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「Flowers fēte」(日本橋・BANK)今話題のフラワーアーティスト・細川萌Interview

あの有名パティスリーの内装を担当。今、スイーツと1番距離が近いフラワーアーティスト・細川萌さんインタビュー

2022年12月、日本橋兜町・旧日本銀行跡にオープンした複合施設「BANK(バンク)」。地下1階にあるフラワーショップ「Flowers fēte(フェテ)」のディレクター・細川萌さんは、有名パティスリーの店舗内装やスイーツの催事ディスプレイも手掛けるフラワーアーティスト。「今1番スイーツと距離が近い」とufu.が注目する彼女が、今回の記事の主役です。

「Flowers fēte」で萌さんが手がけるフラワーアレンジメントや内装デザインは、どこか退廃的でくすんだ色味。そこには、フラワーアーティストとして「食」の仕事に携わる理由にもつながる、植物への特別な思いがあります。今スイーツ界で注目すべき異色のアーティストの姿を、じっくりとお届けします。

人気パティスリーの「フキアージュ」や「Patisserie ease」のディスプレイを担当。パティシエの世界観を植物で代弁する

あの有名パティスリーの内装を担当。今、スイーツと1番距離が近いフラワーアーティスト・細川萌さんインタビュー
「Flowers fēte(フェテ)」店頭

「Flowers fēte」は、もともとフリーランスでフラワーデザイナーをしていた萌さんが、「BANK」グループに抜擢され、実店舗を営む形になって開店。オリジナル商品や花瓶、フラワーアレンジメントを販売しています。萌さんはこれまでに、フィナンシェを始めとしたシンプルな焼き菓子が評判の日本橋「Patisserie ease」や、芸術的なケーキと絶品カヌレが大人気の調布「フキアージュ」の内装を担当してきました。食への愛も人一倍強い萌さんの存在は、瞬く間に若手パティシエたちの間で評判に。

あの有名パティスリーの内装を担当。今、スイーツと1番距離が近いフラワーアーティスト・細川萌さんインタビュー
パティスリー「フキアージュ」内装

萌さんのフラワー装飾やアレンジメントが人気の理由は、担当するブランド、つまりシェフの世界観を萌さんなりに丁寧に解釈して表現してくれるから。「スイーツって、まず食べないと味がわからない、つまり味わうまで理解できないものですよね。だから、それをお花を通して表現したいんです」。

あの有名パティスリーの内装を担当。今、スイーツと1番距離が近いフラワーアーティスト・細川萌さんインタビュー
「Patisserie ease」内装

例えば、「Patisserie ease」の内装。シェフパティシエである大山さんと話をするうちに、ひとつひとつの上質な素材を掛け合わせてスイーツを生み出す「ease」というブランドに対し、“調和”というキーワードが思い浮かんだのだとか。そこで、白やベージュなどの馴染むような色合いの素材で構成したアレンジメントをつくったのだそう。

あの有名パティスリーの内装を担当。今、スイーツと1番距離が近いフラワーアーティスト・細川萌さんインタビュー
オリジナル商品「reed」。ガラスの中に、
ドライフラワーとアロマオイルを入れて楽しむフレグランス

様々なご縁があり、スイーツの仕事を引き受けることが増えてきたという萌さん。「美味しいものって、本能的に惹かれますよね。美味しいものを作れる人、特にパティシエにはリスペクトがあるんです」と語ります。そんな萌さんの半生を、じっくり紐解いていきます。

実家は花農家、家の前に山。植物との距離ゼロで育った幼少期

あの有名パティスリーの内装を担当。今、スイーツと1番距離が近いフラワーアーティスト・細川萌さんインタビュー

そもそもなぜ萌さんはフラワーアーティストになったのか。その原点からお話をお伺いしました。

「祖父が花農家をしていて、小さい頃はよく遊びに行っていたんです。家の前には山があったし、従妹や兄妹と一緒に木登りして遊んだりして、植物が身近にあるのが当たり前でした。feteのコンセプトのひとつである“植物は生き物”という想いも、ここから来ているのだと思います。だから、生々しいというか、極彩色の色合いを使うのかも」

あの有名パティスリーの内装を担当。今、スイーツと1番距離が近いフラワーアーティスト・細川萌さんインタビュー

「社会人になってからは、照明デザインや空間デザインといった、内装デザイン系の会社で働いていました。そこで出会ったのが植物を使った空間デザイン。そこからフラワーデコレーターのお仕事をするようになりました。

そのあとは、装飾が得意なフラワーショップを転々としてなんとなく暮らしていました。もともと、“人よりも植物や動物が好き”と言うくらい、お花が好きというか、身近な存在だったから。独立したい!という上昇志向もなかったし」

母と約束した、フラワーアーティストへの未来予想図

あの有名パティスリーの内装を担当。今、スイーツと1番距離が近いフラワーアーティスト・細川萌さんインタビュー

そんなとき、萌さんの人生に転機が訪れます。

「あるとき、ガンになった母が余命3か月だと宣告されて。母の立場になったとき、残された家族のその先が見れないことって、とても辛いことだなと思ったんです。だから、母に『私は10年後、20年後こうなっているよ』という人生設計を見せてあげよう、聞かせようと思ったんです。

そこで『この先私はどうしたいんだろう?』と考えたとき、お客さんとつくる装飾の仕事もいいけれど、フラワーアーティストとして、アートのお仕事もしたいと思いました。そこから専門学校に通いなおして、無給でフラワーアーティストに弟子入りして、自分のブランドを持って…。これ全部、母がいなくなる前に約束したことなんです。

あの有名パティスリーの内装を担当。今、スイーツと1番距離が近いフラワーアーティスト・細川萌さんインタビュー

今は、そろそろアトリエや手伝ってくれるチームメンバーを持って大きな仕事がしたいフェーズで、これも人生設計図の一部。ちょうどイートクリエイター(複合施設「BANK(バンク)」の運営会社)さんに出店しないかと声をかけてもらったので、自分のブランドごと「Flowers fēte」として出店することになったんです。

スイーツ関係のお仕事をしているのは、自分のブランドを持ってポップアップに出店していた時代、とあるパティシエさんに気に入っていただきお仕事を頂くようになってから。これ、母に話した人生設計には入っていないけれど、うれしい寄り道という感じです(笑)」

お花とスイーツの可能性。細川萌さんが今、スイーツの仕事をするわけ

あの有名パティスリーの内装を担当。今、スイーツと1番距離が近いフラワーアーティスト・細川萌さんインタビュー
パティスリー「フキアージュ」のショコラ写真ディレクション

そんな熱い想いで仕事に向き合う萌さん。「Flowers fēte」のブランドコンセプトがはっきりしているため、時には断るお仕事もあるそうですが、スイーツ業界の仕事をする理由についてお聞きしました。

「スイーツのブランドの世界観を表すのに、花はとても相性がいいと思っています。スイーツは、口に入れるまでその世界を感じることができない。それを視覚的に代弁することが、花にはできると思っています。例えば、NIKEのスニーカーに『この花のようなスニーカーです』と言われてもよく分からないけれど、ショコラに『この花のようなショコラです』と言われたらなんとなく通じるはず。現に薔薇やジャスミンはフレーバーにもなっていますよね。

あの有名パティスリーの内装を担当。今、スイーツと1番距離が近いフラワーアーティスト・細川萌さんインタビュー

植物も突き詰めれば野菜というか食の一つだし、人間は昔から草木で家を立てて綿を紡いで衣服をつくってきたわけで、植物は衣食住の根源にある存在。同じく衣食住のジャンルであるスイーツとは、親和性が高いのかなと思っています。そう信じているからこそ、わたしはスイーツ関係のお仕事が好きです。

と、いろいろお伝えしましたが、単純に美味しくて美しいスイーツを食べることが好きなのもあります(笑)」

華やかで美しいだけじゃない。お花の魅力を、「食」と掛け合わせて伝えていきたい

あの有名パティスリーの内装を担当。今、スイーツと1番距離が近いフラワーアーティスト・細川萌さんインタビュー

スイーツ界で今注目のフラワーアーティスト、細川萌さん。今後取り組んでいきたいことについてお聞きしました。

「お花って、ビジュアルの美しさや可愛らしさ、繊細さが取り上げられることが多くて。ほとんどはそのデザイン性を売りにした商品がほとんどです。例えば、花束などのギフトや装飾ですね。もちろんそれも魅力なのですが、もっと根源的な、衣食住にかかわる植物としての提案がしたいです。漢方とか染物とか」

あの有名パティスリーの内装を担当。今、スイーツと1番距離が近いフラワーアーティスト・細川萌さんインタビュー
パティスリー「フキアージュ」のショコラ写真ディレクション

「スイーツでいうと、写真のスタイリングに興味があります。宣材写真というよりアートのような、スイーツもお花もひとつの“素材”として撮る写真。スイーツとアートとお花を掛け合わせて、これからどんどん新たな挑戦をしていきたいですね」

About Shop
flowers fête(フェテ)
東京都中央区日本橋兜町6−7 兜町第7平和ビル 1F
営業時間:11:00~18:00
定休日:火曜、水曜
@fete_fl_tokyo

Photo/Cream Taro  Writing/Nanako Maeda