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【新連載】郷土菓子研究社・林周作の“世界のお菓子を巡る旅”vol.01|中東アゼルバイジャンのザクザク、甘さの中にスパイス香る「シェチェルブラ」

【新連載】郷土菓子研究社・林周作の“世界のお菓子を巡る旅”vol.01|中東アゼルバイジャンのザクザク、甘さの中にスパイス香る「シェチェルブラ」

【新連載】郷土菓子研究社・林周作の“世界のお菓子を巡る旅”vol.01|中東アゼルバイジャンのザクザク、甘さの中にスパイス香る「シェチェルブラ」

世界はまだ、私たちの知らないお菓子で溢れている。

新連載「郷土菓子研究社・林周作の“世界のお菓子を巡る旅”」では、世界を旅するパティシエ「郷土菓子研究社」の林周作さんをナビゲーターにむかえ、その土地の環境や文化から生まれた不思議で面白いお菓子を紹介します。

第一回となる今回は、中東アゼルバイジャンの「シェチェルブラ」を紹介。まるで餃子のような形と、珍しい幾何学模様。異国感あるスパイスがほのかに香るアゼルバイジャンの定番郷土菓子です。

ナビゲーターはバックパックで世界中のお菓子を巡る菓子職人、林周作さん

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現在世田谷区・三軒茶屋にある『JOURNEY(ジャーニー)』のオーナーシェフを勤める林さん。日本では珍しい世界各国の郷土菓子を専門にしています。

林さんは元々、専門学校で料理を学びイタリア料理店に就職。ところが、新卒入社後すぐにやめてフリーに。“さて、次は何をしようか”と考えていたところ、当時日本では珍しいドルチェ、カッサータやカンノーリを知り、興味を持ったんだとか。

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その時、“誰も知らないお菓子を作りたい”と直感的に思い、数日後にはバックパックでヨーロッパを巡る旅へ。帰国後はさらに、ヨーロッパから中東、アジアを巡る自転車の旅を実行。日本人が知らないお菓子を探し、旅先では様々な発見や出会いがあったそう。

「郷土菓子の魅力は現地の文化や環境、歴史が密接に関係しているところ。発祥の地で食べるから感じられる気付きや美味しさがあります」と語る林さん。

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『JOURNEY(ジャーニー)』では、現地のレシピを元に、旅先で食べた時の印象を重視して世界の郷土菓子を作っているのだとか。スパイスの組み合わせや食感など、新しい美味しさを発見できるお菓子が並びます。

中東の風を感じる「シェチェルブラ」。ザクザク・ジャリジャリ食感とカルダモンの香りがクセになる

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まるで餃子のような半月型の「シェチェルブラ」。外側の生地はサクサクとしたクッキー。中にはじゃりっとしたお砂糖やナッツ、カルダモンなどのスパイスで作ったフィリングがぎゅっと詰まっていて、溢れるほど。

ひと口食べると、カルダモンやスパイスからなる異国情緒ある香りがふわり。どこかカルメ焼きにも似た甘く香ばしい味わいと、ザクザク・ジャリジャリ食感が楽しいお菓子です。

一度ハマるとクセになる「シェチェルブラ」。手のひらサイズなので、甘いもの好きなら2~3個ペロリとたいらげられます。

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「シェチェルブラ」専用ピンセットでひとつずつ描く幾何学模様

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「シェチェルブラ」の特徴はなんといっても、その形と模様。これは、アゼルバイジャンのある立地や環境が影響しているんだとか。

林さん「アゼルバイジャンは、トルコやイランと隣接する国です。そのため宗教や文化など、さまざまな影響を受けています。

アゼルバイジャンのある中東の多くがイスラム教で、偶像崇拝が禁止されてきました。そのためモスクなどの神聖なる場所には、神の代わりに幾何学模様が描かれています。

祝祭にも使用される『シェチェルブラ』にもまた、幾何学模様が欠かせません。

また、『シェチェルブラ』が甘いのにも理由があるんですよ。アゼルバイジャンは昔、シルクロードが通っており貿易国として栄えていました。貴族や権威ある人が、自分の権力を示すために、高価な砂糖を好んで沢山使っていた。そんな歴史的背景が、お菓子に影響しているという説もあります」

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「シェチェルブラ」の模様は専用のピンセットでひとつずつ丁寧に仕上げていきます。林さんが使用しているのは実際に現地の市場で購入したもの。薄い生地を剥がさないように、力加減を抑えながら次々と模様を作る林さん。その姿は、まるでアゼルバイジャンのシェチェルブラの職人のようです。

濃厚なお茶と一緒に親しまれる。アゼルバイジャン流「シェチェルブラ」の食べ方

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現地ではどのように「シェチェルブラ」が親しまれているのでしょうか。

林さん「市場に行けば絶対に見かけるお菓子で、子供から大人まで誰からも親しまれています。特に、トルコ式の濃いお茶を一日に何杯も飲むアゼルバイジャンの人々にとっては、お茶菓子のような存在のようです。

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特に、3月下旬ごろに行われるアゼルバイジャンの祭り“Novruz(ノウルーズ)”には欠かせない菓子。このお祭りは豊作の祝祭として知られ、街は華やかに装飾されます。「シェチェルブラ」は古くから、生活に欠かせないお菓子だったんですね」

NEXT SWEETS |象頭の神様を祀る国、インドの「ベサンラドゥ」

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日本から飛行機で11時間以上かかるアゼルバイジャン。読者の中には初めてアゼルバイジャンを知ったと言う人も多いのでは?

お菓子から、国や文化を知ることが出来るのも郷土菓子の面白いところです。

そして次回は、人口の多さとガンジス川で知られる国、インドが舞台。象の神様ガネーシャの大好物だというお菓子「ベサンラドゥ」を紹介します。

ナビゲーター・監修/「郷土菓子研究社」林周作
写真/中里楓

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園果わたげさん

園果わたげ

ウフ。編集スタッフ

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ufu.の新米編集者。メンズカルチャー誌でアシスタントを経験後ufu.に転身。 特技は甘いものを食べ続けること。最近は美術館内レストランの限定コラボスイーツにハマっている。