
取材活動をしていると、よく耳にするのが「コロナをきっかけに」という言葉です。2020年から2023年にかけてのあの3年間。働く価値観が一気に変わったり、「本当にやりたいことって何だろう」とハッと気づかされたり……それまでの“普通”が、普通じゃなくなった時期でもありました。
今回ご紹介する大阪・鴫野(しぎの)の住宅街にあるコーヒースタンド「abotam coffee stand(アボタム コーヒー スタンド)」も、まさにあの時代をきっかけに「自分の本当の理想」へと踏み出したご夫妻のお店です。
完全DIYで作り上げたハイセンスな隠れ家で、バリスタが淹れる渾身のハンドドリップと、愛が募って独学で極めた絶品スイーツ。そんな、新しく生まれた素敵な日常のカタチを覗いてきました。


大阪・京橋駅の南口から歩いて約10分。ディープな繁華街の喧騒を抜け、鴫野(しぎの)の静かな住宅街を進むと、普通の住宅をリノベーションしたお洒落なコーヒースタンド「abotam coffee stand(アボタム コーヒー スタンド)」が現れます。大阪城公園からも近く、ディープなローカル旅を楽しむ観光客の憩いの場にもなっている隠れ家です。

店の奥に進むと、ウッドと無機質な質感がミックスされたセンス抜群の空間が広がりますが、驚くべきはこれが「100%ご夫妻によるDIY」だということ。

なんとご主人が「元電気工事士」という異色の経歴を持っていたため、施工に資格が必要な電気関係まで完全に自前。本物の職人さんを一切入れず、2ヶ月みっちり時間をかけておふたりの「好き」を詰め込んだ空間には、遊び心あふれるミラーボールがキラリと光ります。
お店を切り盛りする的場さんご夫妻。大手コーヒーチェーンでバリスタとして活躍していた奥様が、コロナ禍を機に「会社の方針に縛られず、自分が本当に美味しいと思うハンドドリップをトコトン追求したい」と一念発起したことからお店の歴史が始まりました。

当初、ご主人は「休みの日に手伝うわ〜」くらいのスタンスだったそうですが、いざオープンしてみると一人では大忙し。「これは無理だ!」と、なんと電気工事士の仕事を引退し、がっつり二人三脚で営業することに!

ご主人自身もお店を始める前から深くコーヒーに魅了されていて、その延長線上で自家焙煎を担当。おふたりの愛とこだわりが詰まった店内で、最高のコーヒーと、その相棒となる手作りの絶品スイーツたちが待っています。
奥様が「どうしても自分の手で淹れたかった」と語る、渾身のハンドドリップコーヒー。ご主人が自家焙煎を担当し、その時々に最も美味しい豆を最高の状態でスタンバイしています。


丁寧に淹れられた一杯は、雑味がなく芳醇で、心までじんわりと解きほぐしてくれるような美味しさ。店内に置かれた4種類の豆は、ポンプを押すと香りを体験できるユニークな仕掛けもあり、それぞれ驚くほど印象が違います。

そして、その最高のコーヒーの相棒となるのが、ショーケースに並ぶ常時4種類ほどの手作りケーキです。実はオープン当初、ケーキは外部から仕入れていたのだそう。ところが、「甘いものはないの?」というお客様のリアルな声に次々と応えていくうちに、奥様のスイーツへの探究心に火がつきます。

「最初は外注していたんですけど、だんだん自分で作りたくなっちゃって(笑)」
様々な人気店を食べ歩いて研究を重ねたというケーキは、今や外注時代を遥かに凌駕するプロの仕上がり。

今回いただいた「アメリカンチェリーのティラミスバスクチーズケーキ」は、コロンビアのディカフェのエスプレッソを使用したバスクチーズケーキに、マスカルポーネのふわふわっとしたフロマージュを重ねた、まさにハイブリッドな一品。コーヒーと相性抜群のラム酒を効かせた生クリームが添えられており、一口ごとに大人の贅沢が広がります。

さらに、オーダーが入ってから組み立てる、オール自家製の「コーヒーゼリーパフェ」も見逃せません。 この日はコロンビアの豆を使ったコーヒーゼリーやコーヒーグラニテに、ラムレーズンアイス、バニラアイス、マスカルポーネのシャンティ、サクサクのメレンゲ、そしてアメリカンチェリーを合わせた贅沢な構成。

日によって使う豆が変わるそうで、訪れるたびに異なるコーヒーの表情に出会えるのも専門店ならではの楽しさです。

年中味わえる不動の一番人気は、グルテンフリーの「バスクチーズケーキ」。ご近所の方が手土産に買いに来るほど愛されており、店内で食べる際は表面を炙る「ブリュレ」も可能。パリパリととろ〜り、2つの食感を欲張りに楽しめますよ。
元電気工事士のご主人が作ったハイセンスな空間と、バリスタの奥様が理想を追い求めたコーヒー&手作りスイーツ。
お客様の「あったらいいな」の声に耳を傾け、カレーからケーキまで自分たちの手で極上のクオリティへと進化させてしまった「abotam coffee stand」には、個人店だからこその温かい愛とおもてなしの心が満ちています。

キラキラ光るミラーボールの下、丁寧に淹れられた自家焙煎コーヒーをすすり、今が旬のアメリカンチェリーの限定スイーツを頬張る時間は、まさに至福のひととき。
京橋の喧騒を少しだけ離れて、おふたりの笑顔に癒やされる特別なローカル時間を過ごしに、ぜひ鴫野の住宅街へ足を伸ばしてみてくださいね。
About Shop
abotam coffee stand(アボタム コーヒー スタンド)
大阪市城東区鴫野西1-16-6
営業時間:11:00~18:00(L.O17:30)
定休日:月曜日、火曜日
Instagram:@abotam_coffee

あかざしょうこ
ウフ。編集スタッフ
関西方面のスイーツ担当。1984年生まれ、大阪育ちのコピーライター。二児の母。焼き菓子全般が好き。特に粉糖を使ったお菓子が好きです。
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