
一口食べるごとに物語が進んでいくようなワクワク感を楽しめる。そんなクレープを提供するのは千葉・金谷にある「鋸山BASE(ノコギリヤマベース)」。夫婦で経営するこのお店で、こだわりの詰まった「大人の方にこそ食べてほしい」という絶品クレープを味わいました。


都心から約2時間、海と山に囲まれ、自然豊かな空気が流れる千葉県・金谷。そんな金谷の観光地の1つ、鋸山ロープウェー乗り場のすぐ横にあるのが、今回訪れたお店「鋸山BASE」です。
白い壁と木を基調としたお店は、シンプルながらも温もりがあり、居心地の良さを感じられます。


このお店を経営するのは、今村映さんと瞳さん。お二人とも地元を離れた金谷にあるコワーキングスペースで出会い、倉庫が付いたこの物件に住むことに。せっかく倉庫があるのだからお店をやろう!と、なんとご自身でDIYやリノベーションを行い、この店舗が完成したのだそう。クレープのアイデアは映さんが、お店の空間作りは瞳さんがご担当されています。

鋸山BASEの名前には、「鋸山の麓=base」にあり、「オフできるベースキャンプ」に来たような感覚で「大人の秘密基地」のように大人が本気で技術を掛け合わせたスイーツを楽しんでほしいという願いが込められているんだとか。せわしない日常から離れ、おいしいクレープとコーヒーで一息つける空間を提供されています。
元々は駄菓子屋として営業していましたが、土地に根付いたことを始めようと2023年にカフェを開始。パティシエ経験のあった映さんが、看板商品として選んだのがクレープです。
「クレープは最も余白が多いスイーツだと思っています。ケーキと異なり制約がないのが魅力。巻けばクレープになる。片手で持てるカジュアルさとパフェのようなギミックも詰め込みつつ、出来立ても提供できる。皿盛りにすれば水分量も気にしなくていい。スイーツにもおやつにもなるし、温かいものも冷たいものも提供できます。クレープであれば、いろいろな人や農家さんとのコラボもできるのがいいんです。」と話す映さん。余白が多いからこそ、こだわりをたくさん詰め込んだクレープを提供されています。

そんな映さんのクレープの特徴は「起承転結」。手持ちクレープの特徴を活かし、クレープを上から順に4つの構成に分け、食べ進める中で、まるで物語のようにおいしさが変化していきます。
映さん「クレープをまず見たときの、これはどんなクレープなんだろうと感じてもらうのが起。クレープ生地と具材を合わせて食べたときにクレープならではのおいしさが楽しめるのがサビである承。食べ進めていくと、これまでとは異なる食感を楽しめる転、そして最後にサプライズとして余韻を楽しむ結。クレープはパフェとは違い、中身が見えないからこそ得られるワクワク感も楽しめるんです。」

「起承転結」はもちろん、要素となる「生地」「クリーム」「具材」全てにこだわりが詰まったクレープ。「モチモチのクレープが好き」という映さんが作り上げた、モチモチ×歯切れのよいクレープ生地が土台となり、生クリームにカスタードクリームを混ぜることで完成した、濃厚だけれど軽く、大人でもペロッと食べられる究極のバランスのクリームが主役である具材を惹き立てます。
生地もクリームも、完成するまでに2年以上の月日を要したそう。おいしさを追求した最上級のクレープをいただいてきました。

最初にいただいたのは、12月限定メニューである「ノエルピスターシュ」。12月ならではのクリスマスをモチーフとした一品です。
まずは「起」の部分であるクリスマスツリーに見立てたピスタチオのクリーム。そのビジュアルは、一目見ただけで心躍るかわいらしさ。ピスタチオクリームの中にはグリオットチェリーのムースが隠れており、見た目はもちろん、味のバランスまで考えつくされ、クレープの物語に吸い込まれていきます。

「承」のクレープ生地まで到達すると、チェリーのコンポートやソース、ピスタチオクリームをクレープ生地とクリームで包み込み、甘みと酸味のバランスに、コクのある濃厚な味わいを楽しめます。
そんな中現れてくるのが「転」のクリスマスらしい食感と香り。シナモンクッキーのザクザク感とクローブやカルダモンの香りが、クリスマス感をさらに演出。食べている人を物語の最後まで余すことなく楽しませます。

そして最後まで食べ進めると登場するのが、「結」のカシスのジャム。物語の終わりを告げると同時に、甘酸っぱい余韻が口いっぱいに広がります。次の物語にはいつ会えるのかと心待ちにしてしまうほど、余韻までも楽しませてくれるクレープです。

続いていただいたのが「焼き芋りんごバター」。元々は11月の限定メニューでしたが、あまりのおいしさにスペシャリテとして秋冬にかけて提供することが決定した一品です。
こちらのメニューは、安納芋の焼き芋ペーストとキャラメリゼされた紅玉にたっぷりのバターとシナモンが入ったホットクレープ。そして皿盛りにすることで、熱々のクレープの上にひんやり冷たいこだわりのチャイのアイスを乗せることも可能に。見た目も味も豪華になった、冬の特別感を演出します。チャイアイスとシナモンのスパイスさが安納芋とりんごの甘さを引き立たせ、キャラメルの香ばしさでさらに食欲を掻き立てます。


皿盛りは手持ちとは異なり「起承転結」がなく、食べる順番をお客様が選べるのが重要なポイント。クレープとアイスを一緒に食べたり、たっぷりのソースにつけて食べたり。手持ちと皿盛りは同じメニューでも全く違う顔があるので、ぜひ両方とも楽しんでほしい、とのこと。皿盛りのメニューはこれからより力を入れていきたいそうです。


実はクレープ店を経営している今でも、映さんはWEB系の仕事や食に関わる人を集める企画を、瞳さんはエシカルライターという二足以上の草鞋を履かれています。そんな今村ご夫婦に、今後の展望を伺いました。
「今はドリンクを使い捨てのカップで提供していますが、マグカップなどの繰り返し使える食器を使って、環境に配慮したい。」と話す瞳さん。エシカルライターだからこそ、環境のことを考え、お店に取り入れていくのがやりがいなんだとか。
「おいしいものに出会うのが自分の幸せなので、人間が本質的においしいと感じる部分を追求し、それをクレープで表現して、お客様に幸せをシェアしていきたい。」と話すのは映さん。映さん曰く、食のおいしさは技術から生まれる機能的な部分と、記憶や気持ちから生まれる感情的な部分で構成され、おいしさには明確な正解がないからこそ、探求する面白さがあるそう。だからこそ、食にまつわる人たちとできるだけ会い、自分の周りにおいしいものが集まるような活動を行なっているんだとか。

おいしさの体験を自分で咀嚼し、クレープに落とし込む。余白があるからこそ提供できるお二人のこだわりが詰まった「鋸山BASE」のクレープ、ぜひ皆さんも味わってみてはいかがでしょうか。
About Shop
鋸山BASE
千葉県富津市金谷4046-3
営業時間:月金 11:00〜16:00/土日祝 11:00〜17:00
定休日:火曜日、水曜日、木曜日
Instagram @nokogiriyama_base

えり
ウフ。編集スタッフ
自分の“好き”であるスイーツをもっと広めたい!と前職のイベント制作から飛び出してウフ。に仲間入り。今はドーナッツを中心に日々おいしいものを勉強中。
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