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食べられるホラーで話題!大阪・豊中発「ナカニシ ア由ミ」の“怖かわスイーツ”が止まらない

食べられるホラーで話題!大阪・豊中発「ナカニシ ア由ミ」の“怖かわスイーツ”が止まらない

血走った目玉に、今にも動き出しそうな指。思わず「ひぃっ」と声が出そうなこちら、なんと全部“お菓子”なんです。手がけるのは豊中で工房を構える「ナカニシ ア由ミ」さん。

SNSで話題沸騰中の“食べられるホラー”を生み出す彼女は、怖さの中に笑いと愛嬌を混ぜ込む“唯一無二のホラー菓子職人”です。ハロウィン目前、ゾクゾクするほど可愛いスイーツの世界を覗いてみませんか?

ホラー菓子誕生のきっかけは「キャラ弁」から

取材に訪れたのは、大阪府豊中市某所。自宅に「中西怪奇菓子工房。」の看板を掲げるホラー菓子作家・ナカニシ ア由ミさんを訪ねました。

食べられるホラーで話題!大阪・豊中発「ナカニシ ア由ミ」の“怖かわスイーツ”が止まらない

その「作品」はSNSを中心に話題を呼び、ホラー映画のタイアップ菓子やお化け屋敷のノベルティ、有名アニメとのコラボ企画など依頼が殺到。「ホラー×スイーツ」という唯一無二のジャンルを確立させた第一人者とも言える存在です。

食べられるホラーで話題!大阪・豊中発「ナカニシ ア由ミ」の“怖かわスイーツ”が止まらない

その原点は、意外にも娘へのお弁当づくりだったそう。

「当時、保育園に通っていた娘から“キャラ弁を作って”って言われたんですが、料理が苦手で…」と笑うナカニシさん。「じゃあ“こんなお弁当イヤ!”って言われるようなのを作ろう」と思い立ち、いたずら心で挑戦したのが“ホラー弁当”。

チキンライスの上に茹でキャベツをかぶせてエイリアン風の顔を作り、うずらの卵で目玉、ハムで唇。白身魚を挟んでリアルな口元を再現――。あまりの完成度に、娘さんは蓋を開けた瞬間フリーズしてしまったのだとか。

食べられるホラーで話題!大阪・豊中発「ナカニシ ア由ミ」の“怖かわスイーツ”が止まらない
初めて作ったキャラ弁…これは衝撃…(提供:ナカニシ ア由ミ)

「『ありがとう、もう作らなくていいよ』って言われたんですけど(笑)、思っていたよりうまく作れちゃって。娘がお弁当の蓋を開ける瞬間のワクワクは今でも忘れられない。楽しくなってしまったんですよね」

そうして誕生したのが、後に彼女の人生を変える“ホラー菓子”の原点。最初は自宅で作ったお弁当をFacebookにアップして、友人たちの反応を楽しむだけ。けれど、だんだんと「どうしたらもっとリアルに見えるか」を追求するうち、味より造形が優先されるようになっていったといいます。

「唇のぬめりが欲しくて塩辛を使ってみたりして、もう本当にまずかった(笑)」

でも、その気持ち悪さの完成度に惹かれて、やめられなくなっていったそう。

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そしてある日、「お菓子なら見た目も味も両立できるかも」とひらめき、試しに焼いたのが“指クッキー”。「娘に“指だよ”と言わずに出したら、気づいてくれなくて。悔しくて、もっと改良しないと!と燃えました(笑)」

ホラー映画で育まれた“言葉に頼らない表現”

ナカニシさんの「見た瞬間に伝わる」表現力は、じつは学生時代の体験から生まれたもの。 短大を卒業したあと、単身アメリカへ渡った彼女。行き先はニューヨーク。当時は英語の勉強法として「映画を見る」が定番でした。でも、ヒューマンドラマや恋愛映画は、英語のセリフが速すぎて内容が入ってこなかったそう。

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「せっかく勉強してるのに、ストーリーがわからないと面白くないんですよね(笑)」

そんな時、偶然出会ったのがホラー映画。わーっと叫ぶ、逃げる、血が飛び散る――。言葉を理解できなくても“何が起こっているか”が伝わる。「語らずして伝わる世界観」に惹かれ、どんどんのめり込んでいったそうです。

「怖いけど面白い。グロテスクで可愛い。いつの間にか、キャラクターデザインにも愛着が湧いていきました」

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ホラー映画の中の造形や質感を自分の手で再現してみたい。言葉を超えて、ビジュアルで感情を動かしたい。この時に培った「言葉に頼らない表現」こそ、のちにホラー菓子という唯一無二のアートスタイルへとつながっていったのかもしれません。

たしかに、彼女の作るお菓子には「説明しようとしても説明しきれない」魅力があります。怖いのに、愛嬌がある。リアルなのに、笑ってしまう。その感情の揺さぶりこそが、ナカニシさんの作品の本質なのかもしれません。

自販機で出会えるホラー菓子。闇籤(やみくじ)に込めた遊び心

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コロナ禍ではイベントが次々に中止になり、活動の場を失ったナカニシさん。それまで突っ走ってきただけに、充電期間になったとも言います。それでも「ただ待つのは性に合わない」と、お菓子の自動販売機に目をつけたそう。

「自販機から目玉が出てきたら、面白いかも!」とすぐさま行動。

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約1年の交渉期間を経て、最初に設置した大阪モノレール・大阪空港駅の自販機は、すぐさまSNSで話題に。自販機の棚をすべて埋める商品づくりに2日かかるそうですが、作っても作ってもすぐに完売…。寝れない日々が続いたと振り返ります。

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現在は大阪空港と心斎橋・ビッグステップの2カ所に設置されています。そんな自販機の中には、ナカニシさんの遊び心が光る「闇籤(やみくじ)」も潜んでいます。見た目は普通のおみくじですが、内容はかなりクセ強め。手描きのイラストとブラックユーモアがじわじわ笑える不思議な世界です。

食べられるホラーで話題!大阪・豊中発「ナカニシ ア由ミ」の“怖かわスイーツ”が止まらない

そして、箱に添えられた熨斗の水引には、なんと“眼球の血管”をモチーフにしたデザインが。怖いはずなのに、細部まで徹底された世界観に思わずうなってしまいます。「怖い=楽しい」に変換してしまうセンスこそ、唯一無二と呼ばれる理由なのかもしれません。

食べられるホラーで話題!大阪・豊中発「ナカニシ ア由ミ」の“怖かわスイーツ”が止まらない

怖いものを作っているのに、ナカニシさん自身は明るくて朗らか。そのギャップは本当に魅力的でした。根底に「楽しんでほしい」を忘れないエンターテイナーの挑戦はまだまだ続きます。ちなみに今は「舌」を開発中だそうです…(笑)

怖いのに惹かれる。“ゾクッ”の奥にあるのは、楽しませたいという優しさ

ホラー菓子というと、ただのネタや話題づくりと思われがちですが、ナカニシさんの作品には、確かなストーリーと人間味があります。怖がらせたいわけじゃない。驚きの先に“笑顔”を生み出したい。それが、彼女がお菓子を作り続ける理由です。

「怖い」を通して人を楽しませる。そんな新しいエンタメスイーツが、大阪から世界へ広がっていくかもしれません。

About Shop
中西怪奇菓子工房。
販売場所:大阪モノレール「大阪空港」駅構内、心斎橋ビッグステップ1階、公式オンラインショップ
Instagram:@mogitoru

あかざしょうこさん

あかざしょうこ

ウフ。編集スタッフ

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関西方面のスイーツ担当。1984年生まれ、大阪育ちのコピーライター。二児の母。焼き菓子全般が好き。特に粉糖を使ったお菓子が好きです。