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青森・弘前『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』須藤シェフが解く、香りとペアリングの関係性。香りを閉じ込めたボンボンショコラの魔法とは

青森・弘前『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』須藤シェフが解く、香りとペアリングの関係性。香りを閉じ込めたボンボンショコラの魔法とは

近年、ペアリングという言葉を耳にすることが多くなりました。スイーツ界では特に、チョコレートやパフェに合わせて、お酒やコーヒーなどのドリンクから特定の種類をチョイスすることが多いです。

そこで、こんな疑問を持ったことはありませんか? “何を根拠に美味しいペアリングって言っているの?”

この問題に本気で向き合ったショコラティエがいます。
名前は須藤銀雅氏。東京でバー専用のチョコレート工房『アトリエ Airgead (アールガット)』をスタート。

青森県・弘前市ではビーントゥーバーチョコレートの専門店『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』を営むショコラティエです。

青森・弘前『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』須藤シェフが解く、香りとペアリングの関係性。香りを閉じ込めたボンボンショコラの魔法とは

彼が注目したのは”香り”、香りに注目した須藤シェフならではの2つのショコラトリーについて取材。

キーワードは“香気成分”です。

ショコラティエの技術と、科学の力が融合したボンボンショコラは、まるで魔法。全く想像しえない素材の調和に驚くこと間違いありません。

“比類なきコンセプト”にこそやりがいを感じる。2つのチョコレートブランドに掛けた思い

青森・弘前『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』須藤シェフが解く、香りとペアリングの関係性。香りを閉じ込めたボンボンショコラの魔法とは

バー専用チョコレート工房『アトリエ Airgead (アールガット)』に続き2018年、青森県・弘前市に『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』をオープンさせた須藤シェフ。現在は東京と弘前市を行き来しています。

『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』のボンボンショコラは、その美味しさはもちろんのこと、東北唯一のビーントゥーバー専門店という珍しさ。そして都内ではなかなか買えない希少性から、東京でもファンが付くほどの人気。

洋館や喫茶店の多い弘前市の風景から“大正ロマン”がテーマ。代表的なフレーバーは、清水森ナンバという唐辛子や、青森のヒノキ種ヒバのジンを使ったボンボンショコラなど。エッジの効いた印象です。

青森・弘前『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』須藤シェフが解く、香りとペアリングの関係性。香りを閉じ込めたボンボンショコラの魔法とは
青森・弘前『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』須藤シェフが解く、香りとペアリングの関係性。香りを閉じ込めたボンボンショコラの魔法とは

また写真のフォンダンショコラは、ぷっくり可愛らしいカカオの実の形。ベリーズ産カカオ使用のケーキで、中心にはほんのりバニラを効かせたガナシュがとじ込められています。 レンジでチンすると中身がじゅわっと、ナッティなベリーズカカオの香りがたまりません。

『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』は、銀座松屋で行われる「GINZA バレンタインワールド」(2023年2月1日~14日まで)に出店予定。既にどんなチョコレートが登場するのか噂が絶えません。しかし、そこまで注目を集める須藤シェフのチョコレートの美味しさのルーツとは、一体どのようなものなのでしょうか。

美味しさのキーワード“香気成分”とは? ペアリング理論にも使われる科学技術をボンボンショコラに応用

青森・弘前『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』須藤シェフが解く、香りとペアリングの関係性。香りを閉じ込めたボンボンショコラの魔法とは

さまざまな要因が複雑に絡み合い生まれるチョコレート。その中で、須藤シェフが着目したのが香気成分。私たちが生活する上で不可欠な“香り”を作り出す分子で、その数約40万種類と言われています。

香気成分のうち、食品に含まれる香気成分として主流なものだけでも70種類以上あるそう。須藤シェフはそんな香気成分を相関図にまとめ、チョコレート作りに応用。青森県の大学の研究機関と連携し、カカオの産地ごとに香気成分を可視化したカードを作成するなど、“ペアリング理論”をとことん追求しています。

須藤シェフ「香気成分を使うことで、あっと驚くような発見があります。例えばホップのチョコレート。大学の研究によってビールの香り付けに使うホップと、クスコ(ペルー)産のカカオに同一の香気成分が含まれているとが解明。香気成分の知識を用いることで、最初から鋭いアプローチができました」

青森・弘前『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』須藤シェフが解く、香りとペアリングの関係性。香りを閉じ込めたボンボンショコラの魔法とは

時に足りない香りを。時に強調させたい香りを。香気成分によって複合することでより、香りの色彩と美味しさを引き出すペアリング。感覚だけでない、科学的な証拠が食べる人に納得と味わう指針を示してくれるようです。

須藤シェフ「香気成分は味を決める一つの要素。そのため今は香気成分と自らの経験からチョコレート作りをしています。

シェリー酒の香り印象付ける香り作り。驚きの発想で生まれる『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』のボンボンショコラ

青森・弘前『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』須藤シェフが解く、香りとペアリングの関係性。香りを閉じ込めたボンボンショコラの魔法とは

いまや60種類以上のボンボンショコラを作る須藤シェフ。そのうち約20種類を弘前市唯一のビーントゥーバー専門店『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』で楽しむことができます。そして、そのどれも須藤シェフならではの香りサイエンスが。

須藤シェフ「『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』のシェリー酒ボンボンは4、5種類のハーブを使っています。この時、イメージは似た成分でシェリー酒を作るような感じ。食べた時に主役が分かるような統一感が大切です。

カカオを選んで、チョコレートにシェリー酒を入れただけではシェリー酒の香りは生きて来ない。だから、シェリー酒に含まれる香気成分に代わるものを探します。例えばフェヌグリークやトンカ豆、シナモン、リコリス。その香りをガナッシュ用のクリームに移してチョコレートの中に閉じ込めます」

青森・弘前『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』須藤シェフが解く、香りとペアリングの関係性。香りを閉じ込めたボンボンショコラの魔法とは

しかし、全てが香気成分通りになるわけではありません。香り以外にも、食感、くちどけ、後味など、複合的要素が多いボンボンショコラ。完成にはシェフによる微調整が必要不可欠。そのため須藤シェフのキッチンの引き出しには様々なスパイスが所狭しと入っています。

須藤シェフ「フードペアリングやマリアージュを含め素材同士の組み合わせは結局、人の感覚によって一番大きく左右される。理論だけではないんです。だから細かい調整時は、ショコラティエとしての経験や感覚がものを言う。なかなか奥深いものです」

欲しい知恵は全てBarにあった。Bar専用チョコレート『アトリエ Airgead (アールガット)』の誕生秘話

青森・弘前『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』須藤シェフが解く、香りとペアリングの関係性。香りを閉じ込めたボンボンショコラの魔法とは

ところでなぜ須藤シェフは香気成分に着目したのでしょうか?

その始まりは、行きつけのバーからだったそう。

須藤シェフ「僕がBar専用チョコレートを作るようになったのが、全てのきっかけだったと思います。元々、Barの世界に凄く憧れがあって。お店に行ったら黙って飲むより、マスターにうんちくを語ってほしい。そうして話すうちに、距離も縮まって。ある日マスターが“お酒に合うチョコレートを作ってよ”と言ったんです。

単純に面白そう!と思ってやり始めたのが現『アトリエ Airgead (アールガット)』の先駆けです。

最初は完全に感覚で作っていました。しかし、その頃から主役はお酒で、チョコレートはつまみという感覚があった。紆余曲折の末に出来たチョコレートは、幾分狙ったこともあれば新たな発見もありました」

青森・弘前『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』須藤シェフが解く、香りとペアリングの関係性。香りを閉じ込めたボンボンショコラの魔法とは
青森・弘前『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』須藤シェフが解く、香りとペアリングの関係性。香りを閉じ込めたボンボンショコラの魔法とは

当時は『ピエールマルコリーニ』で働きながら、Bar専用チョコレートを作成。Bar界隈で徐々に須藤シェフの名前が知られてゆきました。そしてBarからの注文が多くなり、独立を決意。『アトリエ Airgead (アールガット)』オープンに向けて動き出します。

須藤シェフ「まずは僕の活動を知ってもらうことから、と色々なBarに顔を出しました。中でも凄くお世話になったのが五反田のBar『シェリーミュージアム』のマスター。香気成分について初めて教えてもらったんです」

それから、香気成分の原理をチョコレートに応用するため試行錯誤した須藤シェフ。今では動画配信サービスでも香気成分について発信。NHK番組「美の壺」などで取り上げられるなど、“科学者のようなショコラティエ”として知られるようになりました。

現在は新たに、お酒に漬けたカカオニブを使用したチョコレートの共同開発など、精力的に活動の幅を広げている須藤シェフ。次はどんなボンボンショコラに香りの魔法をかけるのか。ますますの注目が集まります。

About Shop
浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)
青森県弘前市緑町18
営業時間:11:00~19:00
定休日:月

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アトリエ Airgead (アールガット)

園果わたげさん

園果わたげ

ウフ。編集スタッフ

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ufu.の新米編集者。メンズカルチャー誌でアシスタントを経験後ufu.に転身。 特技は甘いものを食べ続けること。最近は美術館内レストランの限定コラボスイーツにハマっている。