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「ignis」(千駄木)超希少&前衛的なスペシャルティ珈琲専門店。美しすぎる珈琲ゼリーを訪ねて

第三の居場所としてゆったり過ごす大手チェーンのコーヒーから、食事と楽しむ喫茶店のブレンドコーヒー、またお家で気軽に楽しむインスタントコーヒーまで。私たちの生活に普及し、その味わいや楽しみ方も多岐にわたっている珈琲。今回ご紹介するのは、そんな珈琲店の中でも、超希少なスペシャルティ珈琲を取り扱う「ignis」。

珈琲の新しい世界を知りたいあなたに、ぜひ訪れてほしいお店です。店主の土橋さんに取材し、メディアで取り上げられ話題になった美しい珈琲ゼリーをはじめ、お店や珈琲に込めた想いまでご紹介します。

取り扱いは80種以上。今までにない珈琲の世界と出会えるお店

東京メトロ千駄木駅から徒歩5分。「ignis」があるのは、小さなお店が立ち並ぶ商店街・よみせ通りの一角。真っ白な壁が、まるでミュージアムのような佇まい。珈琲の香りに誘われて、早速中へとお邪魔します。

取り扱う珈琲豆のメインは「ゲシャ」

カウンターにはignisオリジナルボトルに入れた珈琲豆と、産地や加工プロセスを記載したプロフィールカードが並びます。「ignis」が取り扱う珈琲は、なんと80種類以上。

中でも、珈琲を愛してやまない店主・土橋さんが積極的にセレクトするのはインフューズドコーヒー。インフューズドコーヒーとは、珈琲豆をフルーツやスパイスで作ったシロップに漬けこんで、味や香りを加えた珈琲のこと。「珈琲豆本来の味わいではない」と議論になることもある、かなり先進的な珈琲なのだとか。

土橋さんの「珈琲を心から楽しんでほしい」という願いで、珈琲はオーダーメイドの抹茶茶椀で提供。両手できちんと持って珈琲と向き合うことで、味わうぞ、というマインドを自然とつくっているのだとか。「両手で持っていたら、スマホも触りにくいので」と土橋さん。また、アイスドリンクもワイングラスで提供するなど、味そのものだけでなく、ロジックから味覚を設計しているのがこだわりです。

まるで宝石のような美しさ。新感覚すぎる珈琲ゼリー

このお店のスイーツで人気なのが、スペシャルティ珈琲を使った贅沢な珈琲ゼリー。球体のなんともユニークで美しい佇まいに、サーブされた途端から目を奪われてしまいます。珈琲の中身は日替わり。

スプーンで口の中にふくんだ瞬間に、儚くスッと溶けていき、舌の中に珈琲が残ります。噛んでいるのか飲んでいるのか、分からないようなみずみずしさがとても新感覚! ゼリーが球体なのは、この食感を邪魔しないようにしているのだそう。

この美しいゼリーを作り始めた経緯についてお伺いすると、「もともと、スタッフのトレーニングで余った珈琲で、スタッフのおやつとして作っていたメニューなんです。珈琲屋が失敗した珈琲やラテをじゃばっと捨てる文化が嫌で、ちょっと抵抗しようと思って」と笑う土橋さん。

「それをたまたま見たお客さんに『ちょっと食べさせてよ』と言われて提供してみたらすごく好評で。たしかに、美味しい珈琲を固めたら美味しいに決まってるし、話題を呼びそうな面白いビジュアルにしてメニュー化しました」

抽出機「パラゴン」。玉の部分がコーヒーを急冷し、香りや味の揮発を防いでくれるのだとか

とにかく自分のレーダーで「面白い」と感じたものは、どんどん取り入れていくスタンスだという土橋さん。「抽出器ひとつとっても、面白いものだとお客さんが見に来てくれる。どんどん珈琲を飲んでくれて広めてくれる。いいことづくめです。だから、先進的な珈琲も、自分がイイと感じたものは積極的に置いていますね」

とにかく「面白い」ものをどんどん取り入れる。珈琲界のニュースタンダードを生み出す店主

ignisを営む店主の土橋さん。17歳のときに珈琲に魅せられ、GLITCH COFFEE & ROASTERS(神保町)でバリスタとして修業を積みます。珈琲もビジネスも、仮説を立てて検証して結果を見る…というプロセスを面白く感じ、とにかくハマっていったのだそう。

独立してignisをオープンさせたのは、お店に自分の想いをダイレクトに、自由に反映させたかったから。

「珈琲の価値をあげたいですね。そのために、具体的な行動を心がけています。例えば、エチオピアのゲシャのオークションで、珈琲豆を歴代過去最高額で購入したり。1杯にすると1万円。本当においしいものなら、高価でもお金を出す人がいることを示したかったんです。安く売られていたものを高値で買うことで、フェアトレードの観点でも社会貢献になると思っています」。

さらに土橋さんが大事にしているのは、常に「ニュースタンダード」であり続けること。「例えば、夏に提供している『アイスアメリカーノ』。本来はエスプレッソを氷水で割ったドリンクなのですが、ignisでは炭酸水で割っています。炭酸水のほうが、珈琲のフルーティーな味わいを引き出せるから。同じように、インフューズドコーヒーを取り扱うのも、『普通』を覆していきたいからなんです」。

ignisオリジナルの「アイスアメリカーノ」
中のコーヒーは日替わりで、この日はコロンビアの「レッドプラム」

「今、『チャットGPT』というコーヒーカクテルを開発しているんです。チャットGPTに『革命的なコーヒーカクテルを作って』と言って出してもらったレシピをそのまま商品化するという。面白そうじゃないですか?こうやって、どんどんニュースタンダードを作っていきたいですね」。※販売中(2023年8月時点)

ちなみに土橋さん、もともとパティシエ志望でスイーツが大好き。ignisを多店舗展開した後、珈琲の要素を取り入れたアシェットデセールのお店にもチャレンジしてみたいのだとか。

そんな“ニュースタンダード”な店主が営むスペシャルティ珈琲専門店「ignis」で、常識を飛び込えた新たな珈琲体験をぜひ。

About Shop
ignis
東京都文京区千駄木3-44-11
営業時間:11:00~18:00
定休日:なし
@igniscoffee

※今年1月に鎌倉店もOPEN
ignis Kamakura(神奈川県鎌倉市小町1-5-21 1F)営業時間:11:00~18:00