
明治40年(1907年)の創業以来、京都最古の洋菓子店として、また「1年待ちのクッキー缶」として全国にその名を轟かせてきた「京都村上開新堂」。その118年もの歴史が息づくレトロな建物のすぐ隣に、2026年6月5日、関西のスイーツ界を揺るがす新たなお店が誕生しました。
新ブランド「Maison de Murakami (メゾン ド ムラカミ)」です。
西洋菓子のレジェンドとも言える「京都村上開新堂」がなぜ今、新ブランドに挑むのか。4代目・村上彰一氏の熱い想いと、開店1時間前から行列を作る最旬スイーツをチェックしてきました!

お店があるのは、京都らしい老舗や洗練されたギャラリーが品よく軒を連ねる、風情豊かな「寺町通(てらまちどおり)」。周辺はどこを切り取っても古風で落ち着いた情緒が漂い、ただ歩いているだけでも見どころ満載なエリアです。
最寄り駅は、地下鉄東西線「京都市役所前駅」から北へ歩いて4分ほど。ですが、お天気のいい日なら「烏丸御池駅」から御所南の美しい街並みをのんびり眺めながら、お散歩がてら歩くのもおすすめです。

そんな寺町エリアに佇むのが「京都村上開新堂」そして「Maison de Murakami (メゾン ド ムラカミ)」です。
おもしろいのは、黒を基調とした木材の温かみがあるレトロなお店と、天然石の白がモダンな新店が隣同士で、また店内ではひとつに繋がっていること。外から眺めると、約100年もの時間を隔てた建物が美しく横並びになっており、まるでタイムスリップをしたような不思議な感覚に包まれます。

「明治創業の洋菓子店が、現代にお菓子屋を作ったら——」そんな発想から生まれた「Maison de Murakami」。京都村上開新堂の工房として使われていた場所を改装した店内は、明るい白を基調とした、シンプルで現代的な清潔感にあふれています。

現在、代表を務めるのは4代目の村上彰一さん。このタイミングで新ブランドを立ち上げた経緯を伺うと、老舗の伝統を背負うトップならではの、熱くクリエイティブな舞台裏を明かしてくれました。

「118年の歴史のなかで、味と製法を守り続けることは素晴らしいことであり、古くからのお客様もそれを望んでいます。ただ、『守る=変えない』という世界の中で、今の作り手たちが新しいお菓子を自分たちの手で生み出したいという欲求を持つのも自然なこと。ならば、今まではできなかった『変えていく』という新しい価値観に挑戦できる場所を作りたかったんです」

もちろん、何でもかんでも手当たり次第に変えるわけではありません。「シンプルに美味しいお菓子を」という、お菓子屋さんとしての矜持や理念という揺るぎない軸はそのままに、お客様の声を聞きながら、今の時代に響くラインアップをブラッシュアップさせていくのだと言います。
そんな新時代のチャレンジから生まれたお菓子たちは、どれもため息が出るほど魅力的です。

まず注目すべきは、本店の伝統的な一缶とは異なる、色鮮やかで心踊るクッキー缶「メゾン・ド・ビスキュイ・プティ」。中にはサブレやメレンゲ、クラッカーなどがぎっしりと詰め込まれており、一つひとつ異なる食感やみずみずしい味わいを楽しめます。

こちらは現状1日50缶の限定販売となっており、開店1時間前から行列ができるほど。しばらくは入手困難な幻の銘菓になりそうです。

さらに、朝一番に焼き上げられているという「窯出しカヌレ」や「窯出しフィナンシェ」の贅沢な香りに思わず笑みがこぼれます。
そして、4代目の村上さんが「今、一番お客様におすすめしたい」と格別の自信を覗かせるのが、こちらのバターサンド「メゾン・デュ・ブール」です。

100年以上の歴史の中で培われてきた、京都村上開新堂の代名詞とも言えるクッキー製造の技術とノウハウ。そのすべてを惜しみなく注ぎ込み、この商品のためだけに新しいサブレ生地をゼロから開発したという、老舗の歴史から見ればまさに“大改革”とも言える渾身作。

濃厚なバタークリームと合わせたときに、お口の中で同時にハラリと解ける絶妙な口どけ、サクッとした心地いい食感、そして芳醇なバター感のバランスが緻密に計算し尽くされています。4代目が「これぞ」と胸を張るのにも深く納得してしまう、伝統と革新が美しく融合したお菓子です。

他に、ブルーチーズとカマンベールの2種類が並ぶ「チーズタルト」も。国産クリームチーズをベースに、デンマーク産のブルーチーズがはっきりと、かつ上品に香るタルトは、一度食べたら忘れられない美味しさです。

実はこのタルト、本店でクオリティを最優先するためにこれまで廃棄していたクッキー生地の「三番生地」を再利用して作られているのだそう。「捨てていたものを活かして、新しい美味しいお菓子を作る」というアプローチは、今の時代らしい価値観です。
100年以上の歴史を紡いできた「京都村上開新堂」。その長い時間の中で、人々から愛され、守り続けられてきた「変わらない味」の背景には、実は途方もない職人たちの努力が隠されているのだろうと、想像を巡らせてしまいました。
100年前と今とでは、手に入る素材の性質も、京都の夏の暑さや工房の湿度といった周辺環境も、明らかに異なるはずです。時代や環境がどれほど変わろうとも、常に「あの確立された100年前の美味しさ」を寸分狂わず再現し続ける——。そのためには、職人たちが日々、目に見えないほどの緻密な創意工夫と微調整を重ねていなければ、その伝統は決して守れなかったに違いありません。
歴史の裏側にある丁寧な手仕事に思いを馳せ、深いリスペクトの念を抱かずにはいられませんでした。
伝統の味を頑なに守り抜く本店の美学。そして、働く人や時代、環境の変化に応じて、柔軟に新しいお菓子の未来を切り拓こうとする「Maison de Murakami」の挑戦。その歴史的なスタートを立ち会うため、ぜひ訪れてみてください。
About Shop
Maison de Murakami
京都府京都市中京区常盤木町61
営業時間:12:00~17:00
定休日:日曜日、祝日、第三月曜日
Instagram:@maison_de_murakami

あかざしょうこ
ウフ。編集スタッフ
関西方面のスイーツ担当。1984年生まれ、大阪育ちのコピーライター。二児の母。焼き菓子全般が好き。特に粉糖を使ったお菓子が好きです。
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