
銀閣寺のほど近く、静かな通りに佇む「酒菓喫茶 かしはて」をご存知でしょうか。ここは、朝からお菓子をゆっくり味わいながら、中国茶やコーヒー、時には少しのお酒も楽しめる、今じわじわと話題の喫茶です。
3,800円で体験できる「朝菓子の会」は、懐石のように一皿ずつ進むデザートコース。甘さ控えめで、香りと余韻を味わう構成は、“朝の時間”そのものを豊かにしてくれます。観光前にも、自分のための朝にも。一日の始まりが少し特別になる、そんな体験をしてきました!

「酒菓喫茶 かしはて」は、銀閣寺近くにあるカフェ。この場所はもともと、“豆かん”で知られた甘味処「銀閣寺 㐂み家(きみや)」があった跡地です。2022年7月に閉店し、その縁を受け継ぐかたちで、同年9月に店主・得能めぐみさんがオープンしました。

店名の通り、ここではお菓子とともにお酒も楽しめます。きっかけはコロナ禍。「夜に飲みに行けないなら、朝に少し飲めたらいいんじゃないか」。そんな発想から、ワインやスパークリングワインなどのアルコールも用意されています。お酒が主役というより、“お酒でしか出せない香りの広がり”を、お菓子と一緒に楽しむための存在。その距離感が、とても心地よく感じられました。お茶好きの店主ならではの中国茶やコーヒーのセレクトも魅力で、スイーツとのアロマの重なりも楽しめます。

得能さんは、カフェ業態で20年ほど、調理やスイーツ作りに携わってきた方。いわゆる「お菓子職人」ではありませんが、素材の組み合わせや、素材が持つ可能性を探ることを大切にしています。以前の職場でレストランデザートに関わる中で、お菓子の提供方法にコース仕立ての流れがあることを知り、スイーツにも物語を持たせられると感じたことから、自分にしかできない表現でストーリーを届けたいという思いで、今のお店づくりに活かしているそうです。


お店のテーマは、ヨーロッパとアジアをミックスした「シルクロード」。店内には、アンティーク雑貨や織物、アートブックや京都本などがさりげなく並びます。どれも得能さんが集めてきた、お気に入りのものばかり。

でも、アートの知識がなくても大丈夫。「なんだかこの空間、好きだな」と感じるだけで十分で、本を手に取ったり、ぼんやり外の気配を感じたり。何かを“消費する”というより、その時間そのものを味わう場所です。
通常は12時30分オープンのカフェですが、1日の営業は2部制で構成。「朝菓子の会」とは、10時〜12時に提供される完全予約制のお菓子コース。3,800円(※ワンドリンクオーダー制)で、季節のフルーツを多用したおまかせ4品が、懐石スタイルで約2時間かけて提供されます。お盆の上に一皿ずつ、作り立てが丁寧に運ばれてきます。

はじまりは、得能さんおすすめのウェルカムドリンク。取材した1月中旬は、レモングラスジンジャーティーでした。清涼感のある香りの奥に、キリッとした辛味。そして体の芯から、じんわり温まる感覚。「朝の時間を大切にしてほしい」という、静かなおもてなしが伝わってきます。

最初は、日向夏を使った一皿。皮ごと食べられる品種だからこそ、果肉だけでなく香りまで丸ごと味わえます。得能さんによると、日向夏の皮は山椒にも似たニュアンスがあるのだとか。山椒の葉を添え、オリーブオイルとバルサミコ酢のソースをひと回し。
毎朝つくるという自家製チーズを合わせると、どこかカルパッチョのような軽やかさ。「朝菓子」の名にふさわしい、すっと体に入るスタートです。

続いては杏仁豆腐。この日は金柑を合わせた、やさしい甘さの一品でした。仕入れ状況によって内容は少しずつ変わるそうで、白餡+黒米を甘く炊いたものを合わせる和×中華の構成もあるのだとか。
予約時に苦手な食材を伝えれば、柔軟に対応してくれるのも嬉しいポイント。まるで友達を家に招いて、ひとりひとりに合わせた料理を出すような感覚。“食”を大切にする姿勢が、自然と伝わってきます。

メインディッシュは、いちごのパリブレスト。いちごは奈良の名産、古都華です。パリッと軽やかなシュー生地に、あっさりとしたピスタチオクリーム。そこへ、古都華の濃い甘みと酸味がしっかり主張します。これはもう、「ちゃんとスイーツを食べている!」という満足感。
添えられたアイスは2種。台湾茶を使ったものと、レザーウッドハニーで香り付けしたもの。王道の洋菓子でありながら、オリエンタルな要素がふっと重なります。“シルクロード”というテーマが、ここでくっきり立ち上がる一皿でした。

締めくくりは、お茶菓子。小さな箱が運ばれてきて、そっと蓋を開けると――そこにはミニチュアの禅の庭が現れました。
艶やかな黒い石は、アーモンド粉を固め、竹炭で色付けしたチョコレートコーティング。苔むした岩は、チョコレートケーキに抹茶パウダーをまぶしたもの。粉砂糖の雪化粧をまとったフィナンシェは、銀閣寺の向月台をイメージしてつくられているそうです。

フィナンシェにはレザーウッドハニーを使用。非常に芳醇で、華やかな香りが余韻として残ります。景色を“食べる”ような体験に、思わずため息。
「朝菓子の会」は甘さを楽しむだけでなく、一日の始まりを整える時間。静かな空間で、香りと温度と余韻に身を委ねる――そんな贅沢を、そっと差し出してくれるコースでした。
「酒菓喫茶 かしはて」は、お菓子を食べる場所でありながら、朝をどう過ごすかを大切に考えさせてくれるお店でした。得能さんの細やかなおもてなしと、ヨーロッパとアジアが交差する“シルクロード”の世界観が、朝の静けさの中で、ゆっくりと立ち上がってきます。

「特別な朝を過ごしたい」
そんな気分の日に、ぜひ一度訪れてみてください。
About Shop
酒菓喫茶 かしはて
京都府京都市左京区浄土寺上南田町37-1
営業時間:
朝菓子の会/10:00〜12:00(完全予約制)
通常営業/12:30〜17:00(16:00最終入店・予約推奨)
定休日:水曜日
Instagram:@kashihate.kyoto

あかざしょうこ
ウフ。編集スタッフ
関西方面のスイーツ担当。1984年生まれ、大阪育ちのコピーライター。二児の母。焼き菓子全般が好き。特に粉糖を使ったお菓子が好きです。
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