夏といえばかき氷。皆さんはかき氷の聖地はどこか、ご存知ですか?
答えは奈良。そう、かき氷の聖地は奈良と言われているんです。そんな奈良県で今回訪れたのは、素麺の聖地・三輪。日本最古の神社「大神神社」の近くにある「てのべたかだや」です。
……スイーツメディアでそうめん屋さん? と思いますよね。このお店、実はかき氷も本気なんです。早速紹介します。
奈良・三輪といえば、言わずと知れた“そうめん発祥の地”。その地で約100年にわたり素麺づくりを続けてきた「マル勝髙田商店」が、2020年に立ち上げたブランドショップ。「素麺を若い世代にも届けたい」という思いから、“そうめんのある新しい食卓”を提案しています。
「ここがそうめん屋さん!?」と、思わず声が出そうになるモダンな建物が、奈良・桜井市に突如現れます。白い暖簾に描かれているのは、箸で持ち上げられた一筋の素麺。まさに、店のコンセプトそのものを象徴するロゴマークです。
木組みを大胆に取り入れた内観は、どこか寺社建築のような凛とした空気感がありつつも、自然光がたっぷり差し込む開放感のある空間。まるでギャラリーのような佇まいで、店内にはずらりと個性豊かなパッケージの素麺が並びます。
中心のディスプレイには「さらり」「つるり」など、直感的なネーミングの素麺が季節感たっぷりに並び、パステルカラーのラインナップは思わず写真を撮りたくなる可愛さ。手土産やギフトにもぴったりな“大人かわいい”デザインです。
これは完全に今の感性。実際、20〜30代の女性客を中心に「センスの良い夏の贈り物」として人気が高まっているそうです。
その販売所の奥にあるのが、素麺の新しい可能性をカタチにするカフェ「sumen」。選べる麺の細さや茹で加減、トッピングなど、まるで“素麺のセミオーダー”とでも言いたくなるカスタム式。古いけど新しい、和だけどちょっとモダン。そんな空気感がここにはあります。
一見するとデザイン性の高いライフスタイルショップのようですが、土台には100年続く技と誇りがしっかりと息づいています。「てのべたかだや」は、素麺の未来をつくる“食の文化拠点”なのかもしれません。
今回のお目当ては、そんな素麺屋さんが生み出す「かき氷」。でも、侮ることなかれ。てのべたかだやのかき氷は、素材・技術・発想のすべてが本気なんです。まさに“和のスイーツ最前線”ともいえる一皿が揃っています。
氷は、奈良市で唯一の製氷業者・日の出製氷の純氷を使用。そこに合わせるのは、自家製シロップと特製ミルクエスプーマ。ふわふわなのにしっかり存在感のある氷に、優しい甘さのエスプーマがとろけて…食べる前から「おいしい」が確定しているやつです。
中でも注目は、今年初登場の「古都華」かき氷です。奈良が誇るブランド苺・古都華を贅沢に使い、このメニューのためだけに扇田農園と契約したのだとか。減農薬で育てた果実をたっぷりと使った自家製シロップは、鮮やかな赤が映えるうえに香りも最高。
さらに驚くのが、添えられたバジルの香りを移したエキストラバージンオイル。スイーツにオイル!?と構えてしまうけれど、いちごの甘酸っぱさにバジルの清涼感と香りが加わることで、なんともいえない爽快感が生まれます。
中にはクリームも入っていて、満足感は高め。でも全然もたれない。不思議なバランスの完成度に拍手。
一方、和の魅力をぎゅっと詰め込んだのが「大和金時」です。奈良産の大和茶シロップに、酒蔵・みむろ杉の甘酒、さらに香ばしいヘーゼルナッツというどこまでも香ばしい組み合わせ。トッピングには老舗・西善のあずきと自家製白玉を添え、まさに“THE 奈良”な一杯に仕上がっています。
そのほかにも「大和抹茶」や「和栗三昧」など、常時4種類がラインアップ。どれもシロップはどっしり濃厚系なのに、氷が絶妙で“ふわガリ”の中間くらいの絶妙な削り具合。ふわふわすぎてすぐに溶けるわけでもなく、ガリガリすぎてキーンとすることもなく、ちゃんと「かき氷を食べてる!」感があります。さらにこの氷、高さもあってボリュームもすごいんです…!
駅から少し距離はあるけれど、駐車場が広めなのもありがたいポイント。素麺を食べに行ったはずが、気づけばかき氷に夢中になっている。もしくは、かき氷を食べに行ったら素麺のイメージがガラリと変わる――そんな夏の寄り道も、たまにはいいかもしれません。
そうめん屋さんだと思って訪れた「てのべたかだや」でしたが、気づけばかき氷で驚き、素麺で価値観が変わり、最後には「ここ、なんかすごいな」と思わされていました。
創業からまもなく100年。伝統に甘んじることなく、時代に合った発信を丁寧に積み重ねている――そんな印象を強く受けたのは、若いスタッフが活躍している姿にも理由があります。なんと店長は24歳、副店長は23歳(写真右)。ヘアメイクやファッションも今っぽくて、お店の雰囲気ごと「老舗のイメージ」を軽やかに塗り替えてくれる存在でした。
さらに奥にはピカピカのオフィスがあり、若手人材の採用も順調に進んでいるとのこと。
新しい挑戦の真っ只中にある「てのべたかだや」は四季折々の味とともに、これからの進化もずっと追いかけてみたくなるお店でした。
「そうめんって、こんなに自由だったっけ?」と感じたのは、きっと私だけじゃないはず。今後は都市部へのブランド展開も視野に入れているとのことで、個人的にはその日が待ち遠しい……!“三輪の神糸”の魅力は、もっと多くの人に届くはずです。
About Shop
てのべたかだや
奈良県桜井市芝374-1
営業時間:9:00~17:00
定休日:水曜日
Instagram:@t_takadaya
あかざしょうこ
ウフ。編集スタッフ
関西方面のスイーツ担当。1984年生まれ、大阪育ちのコピーライター。二児の母。焼き菓子全般が好き。特に粉糖を使ったお菓子が好きです。
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