ケーキとコーヒーのペアリングって、ちょっと特別なレストランでしか体験できないと思っていませんか?
天王寺・四天王寺の東大門前にある「AUN COFFEE」は、その“非日常”を日常にしてしまったカフェ。ショーケースに並ぶ本格パティスリー仕込みのケーキと、1杯ずつ丁寧に淹れるスペシャルティコーヒー。互いを引き立て合う組み合わせは、驚くほど自然で、そして贅沢。30歳の店主・藤井さんが描くのは、コーヒーで人と世界をつなぐ未来でした。
「AUN COFFEE」があるのは大阪・天王寺区、四天王寺のすぐ目の前。外観は木のフレームが印象的な大きなガラス窓で、街に向かって開かれたようなデザイン。ベンチや植木が置かれたエントランスからして、思わず入りたくなる雰囲気です。
正面には聖徳太子が建立した四天王寺の東大門。仁王像を眺めながらコーヒーが飲めるという、ちょっと特別なロケーションが広がります。アクセスは、大阪メトロ谷町線「四天王寺前夕陽ケ丘駅」から徒歩10分、JR環状線「寺田町駅」や「天王寺駅」からも歩いて約10分。3駅のちょうど真ん中あたりにあって、散歩がてら訪れるのにぴったりな立地です。
店内は、コンクリートの無機質な壁に、床や什器の木の温かみ、そして緑が映えるスタイリッシュ空間。シンプルなのに居心地よく、長居したくなる雰囲気があります。カフェというよりパティスリーに近い印象で、ショーケースにはケーキがずらり。
店主の藤井喬祐さんは、小学4年生のころから「自分の店を持ちたい」と夢を抱いていた筋金入り。バレンタインに手作りチョコを配っていた“生粋の喜ばせ屋”は、南大阪の名店「菓子工房T.YOKOGAWA」で修業し、基本の製菓理論を徹底的に習得。さらに「LiLoCoffeeRoasters」でバリスタとして5年間学び、インスタライブで毎日発信しながらファンを増やし続けた経歴の持ち主です。
藤井さんの想いは、「ケーキとコーヒーのペアリング」を日常に取り入れたいということ。普通ならミシュラン星付きのレストランでしか体験できないような“食と飲み物のマリアージュ”を、もっと身近に楽しんでほしいのだそうです。ケーキを作ったら、その味に合うコーヒーを探しにインポーターの元へ。逆に、選んだ豆に合うようにケーキを開発することもあるのだとか。だからこそ、藤井さんはケーキもコーヒーも本気で修業し、両方を極めた。そんな背景を知ると、お店に込められた意味がさらに深く感じられました。
「ケーキもコーヒーも、妥協せずに最高のものを提供したい」――そんな想いと努力の積み重ねが、「AUN COFFEE」の店内いたるところにぎゅっと詰まっています。実際に訪れてみると、藤井さんのエネルギーが空間全体にあふれていて、こちらまで元気を分けてもらえるような気がしました。
ショーケースには常時10種類前後の生ケーキが並びます。ひとつひとつが丁寧に作られていて、パティスリーのような存在感。中でもオープン当初から人気のスペシャリテは「オペラ」。なんと9層で構成されていて、口の中で風味が重なり合うよう設計されています。
一番下の層にはフランボワーズを仕込んであり、ベリー系の香りが広がるコーヒーと合わせると、甘酸っぱさとビターさが絶妙にリンク。バタークリームも2層に分けて配合を変えるなど、層ごとの厚みや香りまで徹底的に計算された一品でした。
爽やかさを楽しみたい方には「レモンチーズケーキ」がおすすめ。センターには卵・バター・砂糖・レモン果汁・レモン皮だけで作る“レモンカード”を配置。チーズ感は控えめで、レモンの酸味をダイレクトに感じられるよう仕上げられています。シトラス系のコーヒーと合わせれば、まるで柑橘をかじった後に一口コーヒーを飲んだような爽快感。
そして「コーヒー屋さんのスイーツと言えば!」のティラミス。こちらはパウダーを振らず、なめらかにナッペされたスタイルで、見た目からして上品。コーヒー感は苦味よりも香りを重視していて、グランマルニエがほのかに香る大人の味わい。柑橘系のコーヒーと合わせると、ケーキ全体が一段と華やぎます。
どのケーキも“甘すぎない”のが大前提で、砂糖は極力控えめ。だからこそコーヒーとのペアリングが成立するのだと思いました。
ドリンクは1杯ずつ丁寧に淹れるハンドドリップ。店内のスタッフもみんな若くてエネルギッシュで、空間全体がプラスのエネルギーに満ちています。コーヒー好きはもちろん、普段は苦手だと思っている人も「新しい世界を開けそう」と感じられる場所でした。
天王寺で始まった「AUN COFFEE」は、すでに難波に2号店をオープン。国内では4店舗まで展開を見据えています。藤井さんが描く次のステージは、なんと東南アジア。世界共通の飲み物である「コーヒー」を通じて、人と人とがつながれる場をつくること。その大きな夢の一歩が、この四天王寺前のカフェから始まっています。
お店の名前は「阿吽の呼吸」からきていて、“ぴったり息の合う心地よさ”をイメージしたのだとか。“ペアリングを日常に”という新しい提案が、ここからどんな広がりを見せるのか。次に訪れた時には、またひとつ未来のカフェ文化が形になっているかもしれません。
About Shop
AUN COFFEE(エーユーエヌ コーヒー)
大阪府大阪市天王寺区勝山1丁目11-27 ハイツ天王寺 1F
営業時間:09:00〜19:00(L.O18:30)
定休日:不定休(Instagramをご確認ください)
Instagram:@aun.coffee
あかざしょうこ
ウフ。編集スタッフ
関西方面のスイーツ担当。1984年生まれ、大阪育ちのコピーライター。二児の母。焼き菓子全般が好き。特に粉糖を使ったお菓子が好きです。
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