
米粉を使ったスイーツを食べたことがありますか? 小麦粉の代用品というイメージが強い米粉ですが、今年11月1日にオープンした「PâtisseRiz Arti(パティスリ アルティ)」が作る米粉のスイーツは一味違います! 米粉の研究をし続けているオーナーパティシエの小野坂桂子さんが作り出す、米粉のおいしさを活かした焼き菓子やケーキの魅力を取材してきました。

京成高砂駅から徒歩5分。閑静な住宅街を抜けると「PâtisseRiz Arti(パティスリ アルティ)」が現れます。グリーンの扉が目を引くかわいらしいお店は、もともとパン屋さんだった場所を改装したのだとか。

店内に入ると稲穂やススキを使ったアレンジメントが目に留まります。

焼き菓子が並ぶ上品なアンティークの棚もオーダーして作ったそうで、店内の至る所に桂子さんのこだわりが詰まっています。

なんと、エプロンやコックコートも米や籾殻で染めたもの! ナチュラルな色合いがすてきです。



店内に並ぶスイーツは、焼き菓子からシュークリームやケーキまで全て米粉で作られています。オープン前からお店が気になっていたというご近所の方がたくさんいて、オープン日には行列ができたそう。

桂子さん「既に5回以上リピートしてくださるお客様もいるんです!米粉だからというわけではなく、お菓子やケーキの味を気に入ってくれて日常使いされる方が多い印象です。」
「PâtisseRiz Arti(パティスリ アルティ)」をオープンする前、桂子さんは毎週のようにマルシェで米粉の焼き菓子を販売されていました。オンラインでの販売にも挑戦したことがあったそうですが、直接お客様と触れ合える話せるマルシェのほうが性に合っていたとか。お客様と話すのも好きという桂子さん。その明るい人柄もリピーターが増える理由のひとつではと感じます。

「PâtisseRiz Arti (パティスリ アルティ)」という名前の由来について、桂子さんは、米粉の可能性を広げたいという思いを込めていると語ります。
「アルティ」という言葉はフランス語で「アーティスト」を意味する「アルティスト」から名付けられました。創造する途中、芸術家になる途中という意味も込めて「アルティ」とあえて途中で切っているそう。また、聞きなれない「PâtisseRiz(パティスリ)」という言葉は、「パティスリー」とフランス語で「米」を意味する「Riz」を組み合わせて作ったオリジナルの言葉。
また、Arti(アルティ)のAをモチーフにしたお店のロゴは、ひっくり返すと米粒の形に見えるようにデザインされていて、米粉の概念をひっくり返すという意味も込められています。

小麦アレルギーに悩む人の代用品として見られることが多い米粉。「実は、米粉自体にも優しい甘みがあって粉をそのままなめても甘いんです。素材として軽やかで柔らかさを感じるのも米粉の魅力です。」と桂子さん。
米粉はなんと数十種類以上もあり「PâtisseRiz Arti(パティスリ アルティ)」では8種類の米粉をベースにスイーツを作っています。例えば、カヌレは周りのキャラメル感に負けないように、ミネラル感のある玄米粉をブレンドしたり、米粉の吸水率によって膨らみが違うのでシュークリームもパーツによって米粉を使い分けています。ひとつのスイーツでもパーツによって米粉を使い分けているという繊細な設計に驚きました。

桂子さんは、きび砂糖の柔らかい甘みや岩塩のミネラル感や、かぼちゃやピスタチオなどの素材本来の味が好きなので、米粉と合わせる時も素材本来の味を活かすようにしているそう。また、「ご飯はどんな素材でも合うので、米粉もどんな素材でも合うんです!米粉は素材を全て包み込みます。」と説明。
また「PâtisseRiz Arti(パティスリ アルティ)」はフランス菓子の伝統を大切にしつつ、米粉との組み合わせで日本らしさを取り入れたスイーツを作っているそう。
桂子さん「フランス菓子が日本に入って来た時に、米粉が普及していたら米粉のスイーツが増えていたのではと思います。米粉のスイーツは、もっと昔からあってもよかった。玄米粉カヌレがおすすめですが、フランスのカヌレを米粉で変えたかった。日本のカヌレにしたいんです!」

そんな、桂子さんの経験や知識や思いが詰まった「PâtisseRiz Arti(パティスリ アルティ)」の米粉のスイーツをいくつかご紹介します。

桂子さんもおすすめの玄米粉カヌレ。外はガリっとかりんとうっぽい風味で、中はプリンのようにとろける食感。一度は食べてほしい絶品カヌレです。プレーンの他にスパイス香るチャイのフレーバーも。

米粉ときび砂糖のやさしい甘さにさくほろっとした食感がたまらないブールドネージュや、ひとつひとつ手作業で作られたかぼちゃの甘味と香ばしい香りが特徴のかぼちゃクッキー。しっかりチーズと胡椒が効いたさくっと軽いおつまみ系サブレチーズに、じゅわっとバター香るしっとり濃厚な米粉のフィナンシェ。

リピーターの方にも人気のあるシュークリーム。米粉を使ったざくざくしたシュー生地に、優しい甘さのたまご感のあるカスタードクリームがたっぷり。

しっかり栗を感じるタルト。濃厚なカスタードクリームと甘さ控えめなシャンティクリームのバランスが良く、ごろっと栗がたくさん入っているのも嬉しい。

かぼちゃ本来のナチュラルな甘みを活かしたタルト。ざくざくと香ばしいタルト生地やかぼちゃの種の食感もアクセント。

見た目もかわいい、さっぱりしたフロマージュと爽やかなキウイとのバランスが良いムースケーキ。
米どころの新潟で育った桂子さんがパティシエになりたいと思ったのは幼稚園の時。おばあちゃんがおやつに作ってくれたゼリーを見て、「白い粉からお菓子が出来上がるのが面白い」と思ったのがきっかけでパティシエを目指したそう。
その後、農業高校へ進学。両親が米菓工場に勤務していて米粉になじみがあったことから、「米粉で地域を活性化」をテーマにしたプロジェクトに取り組み、高校生で米粉の成分や吸水率などの専門的な研究から、米粉を使ったお菓子の製造や販売まで経験。その時に得られた米粉に関する知識が今の桂子さんの土台になっています。

パティシエの道に進んでからはパティスリーやカフェで経験を積んでいましたが、コロナ渦で当時働いていたカフェが閉店。それをきっかけに独立を考え、自分の強みは何かと考えた時に「台下暗しで米粉だと思った!」と桂子さん。米粉の研究を再開したい、深堀りしたいと思い、マルシェやオンラインで米粉の焼き菓子を始めます。
マルシェやオンラインでの販売を経て「PâtisseRiz Arti(パティスリ アルティ)」をオープンすることになった経緯を伺うと…
「マルシェで販売していると実店舗があるか聞かれることが多く、オンラインもやっていたけど送料がかかるので、自分の工房を持って販売できるところを探していました。コロナでカフェの閉店を経験して実店舗をやるのは怖かったので、自信を持ちたくてクラウドファンディングに挑戦しました。お店を作る資金集めというよりも、どれだけの人が応援してくれているか実感したかった。自分でお客さんの反応を知ってからお店をオープンしたかったんです。」

今後についても桂子さんは語ります。
「今後はお店を拠点に動き続けて米粉の研究を続けて、米粉姫になりたいです!米粉の可能性をみんなに感じ続けてもらいたい。お店も地域の方になじんでもらえたら良いですね。米粉のスイーツと言うと、意識が高いと思われて嫌煙される場合も多いのですが、この地域の方々はパティスリーとして見てくれるので嬉しいです。将来的には、新潟に工場を持って米粉用のお米も作ってみたいです。」

米粉の魅力を知り、健康のためではなく、おいしいから米粉のスイーツを選ぶという人が今後増えていくのではと感じました。米粉のスイーツが当たり前になる時代も来るかもしれません!米粉にこだわり続ける桂子さんの今後の活動が楽しみです。
米粉の概念が変わる「PâtisseRiz Arti(パティスリ アルティ)」のスイーツ。みなさんも、ぜひ味わってみてくださいね。
About Shop
PâtisseRiz Arti
東京都葛飾区高砂3丁目14−12
営業時間:11:00~19:00
定休日:月曜日~水曜日
Instagram:@cafedeartiste

ゆりえ
ウフ。編集スタッフ
菓子メーカーやスイーツ専門ECを経てウフ。編集部へ。スイーツのお取り寄せやカフェ巡りやカメラが趣味で、フードスタイリングも勉強中。パフェとチョコレートと焼き菓子が好き。
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