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「花を食べる」飾りだけで終わらない“新しい食文化”の誕生「エディブルガーデン」が目指す“食の新概念”とは?

「花を食べる」飾りだけで終わらない“新しい食文化”の誕生「エディブルガーデン」が目指す“食の新概念”とは?

最近、飲食店でよく見かけるようになった食べられるお花「エディブルフラワー」をご存じでしょうか? パティスリーやレストランだけではなく、若者に人気のカフェでも使用されるようになりました。

「エディブルフラワー」は、英語で「Edible(=食べられる)Flower(=お花)」。野生の花ではなく、食用として育てられた花を指します。自然が生み出した鮮やかな色合い、またその様々な大きさや形はスイーツをより一層かわいく表現してくれます。

今回はそんなエディブルフラワーの持つ魅力を世に広めようと、奮闘する「エディブルガーデン」。代表を務める小澤亮さんにお話を聞きました。

「エディブルガーデン」とは? 

「花を食べる」飾りだけで終わらない“新しい食文化”の誕生「エディブルガーデン」が目指す“食の新概念”とは?

今回お話を伺った「エディブルガーデン」は、農薬不使用で栽培されたサスティナブルなエディブルフラワー専門店。現在取り扱っている食用バラは50品種、バラ以外のエディブルフラワーは17品種と加工品は数えきれないほどのラインナップをほこります。

その品質の高さから、高級ホテルやミシュランガイド星付きレストランでも愛用されるエディブルフラワー(生食用バラ・生食用花・ドライ)を、80種類以上取り扱っていて、今の日本のスイーツ界でも欠かせない存在に。

そんな代表の小澤亮さんは「エディブルフラワー研究所」という“お花とスイーツの実験室”のようなブランドも立ち上げて、世の中に食用花の魅力を広げる活動をしています。またデパートの催事での出店はもちろん、たくさんの有名シェフたちとのコラボレーションによる魅力あふれる商品展開、そして圧倒的なクリエイティブによるSNSでのプロモーションなど、熱意溢れる活動の秘密とは?

なぜエディブルフラワーに着目したのか? 未知なる食材が与えたインパクト

「花を食べる」飾りだけで終わらない“新しい食文化”の誕生「エディブルガーデン」が目指す“食の新概念”とは?

Q.現在エディブルフラワー研究所として、奮闘している小澤さん。なぜエディブルフラワーに着目し、ここまで世に広めようとしたのでしょうか?

小澤さん「未知なる食材、食用花の魅力に気づいたのは『薔薇』です。特にそのきっかけとなった原体験は、『Mr. CHEESECAKE』田村浩二くんがつくった『薔薇のアイスクリーム』を食べたことでした。香りが素晴らしい自然栽培の食用バラを使ったものなのですが、その食体験があまりにも衝撃的だったんです。それは“花のおいしさ”を確信すると同時に、僕の人生が変わった瞬間でした。

田村くんの言葉を借りて解説しますね。この薔薇のアイスクリームでは、3段階の香りを感じることができました。それは、アイスクリームとコンフィチュール(ジャム)からただよう香りと、バラの香りのカプセルが口の中で弾けたときの香り。そして体温で温められたバラが、カラダに巡っていくときの香り。もう、食べてからは口の中がずっと『薔薇』なんです。

“花には飾りにとどまらない可能性がある”

このときの衝撃は、僕の人生の記憶に深く刻まれています。ベスト3ぐらいの食体験でした。花は食材として、毎回発見があるほどポテンシャルがあるもの。いまだに追求しきれない新しいカルチャーづくりをしたいと、一気に火がついたんです。」

花もフルーツと同じ、生産者を応援したい想いから

「花を食べる」飾りだけで終わらない“新しい食文化”の誕生「エディブルガーデン」が目指す“食の新概念”とは?

Q.そもそもエディブルフラワーに着目し、今までのキャリアから異業種でもあるこの分野に踏み込まれた理由を教えてください。

小澤さん「SNS上では『食べられる花屋』を名乗っていますが、農畜水産の生産者を応援するための会社を経営しています。ミッションは“品質に信念を持つ生産者を応援すること”。生産者のブランディングや販路開拓に取り組んでいます。

例えば、伝統食の『干物』『お餅』などの仕事や、食品の品質を数値で証明する『成分分析』や生産者が捨ててしまう『食材のアップサイクル』等にも取り組んでいました。その中の数ある事業のひとつが、エディブルフラワーの事業。

実際に農家さんの現場に会いに行っては写真を撮り、webサイト作ってプレゼントして次、そしてまた次の日々の中での出会いでした。」

美味しい花体験が増えるために“生産者と作り手を結ぶ”

「花を食べる」飾りだけで終わらない“新しい食文化”の誕生「エディブルガーデン」が目指す“食の新概念”とは?

Q.実際に現在、小澤さんが掲げているミッションはどんなことでしょうか?

小澤「まず、エディブルフラワーを食べるときによけてしまう人が今でも凄く多いです。また花を食べて美味しさのあまり感動したことがある人も少ないと思っています。

むしろ“美味しくないもの”だと思っている人が多いかもしれません。そこで、僕が掲げるミッションは“おいしい花体験を増やす”ことです。

飾りとしての役割も大切ですが、飾りにとどまらないポテンシャルが花にはあるんです。もっと食材としての可能性を拡張していくようなチャレンジをしていきたい。そのためには、不可欠なのは生産者と作り手であるシェフたちの協力です。

「花を食べる」飾りだけで終わらない“新しい食文化”の誕生「エディブルガーデン」が目指す“食の新概念”とは?

流通量が非常に少ない食べて美味しい食用花を増やしながら、それを面白がり使いさらに美味しいものを仕立て上げてくれるシェフも増やしていく必要があります。そこで、僕のミッションは大きく分けて3つ。

01.香りがあったり、味わいがおいしい花品種の栽培を監修すること

02.それを使いこなせるシェフとコラボレーションをすること

03.未体験で感動する食体験を世の中に発表すること

これを繰り返すことで、シェフの知見も高まり、生産者へもフィードバックすることができるようになります。このように、おいしい花の食体験を積み重ねることが大事だと考えています。それを繰り返して浸透させていくことで、飾りにとどまらない、驚きと感動のある“花を食べる体験”をカルチャーにしていきたいですね。」

まだまだ課題が山積みの「美味しい花」

「花を食べる」飾りだけで終わらない“新しい食文化”の誕生「エディブルガーデン」が目指す“食の新概念”とは?

Q.現在、小澤さんが感じている食べられるお花の農園の課題感、解決したいことはどのようなことでしょうか?

小澤さん「まだまだ課題だらけです。下記3点があげられます。

01.香りや味わいが良い「おいしい花」を栽培する生産者が少ないこと

02.食材として「おいしい花」を使いこなす方法がシェフに知られていないこと

03.その結果、花をおいしく食べられる体験の数が少ないこと

一番の課題は、美味しい花体験に必要な『美味しい花』が、ほとんど流通していないことです。流通していなければ、そもそも文化は広がりませんよね。

香りがあったり、味わいが良い、うまみや酸味があって食べて美味しい花はごく一部の片手で数えられるくらいの生産者のみがチャレンジしています。それらは栽培が難しいことから存在が希少です。逆に広く流通しているのは、栽培がしやすい花。味は苦みが強く、甘み、酸味、香りを感じづらいため“やはり花は美味しくない”そう思われても仕方ないものが多いのが現状です。

「花を食べる」飾りだけで終わらない“新しい食文化”の誕生「エディブルガーデン」が目指す“食の新概念”とは?

だから、『飾り』だけで終わってしまう。しかし、薔薇のアイスクリームを知ってしまった僕は、花にもう一つの役割を求めたいんです。それは、料理をおいしくする『機能』です。機能は、ちょうど装飾の対義語にあたる言葉です。

食べられる花屋としては、料理をおいしくする花の数とその使い手の数を増やすことにもチャレンジしていきたいです。美味しい花の流通量が本当に少ない。そこを解決できたら、驚きと感動ができる体験が双発できるようになる、そこを目指したいと思っています。」

小澤さんが目指すエディブルフラワーのネクストステージとは

Q.また今後の目標を教えてください。

小澤さん「『想像すらできない未体験』『未知の驚きと感動がある食材』それが花のポテンシャルです。美味しい花体験に目覚める方を増やしていきたいですね。そのために、大きく2つの目標を持っています。

まず1つ目は、トップシェフにとって“なくてはならない食材”にすることです。すでにご使用くださっている『資生堂 FARO』(銀座)の加藤峰子さんの「花のタルト」や虎ノ門にある『memento mori』の南雲 主于三さんの『薔薇のカクテル』は、世界トップレベルの食体験だと思います。

2017年から食べられる花屋『エディブルガーデン』をスタートして5年が経ち、今では品質をご評価いただいてミシュラン3つ星、2つ星、1つ星のレストランや世界で評価されるパティシエ・バーテンダー・ショコラティエからもご発注いただいています。

世界一のレストランであるデンマーク・コペンハーゲン『Noma』からも食用バラをご発注いただくことができました。これは日本のエディブルフラワーの歴史上、とても意味を持つことだと思います。

続いて2つ目は、できるだけ多くの方々においしい花の魅力を知っていただくこと。そのために、価格帯の安いおいしい花の栽培を増やして、体験のハードルを下げていきます。その一環として、リリースしたバラのシュークリームは、行列ができるほど人気になってくれました。

これらのように、世の中をおいしい花体験で満たしていくことで、花が主役の食文化をつくっていくこと。それがGOALです。

今のエディブルフラワーはあくまでも『食べられる花』。しかしながら、エディブルの『able』がとれたときに、それは叶っていると思います。」

次回、小澤さんが挑戦する福祉施設における「食用薔薇」工場の挑戦をお届けしていきます。

クリーム太郎

クリーム太朗

ウフ。編集長

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編集責任者。ショートケーキ研究家として、日本全国のケーキを食べ比べる。自身でも、ケーキやチョコレートの製造・販売を目指すべく、知識だけではなく実技も鍛錬中