スイーツ、焼き菓子の世界って、実は知ってるようで知らないことが多いですよね? そんなスイーツの疑問に現役のパティシエ・大澤智弥氏が答えてくれます。前回、お菓子屋さんでは保存料は使わないことがわかりました。でもちょっと待って。シュトーレンって、結構日持ちしますよね。シュトーレンだけには保存料使っていませんか? 大澤シェフ、そこのところどうなのでしょう!?
シュトーレン(シュトレン)と言えば、クリスマスの定番スイーツとして、今では日本でも広く知られるようになり、毎年12月の声を聞くと街のお菓子屋さんやパン屋さんでも目にするようになりました。
発祥はドイツで、(諸説ありますが)14世紀ごろに生まれ、クリスマスまでの4週間のアドベント(待降節)までに食べるスイーツとして有名です。
この4週間の間に、何度も作る訳ではもちろんなく、一度作ったものをクリスマスまでに少しずつ切って食べていきます。
そこで、シュトーレンってどうしてそんなに日持ちするのか素朴な疑問が。
「シュトーレンは、バターと砂糖で日持ちさせています」と大澤シェフ。
バターと砂糖?
「バターの油分と砂糖を使って、外側をコーティングすることで、中の生地などが傷まずに日持ちさせることができるんです。
油そのものは一定の期間が経つと酸化して傷んできますが、そこに砂糖を加えることで酸化を抑制させることができます。さらに砂糖は水分を奪い、微生物の活動を抑える効果があることから、食品の保存に使われることがあります」と。
「ただし」と大澤シェフは言います。
「ただバターと砂糖を使えばいい、という訳ではないのです。
シュトーレンは焼き上がったものをバターに一度潜らせるんです。周囲をしっかりとバターの油分でコーティングさせ油膜を作ります。そこに砂糖を加えることで1カ月くらい日持ちさせることができるんです。
注意しなくてはいけないのは、バターといっても澄ましバターと言って、溶けた上澄みだけしか使いません。
バターを溶かして少し時間を経たせると2層になります。一般に溶かしバターと言われるものは、2層に分かれる前のもので見た目、少し濁っています。上澄みバターは、上下2層になるまで待ったものの、上の部分だけを指します。
下層の沈殿している部分はタンパク質なので腐敗してしまうため、ここでは使いません。上澄みだけをきれいに取って、それだけにくぐらせるのです」
とても繊細な工程だと大澤シェフは言います。
ほかにもシュトーレンには、アルコールに漬け込んだドライフルーツも入っていることで、アルコールとフルーツの糖分が保存要素にもなるため、長く日持ちできるのだと言います。
さすが、スイーツの世界、奥が深い。
ちなみに、シュトーレン文化は、ドイツ語圏が中心で、ヨーロッパ全域で食されている訳ではなく、主にドイツ、オランダなど、地理的にもドイツに近い地域に限られているとか。フランスにはクリスマスケーキとして有名なブッシュドノエルがあり、イタリアにはパネットーネと言われる大きなケーキが有名。また、ドイツとの国境に接するフランスのアルザス地方では、ベラベッカと言われるこの地方独自のクリスマスケーキがあり、ブッシュドノエルを食べる習慣はないだとか。さらに、アルザス地方では、ベラベッカのほかにシュトーレンなどを食べる習慣があるのだとか。
お菓子は、その歴史や地域性にもまた深い世界があるのですね。
パティシエ:大澤智弥さん
専門学校を卒業後、ビゴ東京に入社。その後「レストラン シェ・イノ」、「ホテル雅叙園東京」、「アングラン」などを経て、「こむぎのおいしいおかし」ほか、ガレットデロワ専門店「Galet Galet(ガレ ガレ)」のシェフとして活躍している。ufu.専属パティシエ。
ウフ。
ウフ。編集部スタッフ
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