
関西の洋菓子界を牽引し、地元・尼崎で30年にわたって愛され続けてきた「ケーキハウス ショウタニ」。その創業の地である富松町に、今年8月、待望の新店舗「ブーランジェリー キッチンコムギ ショウタニ」がオープンしました。
洋菓子職人たちがパン作りに純粋に向き合い、試行錯誤の末に誕生したお店は、オープン直後から昼過ぎには完売してしまうほどの人気ぶり。今回は、街の日常に寄り添う新たな名店の魅力と、ものづくりへの熱い情熱を取材してきました。

尼崎を代表する洋菓子店として関西一円で親しまれている「ケーキハウス ショウタニ」。大丸や松坂屋といった有名百貨店にも店舗を構え、地元のみならず多くのスイーツファンを魅了し続けてきた名店が、今年8月、創業の地である尼崎市富松町に新たな拠点をオープンさせました。元々はロールケーキ専門店として営業していた建物をリニューアルして生まれたのが、「ブーランジェリー キッチンコムギ ショウタニ」です。

扉を開けると、香ばしいパンの香りとともにお客さんの活気があふれています。決して広いとは言えない売り場ですが、開店直後から客足が途切れることはありません。厨房から次々とパンが焼き上がってくるものの、陳列台に並べる間もなく「クリームパンを4つください!」と声がかかり、スタッフさんが焼きたてをそのままお客さんのトレイへと運んでいくほど。連日お昼過ぎにはほとんどのパンが売り切れてしまうという盛況ぶりに、街の人々の期待の高さがうかがえます。

実は、ショウタニにとってパン作りはずっと温めてきた長年の念願だったそう。製造体制や設備面のハードルからなかなか形にできずにいたのだとか。そんな中、ものづくりや味の追求が大好きなスタッフが集まり、まるで社内サークルのように、自主的にパンの試作をスタート。小麦と向き合い、楽しそうに試行錯誤を重ねる職人たちの熱意に背中を押される形で、待望のブーランジェリー開業へと踏み切ることになりました。

ケーキのような洋菓子は、誕生日や記念日といった「特別な日」を彩る存在。一方で、パンは毎朝の食卓や日々の暮らしに寄り添う「日常」の食べ物です。「洋菓子店としては30年の歴史がありますが、パン屋さんとしてはまだまだ1年生。初心を忘れず、日々クオリティを高めていきたいです」という真摯な姿勢で、パン作りに取り組んでいます。
このお店が何よりも大切にしているのは、お客さんに常に焼きたてを届けること。時間帯によって並ぶパンの表情が少しずつ変わるのも、こまめにオーブンを稼働させている証拠です。なかでも看板商品のクリームパンとメロンパンは、できる限り切らさず並び続ける状態を目指して焼き続けられています。

洋菓子店が手掛けるパンだからこそ、まず味わってほしいのが一番人気の「ショウタニ クリームパン」です。パンに入っているのは、シュークリームのカスタードの流用ではなく、パン専用に一から配合を練り直した特製クリーム。

洋菓子とパンの違いは、クリームを生地の中に包んだ状態で高温のオーブンで「焼く」という工程が加わること。熱が加わってもなめらかさを失わず、風味と口溶けを一番美味しく感じられるよう、緻密な計算のもとで炊き上げられています。一口頬張ると、卵のコクがふわりと広がり、ミルキーでありながら驚くほど後味が軽やか。手で持つと崩れてしまいそうなほどふかふかの生地とクリームが一体となり、飲めるような口当たりに思わず笑みがこぼれました。

洋菓子作りとパン作りは異なる世界に見えますが、小麦の性質を見極め、旨味や食感を最大限に引き出すという考え方は共通しています。パイや焼き菓子で長年培ってきた素材選びや繊細な製法の応用が、並ぶパンの端々から感じられます。

その技術が分かりやすく表れているのが、クロワッサンやデニッシュといった折り込み生地のパンです。幾重にも重なる層が生み出すサクッと軽快な食感と、噛むほどに広がるバターの香りは、まさに洋菓子職人のお手のもの。

また、飛ぶように売れていく中で運よく手に入れた「メロンパン」も驚きの美味しさでした。上のクッキー生地だけが主張して下のパンがパサついてしまいがちなメロンパンですが、ショウタニのものはパン生地そのものがしっとりと味わい深く、クッキー部分と合わさることでひとつの完成されたスイーツのような満足感を与えてくれます。

さらに、カレーパンに包まれるコク深いフィリングはもちろん、あんぱんの中に入るあんこまでもが工房での手作り!豆からじっくりと炊き上げる妥協のない姿勢には、作り手の誠実な情熱を感じました。


棚を眺めていると、フランスの伝統菓子「ババ」やカヌレ、ガトーバスクといった洋菓子店らしい顔ぶれが並んでいるのもポイント。「ケーキ屋さんに置いてある時よりも、パン屋さんとして並べた方がなぜか気軽に手に取ってもらえるんです」とスタッフさんも嬉しい驚きを口にします。日常のパンと一緒に本格的な焼き菓子を気軽に連れて帰れるのも、この店ならではの楽しみ方です。
「ブーランジェリー キッチンコムギ ショウタニ」を訪れたら、ぜひ合わせて立ち寄りたいのが、同じ通り沿いにあるタルト専門店「コレクション ドゥ ショウタニ」です。ゆったりと落ち着いたカフェスペースを併設しており、焼きたてパンをテイクアウトしたあとにカフェで優雅なお茶の時間を過ごすという、贅沢な「ショウタニのハシゴ」が楽しめます。

ブーランジェリーという新しい扉を開いたことは、ショウタニというブランド全体にも心地よい刺激をもたらしています。「パンの修業がしたい」と門を叩く若い作り手が増えたり、既存のパティシエたちも「もっと技術を極めたい!」と士気を高め合ったりと、厨房には前向きな活気が満ちています。さらに、パンを買いに来たお客さんがそのままタルト専門店へ流れるなど、創業の地全体に素敵な相乗効果が生まれつつあります。

創業から30年を数え、関西を代表する洋菓子ブランドとしての地位を確立しながらも、守りに入ることなく新しい挑戦を純粋に楽しむショウタニ。職人たちの情熱と「美味しいものを届けたい」という原点の想いが詰まったパンは、これからも尼崎の日常を美味しく彩り続けてくれそうです。
About Shop
ブーランジェリー キッチンコムギ ショウタニ
兵庫県尼崎市富松町1-37-20
営業時間:09:00~無くなり次第閉店
定休日:なし
Instagram:@bakery.shotani

あかざしょうこ
ウフ。編集スタッフ
関西方面のスイーツ担当。1984年生まれ、大阪育ちのコピーライター。二児の母。焼き菓子全般が好き。特に粉糖を使ったお菓子が好きです。
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