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日本全国人形焼の旅:素朴なお菓子だからこそ、知ると味わい深くなる職人の思いと人形焼

日本全国人形焼の旅:素朴なお菓子だからこそ、知ると味わい深くなる職人の思いと人形焼

素朴だけれど美味しい。飽きない美味しさについつい旅先で購入してしまうのが人形焼の魅力。そんな人形焼には長い歴史と職人の思いが詰まっております。
今回、西は京都、東は青森県東部まで。4つの人形焼をご紹介いたします。それぞれの職人さんたちがもつ思いと歴史もご一緒に、人形焼をご紹介いたします。

1.京都の老舗菓子屋で“和えたお菓子”として人形焼を楽しむ
「伊藤軒」

2.三猿と眠り猫がかわいい。長野県日光の素材と型にこだわった人形焼
「日光人形焼みしまや」

3.福を招く。石川県のポップでキュートな人形焼
「いちいちかわいいカフェ」

4.地元・八戸市のためにと生まれた愛らしい顔の青森土産。合掌土偶の人形焼
「八戸伝承菓子 萬榮堂」

全国人形焼の旅①~京都府~

老舗菓子屋伊藤軒さんが目指したのは“和えたお菓子”としての人形焼

日本全国人形焼の旅:素朴なお菓子だからこそ、知ると味わい深くなる職人の思いと人形焼

京都といえば、やっぱり老舗屋に行きたくなります。
京都市下京区、因幡薬師(平等寺)のある清水五条駅から京阪本線で6駅。右側に平然とながれる鴨川を眺めていると藤森駅に止まります。そこからさらに15分ぶらり、ぶらりと歩いてゆくと菓子老舗屋「伊藤軒」にたどり着きます。なぜこんな回りくどい道案内をしたかというと、伊藤軒さんがもつ150年の歴史に敬意の心をこめたかったからです。

因幡薬師は病気を治癒することで有名ですが、その参道でお土産屋さんとしてお煎餅を焼いていたお店が伊藤軒さん。当時は持ち帰ってご利益を得たり、その場でひょいとおやつ代わりに食べたりと当時から繁盛していたそう。時代は変わり、場所は変り。それでも伊藤軒さんの思いは変わらず「人を喜ばせること」にあります。

和菓子とは。伊藤軒さんならではの大喜利回答いただきました

日本全国人形焼の旅:素朴なお菓子だからこそ、知ると味わい深くなる職人の思いと人形焼

伊藤軒さんといえば、和洋折衷さまざまなお菓子があるわけですが、これは言わば長い歴史の積み重ねの中で、お菓子も時代や環境に合わせて変化していった結果というもの。「和菓子とは、文化と甘味を“和えた菓子です”。」なんて、粋なことを教えていただきました。そして人形焼という素朴なお菓子も和えたお菓子のひとつなのですね。

「人形焼に大切なのは睡眠です。」

そんな伊藤軒さんの人形焼に特別な材料は含まれておりません。当たり前の材料を使って、代わりに手をかけて作ること。例えば、生地を一晩寝かせる“宵ごね”をすることで水分のバランスが整って、しっとりとしたこしあんとの一体感が生まれます。人形焼の肌つやの良さも、この“宵ごね”のおかげ。質のよい睡眠が一番の美容法だなんて。思いがけず人と人形焼の共通点を発見してしまいました。

素朴な美しさこそ、一番の魅力なわけですね。

手土産をもうひとつ、という方に「遊び菓」をおすすめします

日本全国人形焼の旅:素朴なお菓子だからこそ、知ると味わい深くなる職人の思いと人形焼

さて、そんな伊藤軒さんで人形焼を買いましたら、ほかにも色々と試したくなります。私も皆さんと同じで甘いものには貪欲なのです。折角の機会ですのでお伺いしたところ、《遊び菓》をおすすめしていただきました。中身は、ビスケット、姫鯛、ボンボン、ラムネなどなど。色んな種類のお菓子がちょっとずつ小袋に入っています。「それぞれの世代の方々が、珍しがったり、懐かしがったり、思い思いの記憶とともに食べていただきたい。」と素敵なお言葉も添えていただきました。「人形焼」と「遊び菓」で、もう手土産に困ることはなさそうです。

About Shop
菓寮 伊藤軒
京都府京都市伏見区深草谷口町28−1(MAP)
営業時間:10:00~18:00
定休日:水曜日
公式HP

全国人形焼の旅②~栃木県~ 

「見ない、聞かない、言わない」なんてもったいない。日光人形焼みしまやの人形焼ストーリー

日本全国人形焼の旅:素朴なお菓子だからこそ、知ると味わい深くなる職人の思いと人形焼

場所を変えて栃木県の日光にお店を構える「日光人形焼みしまや」へ。ここの人形焼は世界遺産:日光東照宮の中でも人気の高い“見ざる、聞かざる、言わざる”で馴染み深い三猿と、眠り猫の形をしています。お店の雰囲気から長い歴史があるのかと思いましたら創業は平成26年と、意外にも最近のこと。「ただ、元々あった古民家の柱をそのまま使っているので、そういう意味で建物は相当古いですね。」とご説明いただいたのは、学生時代は美大で彫刻やインスタレーションを中心にアートワークを行っていたという若旦那の中山さん。奥さんとお二人で経営しているそうです。

美大生が人形焼屋さん。その理由は“原型から作りたい”だった。

日本全国人形焼の旅:素朴なお菓子だからこそ、知ると味わい深くなる職人の思いと人形焼

「僕、大学が多摩美だったので日光へ帰省するときはいつも東武線を使っていました。だから土産は決まって人形焼。卒業して、いざ地元に帰ろうって時に、なにか日光に所縁のあるもので人形焼を作れないかなって考えたわけです。」と、話す中山さんは漆職人になるか人形焼屋さんかで悩み、結果その両方を取りました。漆職人として日々精進する傍ら、人形焼の型から自分で作ったら面白いだろうな、と人形焼の世界と漆職人の世界とを行き来する生活を選んだのです。

溢れる創造と発想を駆使して人形焼屋さんを目指した訳ですが、“とにかく原型から作りたい”という熱量は並大抵のものではなく、型作りは真鍮の鋳造まで全部自分の手でやろうとしたのだとか。そんな恐るべき美大生魂によって出来たのが、この三猿と眠り猫。ほかのお店にはないスタイリッシュさにはこんな裏話が隠されていたのですね。写真の置物は実際に使っている人形焼の型を使用して作った置物。たまに、購入を希望される方がいるのだとか。

探求心が求めたのは最高の材料を揃えること

日本全国人形焼の旅:素朴なお菓子だからこそ、知ると味わい深くなる職人の思いと人形焼

料理経験なし、人形焼どころかお菓子を作るなんてできるのだろうかと疑心暗示になったこともあったそうですが、彼の持つ探求心がそんな心配をすぐにどこかへ追いやります。料理の腕がないなら材料にとことんこだわろうと、生地の繊細さを求めてたどり着いたのは広島県産のもち米飴。小豆に関しては10種類以上を試し、断然香りがよかったという北海道の大雪山の麓からとれる小豆を使用。と、全国から最高の材料を取り寄せて現在の人形焼になったそうです。

百聞は一見に如かず。日光の澄んだ空気の中で、「日光人形焼みしまや」の人形焼を召し上がってください。

About Shop
日光人形焼みしまや
栃木県日光市石屋町440(MAP)
アクセス
営業時間:9:00~17:00
定休日:木曜日
公式HP

全国人形焼の旅③~石川県~ 

いちいちかわいいカフェさんで、ポップでキュートな人形焼きはいかがでしょう

日本全国人形焼の旅:素朴なお菓子だからこそ、知ると味わい深くなる職人の思いと人形焼

もう少し変わった人形焼はないかな、人形焼の概念を覆すような。と考えていましたら石川県の津幅町にありました。その名も「いちいちかわいいカフェ」さんの「ねこ焼き」。招き猫を模した和風な見た目とは裏腹に、西洋風の中身が印象的。もちもちとした自家製生地と、食べ進めた時に溢れ出る中身は、たい焼きを連想させます。

幸せの黄色いフードトラックが目印

日本全国人形焼の旅:素朴なお菓子だからこそ、知ると味わい深くなる職人の思いと人形焼

黄色い車が目印のフードトラックは、「このコロナ下で少しでもお客さまの生活に笑顔と元気を届けたい!」と始めたそうです。そんな思いを持ったスタッフの多くが多忙を極めるママさんですが、語尾にビックリマークを3個つけたくなるくらい、いつも明るさと元気に満ちています。(!!!!)黄色いフードトラックはイベントの時や配達、テイクアウト営業に使用されます。発見した日はラッキー・デイになりそうです。もちろん店舗営業も行っています。

王道をとるか、個性派か

日本全国人形焼の旅:素朴なお菓子だからこそ、知ると味わい深くなる職人の思いと人形焼
日本全国人形焼の旅:素朴なお菓子だからこそ、知ると味わい深くなる職人の思いと人形焼

いちいちかわいいカフェさんの魅力のひとつが種類の豊富さにあります。写真の「生ふくやき」と、もう一つ、「ふくら焼き」を合わせれば、現在すでに20以上の種類が開発され、老若男女関わらず沢山の人を笑顔にしています。王道は生ふくいちご、個性派なら自家製コーヒーゼリー。季節やイベントに応じて入れ替わるメニューは新しいもの好きの子供心をしっかりつかんでいらっしゃる。ママさんならではのサービスに溢れてきます。

目指せ、全種類制覇

「ふくら焼き」なら160円、「生ふくやき」なら270円~という価格もうれしい。基本メニューの5種類と季節の限定メニューが2種類。全部まとめて買っても2000円でおつりが返ってくるぞ!なんて意気込んでいましたら、想像以上のボリューム感。このボリュームが嬉しい。でも、欲張りすぎてはいけませんよね。1日1個ずつ、毎日小さな幸せを分けていただくことにいたしましょう。

About Shop
いちいちかわいいCAFE
石川県河北群津幡町庄へ72-3(MAP)
営業時間:月~木11:00~17:00/金~日11:00~18:00
公式Instagram

全国人形焼の旅④~青森県~ 

国宝を身近に感じる人形焼。作り手の思いは、「八戸市に100年分の恩返しをしたくて。」

日本全国人形焼の旅:素朴なお菓子だからこそ、知ると味わい深くなる職人の思いと人形焼

日本全国を巡る人形焼の旅も最終を迎えました。最後を飾るお店として相応しい人形焼はどれだろう。と真剣に頭をひねりまして、やっぱり青森県南部地方にある八戸市にお店を構える八戸伝承菓子 萬榮堂さんの人形焼しかないと思い至りました。

大正10年に創業された萬榮堂さん。家族代々受け継いで現在3代目となります。

愛されてきたからこそ、“萬榮堂といえば鶴子まんじゅう。”だけではいけないと思った

写真2

日本全国人形焼の旅:素朴なお菓子だからこそ、知ると味わい深くなる職人の思いと人形焼

「八戸伝承菓子 萬榮堂」といえば、八戸出身の芥川賞作家、故・三浦哲郎氏の作品に度々現れる「鶴子まんじゅう」の生みの親として有名ですが、並んで人気なのが人形焼。平成21年、八戸市の合掌土偶が国宝に指定されました際に八戸市を代表する新しい土産を作ろうと考えたのが事の始まりです。「萬榮堂がこうして続いたのは、何といっても地元の方々のおかげ。うちは中心街から遠く離れた郊外にありますから、わざわざ買いに来ていただくことになります。それでも、子供時代を懐かしんで来てくださる方や、八戸出身の友人がくれたまんじゅうが美味しかったからと、足を運んでくださる方が多い。そうやって八戸に育てられて気が付いたら1世紀が経っていたのです。」

祖父や父の苦労を見ながらも、そのあとを継いだ3代目松田さん。そこには地元をもっと元気づけたいという強い思いがありました。

ただ型を変えればいい訳じゃない。誰もが喜んでくれる人形焼を

日本全国人形焼の旅:素朴なお菓子だからこそ、知ると味わい深くなる職人の思いと人形焼

人形焼プロジェクトは、東京、仙台、と菓子屋で修業を積みまして、萬榮堂の暖簾を受け継いだ松田さんの転機ともなる仕事。「土産菓子といえども、地元の人たちを喜ばせられるものを作りたい。」そんな思いと発想によって生まれたのが合掌土偶型の人形焼です。あんこは小豆を使わずに、当時の八戸市ではまだ珍しかった紫芋を使い、合掌土偶が造られた縄文時代からインスピレーションを受けてクルミを中に練りこみます。特注で作った型は普通の人形焼とはまるで違って立体的で模様も細かい。その時の湿度や温度にあった焼き加減を見つけ出し綺麗に焼き上げるのだそうです。最後に行きつくのは職人技なのですね。

こうして3代目による努力によって作られた人形焼は、言うまでもなく地元の人々に愛され、巡り巡って現在では青森を代表する名物土産の一つとなっています。

いまは、通販でも購入できるようですから、「合掌土偶の人形焼」と「鶴子まんじゅう」と、せっかくなので100周年を記念して作られた「幸せの地蔵まんじゅう」もご一緒に。その美味しさについつい、ありがとうと、手を合わせたくなります。

About Shop
八戸伝承菓子 萬榮堂
青森県八戸市八幡五日町2−9(MAP)
営業時間:8:30~19:00
定休日:火曜日
公式HP