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パティシエ・ショコラティエ・キュイジニエ、3つの顔を持つ垣本晃宏シェフの素顔。ショコラティエWEEK vol.06「ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ カキモト)」

パティシエ・ショコラティエ・キュイジニエ、3つの顔を持つ垣本晃宏シェフの素顔。ショコラティエWEEK vol.06「ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ カキモト)」

パティシエ・ショコラティエ・キュイジニエ、3つの顔を持つ垣本晃宏シェフの素顔。ショコラティエWEEK vol.06「ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ カキモト)」

バレンタイン特別企画、有名ショコラティエによるチョコレートの面白さ・奥深さを体感できる「ショコラティエWEEK」も最後から2番目。今回は京都の観光名所としても人気の、美しい京都御苑・御所周辺にある人気店「ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ カキモト)」。パティスリー兼ショコラトリーで、「パティシエ」「ショコラティエ」「キュイジニエ」3つの顔を持つシェフ・垣本シェフを取材。いったいどんなチョコレートのお話になるのか? そして取材時には魚をさばき、蟹を調理するなど、メディア初公開の姿も。

「重ね合わせる」店名に込めた想いと「人と同じことはしたくない」シェフのアティチュード

パティシエ・ショコラティエ・キュイジニエ、3つの顔を持つ垣本晃宏シェフの素顔。ショコラティエWEEK vol.06「ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ カキモト)」

Q. まずこの「ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ カキモト)」というお店。店内の奥を、バーのようなカウンタースタイルにされた理由やコンセプトにされた理由を教えてください。

垣本シェフ「答えは簡単です。“お客さんの目の前でやりたい”。お客さんの顔を見て、デザートを提供して、反応を見ることができるって最高じゃないですか。このお店では、チョコレートといろいろなものの華を楽しんでもらいたいというコンセプトもあります。チョコレートと、お酒のペアリング。そしてカウンターデザートでは、カカオをベースにしながら様々な食材とのマリアージュを楽しめるような構成にしています。チョコレートの面白さ、魅力を知ってもらいたいと思っています。」

パティシエ・ショコラティエ・キュイジニエ、3つの顔を持つ垣本晃宏シェフの素顔。ショコラティエWEEK vol.06「ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ カキモト)」

Q.「重ね合わせる」「組み合わせる」そんな意味の込められた「アッサンブラージュ」。店名としては、かなり珍しいと思いますが、このネーミングにされた経緯と想いを教えてください。

垣本シェフ「素材と素材を組み合わせるのが好きなんです。単体でも美味しいけれど、組み合わせることでさらに美味しいものを目指したい、そういう想いが込められています。人と同じことをしても、面白くないですしね。

パティシエ・ショコラティエ・キュイジニエ、3つの顔を持つ垣本晃宏シェフの素顔。ショコラティエWEEK vol.06「ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ カキモト)」

またお店に並ぶお菓子はチョコレートだけではないし、ケーキだけではない、だからアッサンブラージュ=組み合わせというのを店名に持ってきました。

パティシエ・ショコラティエ・キュイジニエ、3つの顔を持つ垣本晃宏シェフの素顔。ショコラティエWEEK vol.06「ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ カキモト)」

『Assemblages Kakimoto(本店)』では、予約制の料理コースをやっています。そこではデザートだけではなく、料理人として腕をふるっていて、そこでも素材と素材の組み合わせがテーマですね。本当は居酒屋とかもやりたいです(笑)。」

サラリーマンをやめて、パティシエの道へ

パティシエ・ショコラティエ・キュイジニエ、3つの顔を持つ垣本晃宏シェフの素顔。ショコラティエWEEK vol.06「ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ カキモト)」

Q.もともとはサラリーマンをされていたと聞きました。サラリーマンから、この食の世界へ入られたきっかけを教えてください。

垣本シェフ「学生のころから、ずっと職人になりたいと思っていたんです。もともと大工や料理人というものに憧れていて、高校卒業後は製菓学校へ通っていました。

パティシエ・ショコラティエ・キュイジニエ、3つの顔を持つ垣本晃宏シェフの素顔。ショコラティエWEEK vol.06「ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ カキモト)」

Q.そこから製菓業界ではなく、なぜサラリーマンへなられたのでしょうか?

垣本シェフ「専門学校へ通って、その時に“いまいち今何がしたいかわからない”と思ったんです。まったく別のジャンルの建築家もいいなと思ったし、デザイナーもいいなと思ったし、大工も料理人もいいなと思った。どれにしようか悩んだので、製菓学校に通ってはいたけれど、この道でよいのか決められなかった。お菓子を作るのは楽しかったけれど、まだお菓子職人として働きたくなかったんですよね、まだ子どもだったので。

パティシエ・ショコラティエ・キュイジニエ、3つの顔を持つ垣本晃宏シェフの素顔。ショコラティエWEEK vol.06「ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ カキモト)」

そこからとりあえず、通っていた専門学校の事務職として働くことになりました。事務をやらせていただけないかと直談判して、そのまま事務職へ。3年ほど働いて、決意が固まりお菓子の業界へ。最初はホテルのパティシエとしてからでした。」

沖縄から始まる放浪の旅

パティシエ・ショコラティエ・キュイジニエ、3つの顔を持つ垣本晃宏シェフの素顔。ショコラティエWEEK vol.06「ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ カキモト)」

Q.その後は、沖縄でも働かれましたよね? その理由と経緯を教えてください。

垣本シェフ「京都で就職したホテルでは、たくさんのケーキを作ってきました。そこでお世話になった恩人からはハーブを組み合わせるなど、経験したことがないケーキ作りの考え方、インスピレーションを学びました。その後はその方の誘いを受けて、当時震災もあったことから、復興した神戸のフランス菓子店で働くことに。料理人としての経験は、ここから始まっていて、このお店のレストラン部門でデザート担当をひとりで任されていたんですが、オードブルのヘルプに入るなど、料理のことを多く学べた時期でもありました。

そこから店を辞めて単身、沖縄の西表島に移住したんです。理由は、もう仕事をやりつくしたというか、何を次にしようか迷ったので。海や魚も好きで、軽い気持ちで民宿で料理人として約8カ月働きましたね。その後は、職場を転々、もはや旅人のような日々でしたが、次に働いたお店が大きな人生の転機になったんです。」

転機となった洋菓子のコンクールの存在

パティシエ・ショコラティエ・キュイジニエ、3つの顔を持つ垣本晃宏シェフの素顔。ショコラティエWEEK vol.06「ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ カキモト)」

神戸で開業し自分を誘ってくれた恩人からそろそろ働け!と。目が覚めたかのように、洋菓子の世界へ戻り、大阪市の洋菓子店『アトリエ・アルション』でシェフパティシエとして働くことになりました。ここで働き始めて、初めて洋菓子のコンクールの存在を知ったんです。目標が見えて、最初は国内のコンクールでも結果が出なくて、苦しい時期もありましたが続けていくうちに結果が出たんです。一時期はこれでダメだったら……と気持ちが折れそうになりました。」

その後、垣本シェフは2年に1回、フランスで開かれる「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」(2011)では氷彫刻の部門で個人優勝。翌年には、世界最高峰のチョコレート創作コンクール「ワールド チョコレート マスターズ」の日本予選で優勝。世界大会では総合4位に輝きました。

「作ることは、ただの趣味」シンプルでありながら、職人としての原点を感じる垣本シェフの言葉

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Q.「パティシエ」であり「ショコラティエ」であり、そして「キュイジニエ(料理人)」。とくに夜は料理のコースがあるなど、仕込みやオペレーションの部分でも大変かと思いますが、シェフがあらゆる顔を持ち、3つの分野で腕を振るうその理由を教えてください。

垣本シェフ「もうね、これはただの趣味。それでしかないですよ。作るのが本当に楽しい、それだけです。料理をするのは、食べ物がすごく好きなんで。食べに行くのも好きです。

仕入れているものもこだわっていて、特に魚は京都ではなく全国の産地から、専門の人に任せて、市場を通らない特別なものが直送で届きます。魚は、いいものを使わないとダメですね。悪い魚は、何しようが美味しくならない。」

パティシエ・ショコラティエ・キュイジニエ、3つの顔を持つ垣本晃宏シェフの素顔。ショコラティエWEEK vol.06「ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ カキモト)」

Q.「ショコラティエ」としての側面が、多くの人にとって印象的かと思いますが、シェフにとって「チョコレートの持つ魅力」をどのように捉え、考え、形にし「アッサンブラージュ カキモト」のチョコレートの表現をしているのでしょうか? 

垣本シェフ「なんにでも合わせられる、なんでも合う。そこが魚とは全然違うところですね。素材と素材を組み合わせて、いろいろな味にすることができるのが、大きな魅力だと思います。そしてカカオも産地や品種によって、全然風味や味が違うところも面白いところですよね。

そして素材の組み合わせだけではなく、ペアリングも魅力の一つです。ワインとのペアリングもそうだし、組み合わせがすごく楽しいんですよ。」

チョコレートが持つ、味の変化の魅力

パティシエ・ショコラティエ・キュイジニエ、3つの顔を持つ垣本晃宏シェフの素顔。ショコラティエWEEK vol.06「ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ カキモト)」

Q.「アッサンブラージュカキモト」のチョコとは一言でどんなものでしょうか?

垣本シェフ「『味の変化』ですね。口に入れて、舌の上でぽんぽんぽんと、どんどん変化していく。全部それを考えて作っています。チョコレートだけではなく、口どけ、香り、素材、あらゆるところから楽しめるチョコレートです。」

Q.現在修行しているパティシエの子たちにカカオを扱う上で、美味しいものへと昇華させていくために、どんなことを大切にし、伝え、指導しているのでしょうか?

垣本シェフ「実は、それは『ない」です。こうしたら美味しくなる、こうしたらいい、というのはない。まずは教えるときに大切にしていることはちゃんと作れること。素材を全部無駄なく使う、捨てない。使いきって美味しいものを作る。そこを大事にして指導しています。

パティシエ・ショコラティエ・キュイジニエ、3つの顔を持つ垣本晃宏シェフの素顔。ショコラティエWEEK vol.06「ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ カキモト)」

またチョコレートへの考え方は、任せています。僕の考えていることを言語化するのも難しいし、きっと理解できひん。もともと持っているショコラティエの感性を、勉強して育み、自分で開発するときに“気づいて”もらえたらと思っています。自分の感性を、自分で磨いてもらって欲しいですね。」

Profile
垣本晃宏(かきもと あきひろ)

京都府宇治市出身。辻製菓専門学校卒業後、京都ロイヤルホテル、神戸菓子Sパトリーのス-シェフなどを経て、2016年「アッサンブラージュ・カキモト」を京都・寺町にオープン。現在は、多くの大手メーカーや有名飲食店のアドバイザーも務める。世界最高峰のショコラティエを決めるコンクール「ワールドチョコレートマスターズ」に日本代表として2度参加。’13 年に続き、’18年も世界4位を獲得。

About Shop
ASSEMBLAGES KAKIMOTO
京都市中京区竹屋町通寺町西入る松本町587-5
営業時間:12~19:00
定休日:火曜、水曜日

クリーム太郎

クリーム太朗

ウフ。編集長

メンバーの記事一覧

編集責任者。ショートケーキ研究家として、日本全国のケーキを食べ比べる。自身でも、ケーキやチョコレートの製造・販売を目指すべく、知識だけではなく実技も鍛錬中

Photo&Writing/Cream Taro