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“ufu.と考えるSDGs”人気チーズケーキブランドが挑戦する酪農とお菓子の未来を救う循環モデル「ユートピアアグリカルチャー」の挑戦

“ufu.と考えるSDGs”人気チーズケーキブランドが挑戦する酪農とお菓子の未来を救う循環モデル「ユートピアアグリカルチャー」の挑戦

今回は、食のミライをテーマにした“ufu.と考えるSDGs”。北海道のお菓子といえば……誰しもが知るお菓子の数々を手掛ける札幌の「洋菓子きのとや」。その「きのとや」とともに北海道コンフェクトグループの傘下であるユートピアアグリカルチャー社の新たな取り組みを今回取材させていただきました。

ユートピアアグリカルチャーといえば、2021年2月から販売している“発明的チーズケーキ”「チーズワンダー」で有名です。そんなユートピアアグリカルチャーことUAが、2022年の10月18日から札幌市内の山の中で「盤渓農場」の運営を開始しました。

“お菓子屋さんが農場!?”とびっくりするかもしれません。農場を経営して、美味しいお菓子の材料を自ら生産するためと想像する方も多いと思いますが、その裏側に隠されたのは数多くの画期的な実験と食のミライを変えていく、さらに広くいえば環境問題と真剣に向き合い解決していく、そんな深いテーマ。

実際に今回はレセプションに参加し、その裏側を取材させていただきました。

札幌近郊の盤渓で、繰り広げる「環境再生型農業」

“ufu.と考えるSDGs”人気チーズケーキブランドが挑戦する酪農とお菓子の未来を救う循環モデル「ユートピアアグリカルチャー」の挑戦

実験の舞台となる盤渓農場。札幌の中心からは車で約30分という程よい距離感。都市近郊でプロジェクトが行われます。

取材当日、会場はあいにくの雨でしたが、UA社の洗練されたデザイン性のある施設がお目見え。モダンな佇まい、本格的な設備に足を運んだ瞬間にその“本気度”を目に見えて感じることができます。

「FOREST REGENERATIVE PROJECT」と呼ばれる今回のプロジェクト。先に述べたような美味しいお菓子を作るためということだけではなく、森林や土壌を再生させながら放牧酪農や養鶏を行うプロジェクトです。「環境再生型農業(リジェネレイティブアグリカルチャー)」と呼ばれ、環境負荷をなるべく低減しながら持続可能な食糧生産を実現する新しい農業のありかたとして、近年注目されています。

“ufu.と考えるSDGs”人気チーズケーキブランドが挑戦する酪農とお菓子の未来を救う循環モデル「ユートピアアグリカルチャー」の挑戦

UA社は22haの森を取得して整備を進め、農業用のパイプハウスを使って鶏舎2棟と牛馬厩舎1棟、研究執務室1棟の計4棟を設置した。4棟の延べ床面積は約1058・4㎡ほどとなるそう。

本プロジェクトは、UA社に加えて北海道大学大学院農学研究院 環境生命地球化学研究室 准教授「内田義崇」氏。そしてソニーグループ株式会社「迫田 元」氏。またこの素晴らしい施設のデザインと設計を手掛けたのがDOMINO ARCHITECTS「大野友資」氏と、そうそうたるメンバーによる大掛かりなプロジェクトです。ここに挙げた皆様も会場には揃い、それぞれプロジェクトへの熱い想いを語ってくださいました。

まずスタートした平飼いの鶏舎が循環を限りなく自然に近い環境での平飼い養鶏

エントランスに設置されたのは、卵の自動販売機。平飼いの鶏舎で生みたての卵は一般販売するほか、菓子材料としてグループ向けに供給されるんだとか。

鶏舎の中は、鶏の生息地であるインドネシアの里山をイメージし、30種類ほどの多様な植物を植えることで限りなく自然に近い環境を作っているそう。面積あたりの羽数も少なくし、ストレスの少ない状態を作り上げています。

鶏の飼料には、菓子製造で出でくるケーキのスポンジ屑、イチゴのヘタとなどの端材を一定程度混ぜ、餌の考え方ひとつとっても、環境に徹底的に配慮しているとわかります。

放牧による森の活性化と再生

“ufu.と考えるSDGs”人気チーズケーキブランドが挑戦する酪農とお菓子の未来を救う循環モデル「ユートピアアグリカルチャー」の挑戦

今回のプロジェクトのメインは馬や牛の林間放牧。盤渓の森では動物が入る場所と入らない場所を分け、それぞれの経年変化の違いを見ていくABテストを行っていくそうです。牛や馬が森に入ることで草木を食べ、踏み、糞尿を撒くことで植物や土壌にどのような変化が起きるか、手を加えない森との比較を行うことで、二酸化炭素の吸収量などを定量的検証を行っていくんだとか。そこにソニーのセンシング技術を通じた農場全体の環境の活性化とその可視化について仮説立案と実証実験を行うようです。

なぜここまで環境への配慮をお菓子屋が考えるのか? それは『チーズワンダー』というブランド、そしてUA社、そして代表をつとめる長沼真太郎さんの熱い想いがあります。

企業の枠を超えた、ユートピアアグリカルチャーの挑戦

そもそも「ユートピアアグリカルチャー」とは? 「GRAZE EXPERIMENTS」をテーマに、美味しいお菓子作りだけではなく、現在世界が抱えている酪農や環境の問題に向き合う農業生産法人です。「チーズワンダー」は即完売する幻のチーズケーキとして有名で、問題を解決しながらも人気のお菓子を作り上げていきます。

特に今回のプロジェクトにおいて、世界的に酪農や牛を悪者にする現状へ問題提起と解決をしていくのが長沼さん。

“牛のげっぷに含まれるメタンガスなど、畜産業が地球温暖化の一因” であると、昨今様々な学会やニュース、我々の知識の中でも、そうした認識が周知の物になりつつあります。

「諸外国では、政府の規制も進み、このまま行くと牛を飼えなくなるんじゃないかというほどの状況。牛が悪者になっていて、酪農家も減る一方です。、あらゆる観点でみても持続可能な放牧なら、本当に価値があるものを作れるだろうという結論に至りました」。と長沼さん。

まだまだ計画は始まったばかり。実験の検証もこれから。どんな成果とどんな新しい未来を作り上げてくださるのか、これからが楽しみです。

About Shop
ユートピアアグリカルチャー
https://www.utopiaagriculture.com/

クリーム太郎

クリーム太朗

ウフ。編集長

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編集責任者。ショートケーキ研究家として、日本全国のケーキを食べ比べる。自身でも、ケーキやチョコレートの製造・販売を目指すべく、知識だけではなく実技も鍛錬中