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実店舗のない菓子ブランド『Patisserie Souriche(スリーシュ)』を27歳で立ち上げ若きパティシエールなかじまちなつが考える“令和の新たな働き方”とは

実店舗のない菓子ブランド『Patisserie Souriche(スリーシュ)』を27歳で立ち上げ若きパティシエールなかじまちなつが考える“令和の新たな働き方”とは

これまで数々の名パティスリーを取材してきた「ウフ。」。しかし、名だたるシェフも、脚光を浴びる前は必ず“若手時代”を過ごしてきました。

そこでバレンタインが迫るこの時期に合わせて、20代~30代前半の若手ショコラティエに着目。才能あふれる3名の方に取材。なぜ、パティシエという道を選んだのか、なぜチョコレートの世界を極めんとするのか。現在の歩み。そして今後の目標を聞きました。

実店舗のない菓子ブランド『Patisserie Souriche(スリーシュ)』を27歳で立ち上げ若きパティシエールなかじまちなつが考える“令和の新たな働き方”とは

本記事でトップバッターを飾るのは、2022年4月に独立を果たした若きパティシエールなかじまちなつ氏。

現在『Patisserie Souriche(スリーシュ)』のシェフを勤める他、企業に向けたレシピ考案など、幅広い活躍を見せています。27歳で独自のマーケティングを開拓しようと歩み始めたなかじまちなつシェフ。その情熱を取材。そして見えてきたのは、経験の重ね方に対する新しい考え方でした。令和の新風を感じるなかじまちなつシェフのスタイルを深堀します。

フリーランスの仕事って?自分のブランドを持つことの意義

実店舗のない菓子ブランド『Patisserie Souriche(スリーシュ)』を27歳で立ち上げ若きパティシエールなかじまちなつが考える“令和の新たな働き方”とは

現在オンラインを中心に商品販売を行っている『Patisserie Souriche(スリーシュ)』。フランス語の造語で“笑顔”と“身近”を意味します。お菓子で笑顔に。お菓子をもっと身近に。そんな思いから出来たブランドです。

元々、埼玉の人気店『Chant d’Oiseau(シャンドワゾー)』で7年間勤め、独立を果たしたなかじまちなつシェフ。自分の表現したい世界観を具現化するための手段として、オンラインショップを開設。現在では、地域のマーケットやポップアップへの出店も積極的に取り組んでします。それだけではありません。同時に、企業に向けた企画開発も積極的に行っているそう。

実店舗のない菓子ブランド『Patisserie Souriche(スリーシュ)』を27歳で立ち上げ若きパティシエールなかじまちなつが考える“令和の新たな働き方”とは

なかじまちなつシェフ「企業に向けた案件では、クロワッサンのレシピ開発。日本酒作りでロスとなる酒粕を使ったスイーツの提案などを行っています。独立をしたと言っても、まだまだ私にとっては次のステップへの準備段階。『Patisserie Souriche(スリーシュ)』としてのお菓子作りも、企業に向けた提案も、刺激的でとても大切な仕事です」

『Patisserie Souriche(スリーシュ)』のくちどけ「テリーヌショコラ」と濃厚ボンボンショコラ

実店舗のない菓子ブランド『Patisserie Souriche(スリーシュ)』を27歳で立ち上げ若きパティシエールなかじまちなつが考える“令和の新たな働き方”とは

『Patisserie Souriche(スリーシュ)』では、ショコラと焼き菓子を中心に豊富なスイーツが並びます。中でも「テリーヌショコラ」はなかじまちなつシェフのこだわりが詰まった1品。何度も試作を繰り返し完成した一体感のある舌触りは、他になかなか出会えません。

なかじまちなつシェフ「固さにムラが出てしまうことの多いテリーヌショコラ。そこで、プディングに使用する材料を参考にすることで、外側も内側も舌を覆うような滑らかさに仕上げることができました。

食べる直前に、ティムットペッパーをかけます。黒コショウのような刺激と、レモンのような爽やかさのあるスパイスは、濃厚なチョコレートを最後まで食べやすい後味にしてくれます」

実店舗のない菓子ブランド『Patisserie Souriche(スリーシュ)』を27歳で立ち上げ若きパティシエールなかじまちなつが考える“令和の新たな働き方”とは

またボンボンショコラも、なかじまちなつシェフにとって思い出深いもの。味の分かりやすさを意識したというボンボンショコラは、フレーバーの味わいがはっきりと際立ちます。

ほうじ茶のガナッシュが入った「テグリエ」。アプリコットのコンフィチュールと紅茶のガナッシュが入った「テアブリコ」。アルマニャック(ブランデー)とラムレーズンの「レザン」。どれも贅沢で、満足感のある濃厚な味わいです。

実店舗のない菓子ブランド『Patisserie Souriche(スリーシュ)』を27歳で立ち上げ若きパティシエールなかじまちなつが考える“令和の新たな働き方”とは

なかじまちなつシェフ「ボンボンショコラは、群馬から上京した際に感動したお菓子のひとつ。ショーケースにずらりと並ぶ様子を初めて見て、宝石店のようだと感じました。

キラキラ光る艶はもちろん、食べた時にも贅沢な気持ちになってほしい。そんな思いから、ふんだんに素材を使用しています」

今までも、これからも。“負けん気”で切り抜けたパティシエの道

実店舗のない菓子ブランド『Patisserie Souriche(スリーシュ)』を27歳で立ち上げ若きパティシエールなかじまちなつが考える“令和の新たな働き方”とは

27歳という若さで独立を果たしたなかじまちなつシェフ。今までの働き方とどのような違いを感じたのでしょうか。

なかじまちなつシェフ「大きな違いは責任の在り方だと思います。お店で働く場合、いかにオーナーシェフの考えを先読みし、忠実に再現できるかが勝負。それに対して、フリーではすべてが自分次第。それなりのモノにはそれなりの結果しか返ってきませんし、0を100に変えることもできると思っています」

『Chant d’Oiseau(シャンドワゾー)』時代では、早い段階からシェフドパルティ(部門シェフ)の役職を勤め、チームをまとめる立場を経験したなかじまちなつシェフ。同僚と共に働くことで、刺激と競争心をかき立てられたと言います。

実店舗のない菓子ブランド『Patisserie Souriche(スリーシュ)』を27歳で立ち上げ若きパティシエールなかじまちなつが考える“令和の新たな働き方”とは

なかじまちなつシェフ「私は小さいころから勉強は苦手でしたが、好きなことに対する負けん気は人一倍ありました。何かを理由に諦めたくない。

パティシエは力仕事も多いので、男性が優位な仕事だと考えられがちですが身体の使い方を1つ工夫すればできることも増えていきます。さらに、基本的な知識を現場でしっかりと活かせれば人が気付かないことに、気が付くことができる。『Chant d’Oiseau(シャンドワゾー)』では、こうした自分の強みを積み重ねる経験を沢山させていただきました」

なかじまちなつシェフはよく“どんなに素晴らしいお菓子でも、作っているのは同じ人間。だから、自分だって努力次第で何でもできる”と考えるそう。自分の人生は、自分で決められるという強い信念が、なかじまちなつシェフを独立へと促したようです。

幼いころの夢を叶えたその先に見えた自分らしいパティシエの姿とは

実店舗のない菓子ブランド『Patisserie Souriche(スリーシュ)』を27歳で立ち上げ若きパティシエールなかじまちなつが考える“令和の新たな働き方”とは

そんななかじまちなつシェフは、いつからパティシエを目指し始めたのか、よく覚えていないそう。母がよく手作りのお菓子を焼いてくれたこと。そして、ケーキ屋さんにしかないワクワクを幼少期から感じ取り、気づけば将来の夢がパティシエに。

なかじまちなつシェフ「群馬から上京し、偶然にも初めて訪れたお店『Chant d’Oiseau(シャンドワゾー)』。そして初めての就職先にこのお店を選んだのも、ある意味感覚的なところが多かった気がします。

マンションが建ちならぶ道の途中に、急に現れるお店。扉を開けるとバターの香りと沢山のお菓子。幼少期と同じワクワクを感じました。そして、食べるとどれも自分好みの味。働くならここがいいと、直ぐに連絡をしました」

実店舗のない菓子ブランド『Patisserie Souriche(スリーシュ)』を27歳で立ち上げ若きパティシエールなかじまちなつが考える“令和の新たな働き方”とは

今思い返すと、ケーキだけでなく、焼き菓子やパン、チョコレートなど幅広いメニューを扱っていることも良かったというなかじまちなつシェフ。さまざまな経験や人との出会いが、現在に活かされているんだとか。

なかじまちなつシェフ「昔は地元で実店舗を開くことが夢でした。しかし、こうして新たな拠点で人との出会いや自身の成長を感じて、今では拠点は自由であっていいと思っています。

地域創生には、昔から興味があるので自分の活動が町おこしになればいいですね。『Patisserie Souriche(スリーシュ)』を名前にしたように、お菓子を通して人と人とのつながりと笑顔を増やせていければと思います」

生粋のポジティブ思考と負けん気で、新しいことに挑戦し続けるなかじまちなつシェフは、現状を“準備段階”と語ります。今後、どこでどんな活躍を見せるのか、その行動力に期待が高まります。

About Shop
Patisserie Souriche(スリーシュ)
公式インスタグラム:@souri_che

園果わたげさん

園果わたげ

ウフ。編集スタッフ

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ufu.の新米編集者。メンズカルチャー誌でアシスタントを経験後ufu.に転身。 特技は甘いものを食べ続けること。最近は美術館内レストランの限定コラボスイーツにハマっている。