もあり、まるで衣替えのようですね」

ドレスの中は豪華な8層!クリーム、スポンジ、ベリーソースを鮮やかな色のマジパンで包んで

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基本はスポンジに生クリームとカスタードクリーム、甘酸っぱいベリーソースを重ねた生菓子。「プリンセストルタ」の最大の特徴が着色したマジパンで全体を覆うところで、カットした断面との色の対比が美しいケーキです。

林さん「北国は乳製品をふんだんに使ったお菓子が多いです。僕の作る『プリンセストルタ』は生クリームとしっかり炊いたカスタードクリームをたっぷり使用。スポンジ、ラズベリーソース、生クリーム、カスタードクリーム、スポンジ、ラズベリーソース、生クリームと層を作り全体を馴染ませます。

【連載】郷土菓子研究社・林周作の“世界のお菓子を巡る旅”vol.03| 北欧スウェーデンのコーヒーブレイク“フィーカ”に欠かせないケーキ「プリンセストルタ」

最後に着色したマジパンで全体を覆うのですが、濃すぎると食欲を削ぐ色見となってしまうので注意が必要です。それから、マジパンはしわが目立ちやすいので、ボトムをしっかりと入れ込んでいます。『プリンセストルタ』の名にふさわしい、滑らかで上品な見た目になるよう心がけています」

思わずコーヒーに手が伸びる!クリーミーでどこか懐かしい味わい

【連載】郷土菓子研究社・林周作の“世界のお菓子を巡る旅”vol.03|北欧スウェーデンのコーヒーブレイク“フィーカ”に欠かせないケーキ「プリンセストルタ」

「プリンセストルタ」を食べてみると、甘さ控えめながらとってもクリーミー。ラズベリーソースの繊細でほのかな酸味がアクセントです。見た目は海外のケーキですが、マジパンの食感と風味、クリームのストレートな味わいは、私たち日本人にとっても町のケーキ屋さんを思わせる素朴な魅力が。全体の7割がクリームのためか、コーヒーが欲しくなる後味です。

林さん「スウェーデンのカフェでは、コーヒーを頼むとドリンクバーのように何杯でも飲むことができる店が多いです。マグカップにたっぷり注いだコーヒーとお菓子の組み合わせは、彼らのソウルフードと言っても過言ではないかもしれませんね」

ナビゲーターはバックパックで世界中のお菓子を巡る菓子職人、林周作さん

【連載】郷土菓子研究社・林周作の“世界のお菓子を巡る旅”vol.03| 北欧スウェーデンのコーヒーブレイク“フィーカ”に欠かせないケーキ「プリンセストルタ」

現在世田谷区・三軒茶屋にある『JOURNEY(ジャーニー)』のオーナーシェフを勤める林さん。日本では珍しい世界各国の郷土菓子を専門に、新しい美味しさを発見できるお菓子を作っています。“誰も知らないお菓子を作りたい”と世界中をバックパックで巡り、出会った人と郷土菓子の数々。林さんはその旅の記録をお菓子で表現しています。

NEXT SWEETS | まるで童話の世界のような街並み。1000を超える島から成る国クロアチアの「クレムシュニッタ」

【連載】郷土菓子研究社・林周作の“世界のお菓子を巡る旅”vol.03| 北欧スウェーデンのコーヒーブレイク“フィーカ”に欠かせないケーキ「プリンセストルタ」

スウェーデンの旅では、知人に連れられ様々な場所を案内してもらったという林さん。中でもお気に入りだったのが最南のスコーネ地方・マルメにある『Hollandia』というお店。ショーケースにずらりと並ぶカフェブロードの数々。どれをとっても文句なしの味わいで、人生でもう一度行きたいお店のひとつなんだとか。

次回は、アドリア海を挟んでイタリアの対岸に位置する国、クロアチア。多彩な博物館や美術館、童話の世界のような美しい街並みが有名な共和国です。そんなクロアチアの広い地域で食されている「クレムシュニッタ」を紹介します。パリッとしたパイ生地に、ぷるるんと揺れる特製のカスタードクリーム。一度たべると忘れられないお菓子です。

ナビゲーター/「郷土菓子研究社」林周作
カメラマン/中里楓(一部起用)

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園果わたげさん

園果わたげ

ウフ。編集スタッフ

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ufu.の新米編集者。メンズカルチャー誌でアシスタントを経験後ufu.に転身。 特技は甘いものを食べ続けること。最近は美術館内レストランの限定コラボスイーツにハマっている。